猫カフェならぬ"柴犬バー"
柴犬とバー。あまり隣り合わせに並ぶことのない2つの単語である。"柴犬バー"って何だかちょっと不思議な響きだ。一体どんな場所なのだろうか。人づてに聞いて面白そうだと思い、行ってみることにした。
柴犬バーの正式名称は「Black Sheep」。東京・渋谷駅から道玄坂を上り、「ユニクロ」を越えたところで路地に入っていく。店があるのは雑居ビルの2階で、外に看板こそ出ているものの、ビルの雰囲気は正直かなり入りづらい。ドキドキしながら階段を上り、店の扉を開けて中へと入ると……。
わわっ! 足元にバババッと走り寄ってきた動物が! よく見ると……柴犬だった! 本当にいた! いや、そのつもりで取材を申し込んだわけなんだけど、こうして実際に見るとやはり不思議な取り合わせである。柴犬とバー。
いやしかし、本当にかわいい。しばし仕事を忘れてハナちゃん(2歳・メス)とたわむれる。……アレ? 何しにきたんだっけ。そうだ、取材をしにきたのだった。ってなわけで、改めてこの店の紹介をしよう。Black Sheepは渋谷駅から徒歩5分の場所に位置するバー。営業時間は19時から翌1時くらいまでで、日曜が定休日である。柴犬店長のハナちゃんが接客(?)し、マスターがおいしい酒を提供してくれる。
たまたま連れてきていたハナちゃんが人気に
そもそもBlack Sheepは、ハナちゃんを売りにして始めた店ではなかったとマスターは言う。最初は何となく、マスターの飼い犬であるハナちゃんを店に連れてきただけだったのだが、行儀のいいハナちゃんと、バーと柴犬という珍しい組み合わせがお客の間で評判になり、"柴犬バー"として口コミで広がっていったのだ。
開店当初は渋谷の隠れ家的バーとしてスタートした同店だったが、今ではネットの口コミなどからわざわざハナちゃんに会いに来るお客が後を絶たないという。実際、取材したこの日も、ハナちゃんに会いに来たという女性グループが来店していた。さて、ここからはしばしハナちゃんの写真で癒やされていただこう。
渋谷で大人が旨い酒を飲める貴重なバー
ハナちゃんのかわいさにすっかり癒やされまくった一同だったのだが、ここでもう少しバーの情報について触れておこう。実は同店にはメニュー表というものが存在しない。マスターに「こんな感じのが欲しい」とリクエストをすると、ササッとカクテルを作ってくれるのだ。なぜそういうやり方なのかと聞くと、「カクテルの名前ってちょっとこそばゆい感じのものが多いじゃないですか。それが自分には恥ずかしくて……」。確かに。注文する側も、なんちゃらオン・ザ・ビーチとか、言いにくいものである。
ということで、早速マスターに一杯お願いしてみることにした。リクエストは「フルーティーで飲みやすいカクテル」。これにマスターが作ってくれたのは、ストロベリーとウォッカで作ったフローズンカクテル。濃厚な果実味がフローズンのシャリシャリ食感で飲みやすくさわやか。それなりに度数はあるのだけど、すごく飲みやすいのだ。
柴犬バーとして有名になったBlack Sheepだが、そもそもマスターがこの店を始めた理由は、「渋谷で安くおいしいお酒を飲める店がないから自分で作ろう」というもの。だから同店のカクテルは1杯900円~1,000円。しかもチャージなしなのがうれしい。それでいて渋谷駅から徒歩5分ほどと好立地だし、ハナちゃんもいる。いやー、最高ではないか。ちなみに、同店にはフードメニューは原則ない。駄菓子の「キャベツ太郎」が食べ放題で置いてあるので、それをつまみながら……という感じ。
あと、これは実際に行って感じたことだが、柴犬店長のハナちゃんと遊ぶという目的を持つことで、一人でも店に入りやすくなるのだ。どうしてもバーというと、初心者としては入りにくいとか、一人で行っても時間を持て余してしまうとか、そういうことが多々あるのだけど、この店ならハナちゃんのおかげで一人でも楽しめるし、他のお客やマスターともコミュニケーションが取りやすい。結果的に、Black Sheepはポジションとしては隠れ家的バーでありながら、入るためのハードルは随分低くなっているのだ。
仕事で心が疲れたときは、渋谷でおいしいお酒をリーズナブルに楽しみつつ、柴犬店長のハナちゃんと遊んで癒やされてみてはいかがだろうか。