こうした要望に応えるには、4Kという高解像度で撮影、処理し、モニターで表示するという能力が求められ、その分野ではすでに放送分野を始め、ソニーがノウハウを備えている。また、手術ではリアルタイムで表示することも必要で、映像を信号処理しつつ、しかもタイムラグなくモニターに表示することが求められる。ここでも。スポーツ中継などでリアルタイム性の高い映像を扱ってきた点など、ソニーのノウハウが生かせる部分だという。
さらに、体内の細い血管の縫合などでは、3Dで立体視する方が見やすいため、そうした3D映像に関してもソニーの技術を投入していく。
複数のモニターに情報を適切なタイミングで表示し、それを別の場所にも配信するといった仕組みには、ソニーが放送局のスタジオなどで培った技術が反映できるとして、トータルで構築するシステムインテグレーションも提供していく。
勝本氏は、「デジタルイメージング医療機器でイノベーションを起こしていきたい」と意気込む。もともと勝本氏は、長くソニーでビデオカメラを手がけ、コニカミノルタのカメラ事業統合以降はカメラ事業に携わってきた。カメラ事業統合以降は、文化の違う2社のメンバーをまとめ、「α」シリーズや「NEX」シリーズの新製品を開発。今回のオリンパスとの合弁会社でも、「この経歴を生かしてほしいとチャンスをもらった」という認識を示す。
副社長に就任するオリンパス出身の深谷孝氏は、顕微鏡、内視鏡の分野で開発を続け、多くの医療機関とのパイプも構築してきた。深谷氏は、「技術の力でまだまだ医療は発展させることができる」と話し、今回の合弁会社で医者と患者の負担軽減、医療の質の向上などを目指した製品の開発に取り組んでいく考えを示す。
勝本氏は、「デジタルイメージング医療機器を次々と開発、商品化して世界中の主要な手術室には必ず(同社の)医療機器があるようにしたい」とし、システムインテグレーションの分野でも、「世界中の手術室のスタンダードになる日まで追求していきたい」と意気込む。
今後、4Kや3Dを用いた内視鏡とその関連事業とシステムインテグレーションに関するビジネスは全て同社に集約され、それ以外の医療関連ビジネスは、今後も両社は継続する。深谷氏は「手術に必要な映像を高いレベルに実現するための技術が当社に全て集約された」と語る。
必要な人材や技術を両社から集め、さらにオリンパスの八王子石川事業所のそばにオフィスを構えたことで、オリンパスの資産を使った開発もしやすくした。販売、営業もオリンパスの資産を活用することで、世界中での事業展開を狙っていく考えだ。
新製品は、事業開始に認可が必要なため、それを待って提供していく。第1弾製品の登場は数年後になり、その後すぐに単年度黒字化、早期に累計の黒字化を図っていく。