元CAの英語指導者・荒井弥栄さん

英語を聞き取れる耳は、3歳までに作られると言われています。これを大人になってから身につけるためには、どのようなトレーニングが必要なのでしょうか。元国際線のキャビンアテンダントで、「短期間で必ず成果を出す講師」として知られる、オフィス・グレース代表の荒井弥栄さんに英会話上達法を教えていただきました。

主語と助動詞を離してはダメ!

――外国人の話す英語は速くて聞き取れません。どうすれば聞き取れるようになりますか?

荒井さん「ネイティブの方は『I'll』のように主語と助動詞をくっつけて話すので、日本人には聞き取りにくいようです。それは、日本人が『I will』と、主語と助動詞を離してしまうから。人間は自分が話せないことは聞き取れませんので、ネイティブの方がどのように会話しているのかを知っておく必要があります。

そのためには、ネイティブの方の発音を毎日聞くことが重要です。まずは英語のニュースや洋画でもかまわないので、正しい発音にふれる機会を設けましょう」

――短期間でリスニング力を強化する方法はありますか?

荒井さん「目・耳・口、この3つを同時に活用することが近道といえますね。まずは講師のお手本をよく聞くこと。このときに、講師の口の動きにも注目してください。どのくらい口をあけて話しているのか、コピーするつもりでチェックしましょう。

そしてそのフレーズの書かれた文章を見ながら発音してみる。そうすれば自分で話したことを聞き取ることができますので、より習熟スピードをアップすることができます」

とにかくまねをしてみる

――英語のリスニングは週に何回くらいのペースでやればいいものなのでしょうか?

荒井さん「とにかく毎日生の英語にふれることが重要です。とくに英語学習をはじめたばかりのときには英語の発音が定着していないので、短時間、5分でもよいので一日たりともかかさないようにしたほうがいいでしょう」

――仕事が忙しかったりすると、毎日続けるのは難しいですよね。

荒井さん「通勤時にリスニング用のCDを聞いたり、家事をしながら英語のラジオをかけておいたりするなど、忙しいときでも継続できる方法はたくさんあります。あえて時間を作ろうとせず、何かをしながら英語を聞くことを習慣づければ、無理なく続けられるのではないでしょうか」

――なるほど。ちなみに、英語の上達が早い人とは、どのような特徴があるのですか?

荒井さん「ものまねが上手な方は、すぐに英語を話せるようになる方が多いですね。また、雑誌などではやりを取り入れるのが上手な女性も、講師の特徴をとらえることができるので吸収力は高いです。最初は気に入った映画やドラマのセリフなどを聞きながらまねしてみるといいでしょう」

日本語力も求められる

――英語を聞き取れても、それに対してどう答えればいいのか時間がかかってしまいます。どうすればすぐにフレーズが出てくるようになりますか?

荒井さん「脳の中には、日本語を理解する部分と英語を理解する部分があり、パイプでつながっているような感じです。バイリンガルの方はこのパイプがない状態なので、瞬時に英語を発することができるのです。しかし英語を話せない方ほど、このパイプが長い。これをいかに縮めるかが重要なので、繰り返しトレーニングすることをオススメします。

また、文法を理解することもかかせません。文章を組み立てる能力は、会話にも求められるものなのです。

英語に慣れてきたら、日本語のフレーズを聞いて、それを瞬時に英語のフレーズとして発する。そしてそのフレーズを書くというトレーニングをすれば、より確実に定着させることができます」

――日本語力も重要とは知りませんでした。

荒井さん「日本語で自分の考えていることをきちんと伝える能力がなければ、それを英語にすることはできませんからね。これができないと、文章がやたらと長くなってしまうものです。言いたいことは短く端的に。これを心がけてほしいものです。

しかし、なんでも直訳したり、ひとことで言おうとしたりすると、相手に伝わらないことも。例えば『ひな人形』を直訳すると『hina doll』になるのですが、外国人はひなまつりがどのようなものかわからないですよね。女性のためのフェスティバルで人形を飾るものだという、文化についても説明する必要があります。

正しい英語に訳すと、次のようになります。

In Japan,we have the Doll Festival on March 3.
This is the day to pray for healthy growth and happiness for young girls.
Many families with girls display dolls called Hina-ningyo which depict the imperial court .They are dressed in beautiful ancient court costumes.

(日本では3月3日はひな祭りの日です。
これは女の子が健康に成長して幸せであるように願うための日です。
女の子のいる多くの家庭は宮中の様子を表す雛人形を飾ります。
人形は美しい古代の宮中衣装を着ています)

このように、英語を学ぶときには、文化や習慣の違いについても知っておかなければならないのです」

――英語を習得するには、さまざまなことを学ぶ必要があるのですね。これらを習得するのに必要な期間はどのくらいでしょうか?

荒井さん「英語学習は、長い期間をかけるほど失敗します。なぜなら、目標を設定せずにダラダラと続けてしまいがちで、なかなかゴールに到達できないからです。短期間で集中的に取り組んだほうが確実に身につきます。

学習をスタートするときには、必ず目標を設定しましょう。いつまでにどのレベルに達することを目指すのか、スケジュールを決めてください。このとき、ゴールに向かって計算するのではなく、必ずゴールから逆算するようにして。そうすれば、何をやらなければならないか明確になりますし、ダラダラすることを防ぐことができます。

このようなスケジューリングができる方は、ビジネスにおいても成果を挙げられるものです。さまざまな効果が期待できますので、ぜひ挑戦してほしいですね」

荒井弥栄
JALで国際線のCAとして10年以上勤務後、英語指導者に転身。エグゼクティブに特化した半年間完成プログラムで、英語だけでなく国際人として世界に通用するマナーや交渉事についてまでレッスンする。著書には『ビジネスで信頼される ファーストクラスの英会話』(祥伝社黄金文庫)他2冊がある。2013年8月に4冊目刊行予定。 Office Grace