長きに渡り青森県民に愛されるイギリストーストは全国でも注目されている

山海の幸を駆使した魅惑のグルメの宝庫・青森県で、県民たちが愛してやまない「イギリストースト」をご存知だろうか。この菓子パンは、食パンにマーガリンを塗ってグラニュー糖を散らしたもので、全国各地でも似たものが入手できる。しかし、「イギリストースト」の人気の根強さはハンパではない。全国放送のテレビでも取り上げられるほど注目されているのだ。

これぞホンモノの県民的B級グルメ

現在では菓子パンにも多彩なバリエーションがあるが、食パン×マーガリン×グラニュー糖という菓子パンのファンは、全国に相当数存在するのではないかと推測する。年齢的には30代以上といったところだろう。これらの組み合わせ織り成す正統派B級グルメの蠱惑(こわく)的な食感には、実際、逃れられない魅力がある。

イギリストーストは、青森県内であればコンビニやスーパーなどで気軽に入手できる。際立って珍しい菓子パンではないが、食パンタイプは110円(税込み)という手軽さもあり、青森では発売以来およそ40年に渡って愛され続けている、立派なご当地グルメなのである。

実際、青森県に生まれ育った人でイギリストーストを知らない人はまずいないそうで、小さい子供からお年寄りまで誰でも一度は食べたことがあるのだという。ランチタイムやおやつの時間に買い求める人も多いという。

イギリストーストの原点、マーガリン&グラニュー糖のノーマル(?)タイプ

工藤パンが世に送り出すイギリストーストは常時5種類

イギリストーストは、地元青森で「くどぱん」と呼ばれて親しまれている工藤パンの商品だ。同社は昭和7年(1932)に創業。本社は青森市内にあり、青森県内で圧倒的な知名度を誇っているパンや和洋菓子の製造メーカーである。

もともとイギリストーストは、マーガリンとグラニュー糖が塗られた商品だけを販売していたが、近年ではバリエーションが増えている。工藤パンでは季節に応じて3~5種類ほどのバリエーションを用意しているのだが、これらがお世辞ぬきにどれもおいしい。甘さが程よく抑えられており、実に食べやすいのだ。

ちなみに、3月現在はノーマルタイプに加えて、チョコクリーム味とピーナッツクリーム味が販売されている。これまでには他に、いちご、メープルシュガー、コーヒークリーム、濃厚ミルクなどを展開してきたが、いずれも万人に受けそうな味で、奇をてらったものはまずない。

同社で他にロングセラーとなっているダブルサンド(ロールパンにジャムやマーガリンを挟んだ菓子パン)や、チョコレイ(デニッシュ生地にチョコアイシングをトッピングした菓子パン)同様、「誰にでも愛される味」であることを重視しているようだ。

ちなみにイギリストーストは、地元青森のご当地アイドル・りんご娘とコラボした商品を発売したこともある。「イギリストースト りんごジャム&マーガリン」のネーミングで、2012年11月1日から東北6県で発売されたという(現在は終売)。まさに、ご当地で愛されているメーカーならではのコラボと言えよう。

季節ごとのバリエーションも、試す価値大いにあり

斬新なデザインがロングセラーのカギ?

冒頭にも書いたように、イギリストーストは特段個性的な菓子パンでないことは事実だ。実は筆者が住む北海道にも、イギリストーストと非常によく似た、マーガリン使用のロングセラー菓子パンが存在する。しかしその菓子パンは知る人ぞ知るといった存在に落ち着いている。

一方で、なぜイギリストーストは青森県で長きに渡り愛されつつ、他県民にとっても一目置かれる存在であるのだろう。

よそものの浅はかな分析と言われるかもしれないが、やっぱり斬新なネーミングと温かみのあるデザイン、ここに尽きるような気がする。イギリストーストのベースとなる食パンは、頭の部分が山型になっているものが使用されている。この形状の食パンを、広く「イギリスブレッド」と呼ぶらしい。おそらくここから名づけられたのではないか。

手に取る人は「なぜ青森でイギリス?」と例外なく思うはずだ。つまりこのネーミングに、まず人々は心をつかまれるのである。そして中身は昔から親しみのある味。名前の意外性と素朴さのダブルパンチに加え、何となく漂うユーモラスでおおらかな雰囲気が、そのままインパクトになっているように思うがいかがだろう。

何度も説明してしまうが、イギリストーストは青森県内でごくごく簡単に入手できる。地域の人々に長年しっかり親しまれ続けるこのすばらしきご当地菓子パンを、青森を訪れた際は是非お試しいただきたい。

ミミの無いタイプもある。こちらはちょっとだけリッチに126円(税込み)だ