国際的なマナーなどとともに英語を教える荒井弥栄さん

TOEICの勉強をしている人も多いと思いますが、読み・書き・リスニングを強化できても、会話力まではなかなか身につかないもの。どのような学習法が英会話力の向上につながるのか、元国際線のキャビンアテンダントで、国際的なマナーなどとともに英語を教えるオフィス・グレース代表の荒井弥栄さんに、英会話上達法を教えていただきました。

「R」=巻き舌は間違いだった!

――英語特有の発音がうまくできません。例えば「R」の巻き舌を意識すると、舌をかんでしまいそうになります。

荒井さん「日本の英語教育では、『R』を発音するときは巻き舌にするように教えていますが、実はこれは正しくありません。これでは次の音を発するまでに時間がかかってしまうので、単語をきれいに発音できません。実際には舌先をあげるだけでOKなのです。

また、『L』の発音について、舌を上あごにつけるように教わったことがあると思いますが、前歯の裏に舌をつけるだけでかまいません。上あごにまで舌をつける方法は、逆に『やりすぎ』になってしまい、ネイティブの方には『汚い』発音に聞こえてしまうことが多いです。

『F』や『V』にも同様のことがいえます。わざわざ唇をかまなくても、タッチする程度を変えるだけでOK。きれいな発音を身につけたいなら、口の動きも意識したほうがいいですね」

――正しい口の動きを身につけるのはどうすればいいでしょうか?

荒井さん「日本人でもネイティブ同様に発音できる方はいらっしゃいますが、それを判断するのは難しいこと。アメリカ人など(発音のくせの少ない)、ネイティブスピーカーに教わるのが確実でしょう。

その際、必ず講師の口の動きをチェックしてください。そして、講師の言ったことをすぐに反復すること。これを10回繰り返すことで、口の動きを身につけることができます。目から入ったものは人間は無意識にまねしようとします。講師の口元を見ながらの反復は、口の動きをまねしようと脳に伝達されるので、非常に有効です」

早朝5分間の学習が効率的

――正しい口の動かし方を短期間で習得する方法はありませんか?

荒井さん「朝起きて日本語を発する前に、英文を5分間音読しましょう。日本語と英語では、口の動かし方が異なります。正しい口の動きが身についていない場合、日本語を話した後では『英語口』がなかなか習得できないのです。そのため、早朝のほうが効果的に習得することができます」

――どのような文章を音読すればいいのでしょうか?

荒井さん「とにかく音読する習慣をつけることが大切なので、『I've been there.』などの簡単な英文でもかまいません。さらに効率よく学習するなら、文法の基礎となる文章や実践的なフレーズを音読するといいですね。音読することで口の動きを学びながら文法も覚えることができるので、学習期間の短縮にもつながります」

「英語っぽい」話し方はNG

――英会話を習いたいと思っていても、通学する時間がとれないことも多いと思います。そのような場合でもレッスンを受けることはできますか?

荒井さん「最近では、インターネットを活用した英会話スクールも増えていますね。24時間利用できるものもあるので、そういったものを上手に活用するのはいいと思います。

ただし、講師は必ずネイティブスピーカーであることが条件。最近ではアジア圏の方たちが講師を務める安価なレッスンもありますが、クセが強いのでアメリカなどでは通用しません。ビジネスで英語を使うために学ぶ方は、とくに注意していただきたいポイントです」

――ほかにも、英語を話す上で、注意したいポイントがあれば教えてください。

荒井さん「英語になれてきて、話すスピードを速くしようとするがために何を言っているのかわからない人によくお会いします。少し英語ができてきて、ネイティブの方に近づきたい、上手に思われたいという人に多く見られる傾向です。

ゆっくり話せば通じる発音も、早口になるとわからなくなってしまうことも。まずはきれいな発音をマスターしてから、次のステップとしてスピードを上げるということに挑戦していただきたいと思います。

また、英語を意識しすぎて、わざとらしい発音になってしまうこともあります。これも『汚い』英語といわれる原因になるので、気をつけましょう」

――ビジネスシーンで英語を話す際には、どのようなことに注意したほうがいいですか?

荒井さん「日本語でも敬語を使うように、国際社会では正しい言葉遣いが求められます。残念ながら学校で学んだフレーズが『使える』英語であるとは限らないので、TPOに合った言い回しを覚えたほうがいいですね。

私の著書『元国際線CAが教える日本人が知らないシンプル英会話』でも紹介しているのですが、例えば上司に『お話したいことがあるのですが……』といいたい場合、正しいフレーズは、『I would like to talk with you.』です。しかし、直訳してしまえば『I need to talk.(話がある)』と失礼な言い方になってしまうので注意しましょう。

同時に、相手の国の習慣や文化、マナーを知っておくことも大切なこと。国際的なビジネスパーソンとして活躍するには、実践的な英会話だけではなく、相手方の背景も学んでおく必要があるのです」

――最後に、英語を学ぶことのメリットについて教えてください。

荒井さん「さまざまなメリットがありますが、英語を学ぶと楽しい気持ちになれることは大きいと思います。英語は『陽』の言語と言われており、ネイティブの方と話していると、気分が高揚してくるでしょう。

たくさんの方とコミュニケーションがとれることはもちろん、日本では発売されていない海外ドラマのDVDを取り寄せて楽しむことができたり、楽しみの幅を広げたりすることも可能です。英語に興味をお持ちならば、すぐにでもスタートしていただけるとうれしいですね。

そして、英語とともに世界へ羽ばたき、日本を元気にしてくださる方が増えることを期待します」

荒井弥栄
JALで国際線のCAとして10年以上勤務後、英語指導者に転身。エグゼクティブに特化した半年間完成プログラムで、英語だけでなく国際人として世界に通用するマナーや交渉事についてまでレッスンする。著書には『ビジネスで信頼される ファーストクラスの英会話』(祥伝社黄金文庫)他2冊がある。2013年8月に4冊目刊行予定。
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