「X1 Carbon」が11.6型タブレットに収まった? 新たな冷却機構を開発
レノボ・ジャパン PMP 製品開発統括担当 ノートブック製品開発 伊藤貴志子 |
続いて、レノボ・ジャパン PMP 製品開発統括担当 ノートブック製品開発 伊藤貴志子氏が「ThinkPad Helix」に搭載された技術について解説を行った。
「ThinkPad Helix」は、11.6型のタブレット部分にCPUやストレージを搭載。スペックによって、いくつかのラインナップを展開するが、最小構成時ではCPUがIntel Core i5-3427U(1.8GB)、メモリが4GB、ストレージが128GB SSD。最上位モデルでは、Intel Core i7-3667U(2.0GB)、メモリが8B、ストレージが256GB SSD。なお、メモリはIntel Core i7-3667U選択時のみ8GBを搭載する。
製品発表会に出席したレノボの説明員によると、「タブレット部分にX1 Carbonをそのまま入れたようなもの」だという。「11.6型の小さなタブレットにCore i7やCore i5を搭載するには、冷却が重要になる開発では冷却部分にかなり注力した」と伊藤氏は振り返る。
タブレット本体カバーはハイブリットマグネシウムと、マグネシウム合金+ガラス入り熱可塑製プラスチックを用いている。「特性の違う素材を使っているので、塗装などで熱が加わるとひずんでしまう。製造工程でジグを使って修正する必要がある」(伊藤氏) |
バッテリ |
小型・薄型PCに必ずつきまとう「熱」の問題だが、「ThinkPad Helix」はまず、Ivy Bridge世代のCoreプロセッサに実装されている「Configurable TDP Technology」と呼ばれる電力と性能の最適化技術を利用して、状況に応じてTDPを変化させている。
■Configurable TDPについては下記の記事を参照されたい
【レポート】 COMPUTEX TAIPEI 2011 - 米IntelがUltrabook計画を発表、将来CPU"Ivy Bridge"や"Haswell"へ言及 - Eden氏会見
例えば資料作成などでフルパフォーマンスが必要な「ノートブックモード」では最大17W、発熱を抑えたい「タブレットモード」の場合は最大10W、その中間に位置する「スタンドモード」「タブレット+モード」では最大13Wに設定されている。
また、「ThinkPad Helix」では新たに特別な冷却機構を実装した。タブレット製品はファンレスであるものがほとんどだが、「ThinkPad Helix」ではタブレット部分に1基、ドック部分に2基を搭載する。TDPが17Wの環境ではこの3基のファンが動作し、Core i7/Core i5のパフォーマンスを確保する。
さらに、タブレット部の中にはヒートパイプが設置されており、熱気を上下に運ぶ役目を担っている。上部方向への熱はそのまま排気孔を通じて排熱するが、下方向へ運ばれた熱はドックに搭載されているファンが迎え撃つ構造となっている。
細部までユーザビリティにこだわった設計
通常のノートPC都は異なり、ディスプレイ側に基本的なシステムを搭載する「ThinkPad Helix」は、普通に考えれば重心が上になり、転倒しやすくなってしまうが、ディスプレイの傾きを調整しても倒れるということはない。ヒンジの軸を手前にずらすといった調整でバランスを取っている。
ドッキングを行うヒンジ周辺の剛性も高く、ドッキングカバー部分は曲げに強いマグネシウム、ドッキングフック部分は硬質でなめらかに滑るポリセタール、ガイド部分はヒンジと同様に堅牢な亜鉛合金と個所ごとに素材を使い分けている。
実際に展示されたモデルで、ヒンジ周辺部に対してかなり力を入れて押してみたが、少々曲がってもすぐに元に戻ってしまった。タブレット部分を取り付けるときも、ちょっと傾いた状態で適当に挿そうとしても、問題なく取り付けることができた。
イジェクトボタンを押した際、ロックを解除した状態を保持する機構を搭載。これによってイジェクトボタンを押し続ける必要がなく、片手でもタブレットとドックの着脱が可能となっている。
このほか、ドックに備えられているケンジントンロック用のセキュリティスロットを出した状態だとイジェクトボタンを押すことができず、タブレットだけ持ち去られるといったことも防げるという。
また、デザインへのこだわりも見逃せない。ファンカバーは、ファンがむき出しになって目に触れないために設けられている。極端な話だがカバーがなくても性能は変わらない。
同様にタブレットのインタフェースが並んで配置している部分にも細工が施されている。通常、システムが搭載されている部分(ThinkPad Helixであればタブレット部分)に、技術基準適合証明などを記載しなければならないが、ThinkPad Helixではわざわざこのためだけにラベルを収めるスロットを用意している。
広くなった「クリックパッド」
ThinkPadといえば、堅牢性に加えて重要なのが入力デバイス。「ThinkPad Helix」では、キーボード部分が薄いため、トラックポイントのキャップの高さが従来よりも低い「ロープロファイル」仕様となっている。
また、トラックポイント用のマウスボタンとスクロールボタンを排し、パッドとボタンが一体化した5ボタンクリックパッドを新たに搭載した。なくなったボタンの分、これまでのクリックパッドと比べて面積が広く、Windows 8向けのジェスチャーやマルチタッチに対応。ホームポジションからできるだけ手を動かさずに操作できるという。
パッド部分は「X1 Carbon」と同様にガラス素材で表面に特殊な加工を施すことによって、シルクのような滑らかな手触りとなっている。
このほか、デジタイザーペンは「ThinkPad Tablet 2」の1,024から2,048と2倍の感度になっている。
最長約12時間の長時間駆動を実現
「ThinkPad Helix」は、タブレットとキーボードドックの両方にバッテリを搭載。タブレットのみの状態では約8時間、キーボードドックに装着すると最大約12時間の長時間駆動が可能だ。
「持ち歩きを行うタブレット側にいつでも給電できることをポリシーとした」と伊藤氏がいうように、タブレット単体でもACアダプタの接続が可能で、ドックとの接続時はドックからタブレットへ給電される。
バッテリ駆動時もまずドック側のバッテリから使用し、なるだけタブレット側のバッテリを消費させないほか、充電時もタブレット側のバッテリを優先して充電する設計となっている。
「ThinkPad Helix」は、法人向けモデルはすでに販売を開始。コンシューマー向けモデルは4月下旬より直販サイトにて販売を予定する。最小構成価格は168,000円前後。最上位の構成では235,000円前後の見込み。