日本マイクロソフトは9日、Windows XPおよびOffice 2003の延長サポート終了まで一年を切ったことから、都内で最新コンピューター環境への「移行支援強化期間」の実行を、報道関係者向けに説明した。壇上に上った日本マイクロソフト代表取締役社長の樋口泰行氏は、「Windows XPに対する12年半のご愛好に感謝したい」と述べ、Windows XPを取り巻く状況の説明を行った。日本国内におけるOSの利用状況は、企業・法人向けコンピューターのうち40.3パーセントにあたる1,419万台と、コンシューマ向けコンピューターのうち27.7パーセントにあたる1,170万台がWindows XPのままだという。
Microsoftのサポートポリシーである「サポートライフサイクルポリシー」は、通常であれば「メインストリームサポート」が5年、「エクステンデット(延長)サポート」が5年、計10年の間、セキュリティ更新プログラムを含めたサポートを実施している。だが、Windows XPに限ってはメインストリームサポートが2.5年延長され、計12.5年のサポート期間となった。
その一方でWindows XPを取り巻くセキュリティ環境にも言及し、同氏は「Windows XP時代はネットワークワームとウイルス感染による被害が中心だったため、ファイアウォールや更新プログラムの自動化で事足りていた。しかし、2004年頃からボットネットやサイバー犯罪が増えた」と解説。Windows VistaやOffice 2007以降の対応として、新しいアカウントの管理方法や攻撃を受けにくいファイル形式への採用など、新しいソフトウェアへの移行をうながした。
ゲストスピーカーとして、一般社団法人JPCERTコーディネーションセンターの早期警戒グループリーダー 情報セキュリティアナリストである満永拓邦氏と、独立行政法人 情報処理推進機構 技術本部セキュリティセンター調査役の加賀谷伸一郎氏も壇上に登場。日本を取り巻くセキュリティ環境やアップデート(更新プログラム)が提供されないリスクやソフトウェアのぜい弱性を解説し、2014年4月9日でエクステンデッドサポートが終了するWindows XPとOffice 2003の使用リスクを解説した。
続いて日本マイクロソフト執行役ゼネラルビジネス ゼネラルマネージャーの高橋明宏氏は、「移行支援強化期間」について詳しい説明を行った。同氏はWindows XPから新しいOSへの移行支援として、サポート終了の告知サイトやニュースレターを通じて幅広い告知活動を実施する。また、IT運用管理の人員が少ない中小企業を対象にした無料窓口を開設する「相談窓口」、通常価格の15パーセントを割り引いてアップグレードライセンス購入が可能な「購入支援」を4月9日から一年間実施するという。なお、購入支援である「Windows XP&Office 2003移行支援キャンペーン」は、3ライセンス以上(Open License)が対象となるので主に中小企業向けのキャンペーンと捉えた方がいいだろう。
Office 2003ユーザーに対しては、4月1日から実施中の「新Office 365キャッシュバックキャンペーン」を紹介。同キャンペーンはクラウドサービスであるOffice 365 Midsize Businessを購入したユーザーを対象に、最大25万円のキャッシュバックを実施するというもの。
再び壇上に立った樋口氏は、「IT業界パートナー約360社と連携し、『移行支援強化期間』を一年間実行する」と述べ、参加するパートナー企業を紹介。壇上に並んだパートナー企業を代表してスピーチを行ったリコージャパン専務執行役員の窪田大介氏は「Windows XPからのアップグレードは、OSの導入からセキュリティ設定、アプリケーションの導入などを含めると、一台数時間から半日ほどかかるので、買い換え需要の高まりやサポート終了を待たず、最新環境に移行してほしい」と述べた。なお、パートナー企業の「移行支援強化期間」に関する取り組みは別報でお送りする。
質疑応答では個人ユーザーに対する施策が質問にあがり、日本マイクロソフト業務執行役員 Windowsビジネス本部 本部長の藤本恭史氏が「個人に対しては(前述した)Webサイトと販売店でリーフレットを配布する」と紹介した。記者からの「Windows XPはスタンドアローン(ネットに接続していない独立した状態)で運用すれば安全では」という質問には、同社のチーフセキュリティアドバイザーである高橋正和氏が、欧米で大流行したウイルス「Conficker(コンフィッカー)」を例に挙げ、「感染例にUSBメモリーが含まれていた。スタンドアローンだから安全とは考えてほしくない」と述べた。