記録的に桜の開花が早かった関東以南では、今年のお花見シーズンはほぼ終わったが、東北での開花は4月中旬以降のため、これからがシーズンとなる。美しさに酔いしれるもよし、家族や仲間との交流の機会にするもよし、復興を願って愛(め)でるもよし。いざ春爛漫(らんまん)の東北へ。
東北復興へ「桜の名所・八十八カ所巡り」
東北の魅力は、温泉、グルメといろいろあるが、春といえばやはり桜。東北6県には数多くの桜の名所があり、どこに行こうかと迷ってしまうほどだ。
そんな時に役立つのが「東北・夢の桜街道」だ。官民合同のプロジェクト「東北・夢の桜街道推進協議会」が、日本人の愛する桜を東北復興のシンボルに掲げ、東北6県の桜の名所を「復興への祈りを捧げる 桜の名所・八十八カ所巡り」として選定している。
便利なのが、このプロジェクトから生まれた「東北お遍路NAVI」なるアプリ。札所と呼ばれる88カ所の桜の名所をお遍路のように巡るためのもので、名所を地図上の一覧から探せる上に、NaviConを経由してカーナビに目的地を設定することもできる。
とは言っても、シーズン中に88カ所全てを巡るのはまず不可能。なので、お遍路道の順路に従いながら、東北6県各1カ所ずつの桜の名所を、現地からのお花見情報と合わせて紹介していこう。
桜お遍路は樹齢1,000年超の「三春滝桜」から
まずは88カ所の札所の一番、福島県三春町の「三春滝桜」。樹齢推定1,000年を超えるベニシダレザクラ(紅枝垂桜)の巨木で、国の天然記念物だ。満開時には薄紅の花が流れ落ちる滝のように咲き匂う。
「震災のあった一昨年は観光客が例年の半分に落ち込みました。今年は例年並みの30万人程度まで回復するのではと期待しています」(三春町産業課・国分美香子さん)。
今年の「滝桜」の開花は4月10日頃と予測されるそうで、東北の先陣を切っての開花となる。4月19日から22日までは、夜間のライトアップも予定されている(開花状況によって変更する場合もある)。
福島県から北上して宮城県へ。こちらのお薦めは札所の二十八番、塩竈(しおがま)市の藍竈(しおがま)神社「藍竈桜」だ。藍竈神社は創建が奈良時代以前とも言われる歴史のある神社で、東北鎮護・陸奥国一宮とされ、同社の御社紋にもなっている藍竈桜は、古くから歌に詠まれたヤエザクラである。その薄紅色の花弁は見惚(ほ)れるばかりの美しさだ。
4月26日には藍竈神社大講堂で、「美しい多摩川フォーラム」副会長・平野啓子さんの「美しき桜心の物語」語り会が催される(要申し込み。東北・夢の桜街道推進協議会事務局「しおがま係」)。
お遍路巡りは山形県に進み、四十四番札所の天童市の天童公園に至る。町のシンボルでもある舞鶴山をおよそ2,000本もの桜が覆い尽くす。天童市広報課の東海林さんによれば、「開花は4月14日頃、満開となるのは19日頃の見込み」とのこと。
21、22の両日には、将棋の駒で有名な天童市ならではの「人間将棋」が催される。兜(かぶと)と甲冑(かっちゅう)に身を包んだ武者を将棋に見立てた名物行事で、今年は満開の桜の下での対局が実現しそうである。
東北の春のフィナーレを飾る弘前公園の桜
桜前線はさらに北へ。「開花は4月20頃、満開になるのが25日頃の見込み」(北上市商業観光課の渡辺怜史さん)という岩手県北上市の北上展勝地、五十五番の札所となる。
「みちのく三大桜」にも数えられるこの地には150種1万本もの桜があるが、見所は北上川沿いの土手に続く桜のトンネル。ソメイヨシノが大きく枝を広げて2kmにも渡って続いていく。4月15日からは北上さくらまつりが催され、観桜茶会や黒沢尻歌舞伎さくら道中など盛りだくさんのイベントが企画されている。
七十番札所は秋田県仙北(せんぼく)市の角館(かくのだて)の桜。城下町である角館は「みちのくの小京都」とも言われ、武家屋敷通りに降り注ぐシダレザクラ(枝垂れ桜)は風情満点である。このシダレザクラは、江戸時代に京都の三條西家の娘が佐竹北家に嫁いできたとき持参した3本の苗木が元になったもの。今では国の天然記念物に指定されている。
武家屋敷ばかりではない。町の中心を流れる桧木内(ひのきない)川の堤には全長2kmに及ぶソメイヨシノのトンネルが続く。角館は桜の町としても名高い。「開花は4月23日頃、満開になるのが4月29日頃と予測しています」(仙北市観光課・鈴木由花梨さん)。
角館桜まつりの開催は4月20日からだが、それに先立つ4月13日からは角館町平福記念美術館にて「片岡鶴太郎展~角館桜舞~」も開かれる。桜の染め物の着物から水墨画、陶芸まで片岡さんのバラエティに富んだ作品が楽しめる。
さて、東北の春のフィナーレを飾るのが、「東北・夢の桜街道」最後の八十八番札所となる青森県弘前市の弘前公園の桜である。「開花が4月24日頃、満開は29日頃と予測しています」(弘前市立観光館・猪股麻衣さん)というから、GW(ゴールデンウィーク)に合わせたかのように桜が咲き乱れることになる。
4月23日からは「弘前さくらまつり」も始まる。津軽三味線や民謡、手踊りなどが披露され、屋台もたって多勢の観光客で賑(にぎ)わう。弘前城を望む満開の桜の下で、東北の行く春を惜しんでみてはいかがだろう。