ディスプレイの最新技術が一堂に会する専門技術展「ファインテック ジャパン」が4月10日から12日まで、東京ビッグサイトで開催されている。本稿では、東芝とLGエレクトロニクス・ジャパンのブースで展示されていた4Kパネルを使用した最新製品を紹介しよう。

東芝の4Kテレビ販売戦略

東芝のブースで紹介されていたのは、いわゆる「4Kテレビ」と呼ばれるコンシューマー向け製品。高精細表示により、ユーザーはあたかもそこに実体があるかのようなリアルな映像体験を楽しむことができる。ただ、現在開発を進めている製品は「4Kに対応したテレビ放送の開始に備えたもの」というわけではないという。説明員に東芝の戦略を聞いてみた。

展示されていた84型の4Kテレビ

4Kテレビは、液晶パネルの解像度がフルハイビジョンの4倍(多くは4,096×2,160ドットないし3,840×2,160ドット)に引き上げられた製品。地上デジタル放送はハイビジョン、ブルーレイディスク(BD)はフルハイビジョンであることを考えれば、4Kテレビの解像度の高さが想像できるだろう。

説明員はまず「一般家庭でも、テレビの大型化が進んでいます。例えば、いま42型のテレビをお使いの家庭でテレビを買い換えようと思ったら、42型より小さなものは買いません。買い換えに伴い、家庭内のテレビは必然的に大きくなっていくわけですね」と指摘する。その上で、4Kテレビを販売する狙いを「大画面になったときに問題になるのは、映像の画質です。これまで楽しんできた映像が、粗くなったと感じてしまう。大画面化によって映像が引き伸ばされるので、当然のことです。これを補完するのが、東芝の4Kテレビに搭載した超解像技術です」と説明した。

こちらは65型の4Kテレビ。BDも高解像度で楽しめる

東芝がいま4Kテレビで訴求しているのは、低解像度のデジタルコンテンツ映像を、高精細な画像に変換して再生できる超解像技術だという。これは「レグザエンジンCEVO 4K」と呼ばれているもので、これによりBDに収められているフルハイビジョン水準の映像も4Kの水準にアップコンバートして再生することができる。

説明員は、「もちろん地デジ放送やDVDの映像にも、再生時に超解像技術を適用できます。元の情報が少ないので限りはありますが、綺麗に改善した映像を楽しむことができます」と画質を強調する。4Kテレビというと、決まって「いつから4Kに対応したテレビ放送が始まるのか」という話になるが、東芝では近い将来に向けた製品としてではなく、いま購入しても充分に恩恵の得られる製品として4Kテレビを販売していく考えだ。

4K超解像処理により、映像を高画質化する。東芝では、この超解像技術テクノロジーを「これからのデジタルコンテンツ時代に不可欠な新技術」として訴求していく

6チャンネルを40時間にわたり録画し続ける「タイムシフトマシン」も標準搭載する。HDDは外付けのものに対応するという。気になるのは製品の値段だが、これについては、今年の1月に米ラスベガスで開催された家電関連見本市「International CES 2013」に登壇した東芝の深串方彦氏が「4Kテレビの58型、65型製品では1型1万円を切る価格を目指す」と発言している。86型の製品については、既にソニーが84型を168万円で販売していることから「そのあたりが上限になるのでは」(説明員)とのことだった。

側面と背面の様子。タイムシフトマシン機能なども標準搭載する

LGエレクトロニクス・ジャパンはパブリックディスプレイ

LGエレクトロニクス・ジャパンのブースでは、4Kに対応したパブリックディスプレイを紹介していた。展示されていたのは、LEDバックライトを搭載した84型ワイドスクリーンの「84WS70」。説明員は「4Kの超高画質で映像が出力できるので、それだけで人を惹き付けることができる」とアピールしていた。

LGエレクトロニクス・ジャパンのブースで紹介されていた、84型ワイドスクリーンの「84WS70」。4K(3,840×2,160ドット)に対応する。アスペクト比は16:9

説明員によれば、84型という大きさのパブリックディスプレイで4Kに対応した製品はこれが世界初だという。ベゼル幅は27.9mm、外形寸法は1,923(W)×101(D)×1,109.4(H)mm、質量は72.9kg。

スピーカーが搭載されている点や、IPSパネル採用により視野角が広いのも特長だ。水平/ 垂直方向からは178度の視野角が確保されており、どの方向から眺めても映像の色味が変わらない。説明員は「デジタルサイネージは街中に溢れているが、超高解像度で映像を出力できる本製品なら差別化をはかることができる」とアピールしていた。

84型ながら質量は72.9kg。壁に掛ける用途でも対応できる。縦に立てて表示することも可能。IPSパネル採用により、視野角は178度まで確保されている