どこかおかしい、調べてみると意味が間違っている言葉づかいって意外に多いものですね。そこで、今回はきちんと辞書にも載っているのに、本当の意味とは違ってしまったおかしな日本語を集めてみました。

■生命保険は本当なら生活保障保険

みなさんご存知のように、生命保険とは、いざという時に困らないように経済的な生活保障金を積み立てていく保険のことですよね。では、この生命保険という使い方、どっかおかしいと思いませんか?

理由はかの福沢諭吉が明治維新の頃、「LIFE」を生活ではなく生命と訳したことが発端です。明治の初めのことなので、生命だけを保障する保険でもそれほど間違いはなかったのかもしれませんが、生命だけを保障する保険という言い方は現代で使うとどこかへんですよね。

■ピンはねは搾取することの総称ではない

ピンはねを辞書で調べると、上前をはねることとあって、注釈に「20%のピンはね」という使用例が載っています。しかし、ピンはねのピンとは実は一割のこと。本来の「ピンはね」とは搾取することを意味するのではなく、一割をとりあげるという意味が正解なんです。

そうすると、この使用例なら20%のうち10%をとりあげるということになってしまい、かなり意味が変わってしまいますよね。

■アルバイトは苦しい労働を課せられること

アルバイトを辞書で調べてみると、本業や学業のかたわら、収入を得るための仕事をすることとあります。しかし、もともとの意味は「労働による苦しみ」を指していて、意思を持たないで労働を課せられるロボットの語源ともなっているんですね。

■痩せるという意味はないダイエット

日本語ではダイエットは痩身のための手段に限定して使っていることが多いですよね。ところが英語辞書で調べてみると、「diet」の意味は「常食」または「食事療法」、つまり食事の仕方にまつわる言葉で、痩せるというフレーズはどこにもみあたりありません。

そうしてみると、「スリムになるダイエットマシーン」なんて表現はかなりおかしな使い方ですよね。

■ハイジャックの意味は「ハーイ、ジャック!!」

ハイジャックは日本語では航空機乗っ取りのことを指す言葉ですよね。きちんとした英語の表現では「Air piracy」といいます。ジャックとはアメリカで言うところの一般名。日本で言えば太郎のような呼び名です。

もともとは西武開拓時代の強奪の際に、こっちを振り向け「ハーイ、ジャック」と呼びかけた、または「手を挙げろ、ジャック」と脅したのが発端。強奪という点では一致しますが、航空機乗っ取りとは縁もゆかりもないわけです。

■簿記とは帳簿のこと

簿記を日本に紹介したのは福沢諭吉です。当時の外交官が日本に簿記を紹介する際に、これは何だと日本人に尋ねられ「book keeping」と答えたそうです。ネイティブな英語なので、「ブー・キー」という発音が、その場にいた日本人達には「ボキ」と聞こえたらしく、その音だけで、なるほど帳簿を記す方法かと勝手に解釈して簿記と命名しました。

おそらくその時点では「保管するため(keeping)の帳簿(book)」と、説明したのが正解ではないでしょうか。つまり、外交官は簿記全体のことを説明したのではなく、帳簿そのものことを指して説明しただけのようですね。

さて、あなたはこのうち、いくつ知っていましたか?

【取材協力、情報提供】
小木紀親(東京経済大学 教授)
東京経済大学および慶應義塾大学などで、マーケティング論を担当。
著書に『マーケティング・ストラテジー』中央経済社のほか多数。
上記現代用語のコラムは『マーケティングEYE[第3版]』にも編集されている。