米Appleは4月1日(米国時間)、中国の同社製品ユーザーを対象としたCEOのTim Cook氏名義の謝罪文を同中国版サイトに掲載した(中国語簡体字)。これは同社の中国における製品サポートポリシーについて、過去数週間にわたって中国国営メディアやユーザーコミュニティの間で非難の声が挙がっていることを受けたもので、最終的にAppleが折れた形だ。
今回の謝罪に至る経緯の一部はWall Street Journalなどでも報じられているが、簡単に概要を追いかけていく。AppleはiPhoneを含む製品において分解修理が困難なこともあり、一部を除いて多くのケースで新品への全交換が前提となっている。ところが3月中旬に国営放送の中国中央TV (CCTV)での告発をきっかけに、中国での対応はその限りではないことが判明し、ほかにも人民日報やユーザーコミュニティの間でAppleを批判する声が急速に高まる結果となった。
具体的には、Apple製品には標準で1年の無償修理対応期間が用意されており、Apple Care等の延長保証サービスを使わない限り、1年間は保証規定内の内容であれば前述のような無償交換(または修理)対応が行われる。だがCCTVで報じられた件によれば、中国ではこのような修理対応が行われた場合には全交換だけでなく、なぜかiPhoneの裏蓋のみが古いもののままで修理対応が行われてユーザーの手元へと戻ってくるのだという。このように中国でのみ他国に比べて劣化したアフターサービスが行われている件について、国営放送での告発をきっかけに一気にApple批判が盛り上がったわけだ。
実は中国でのみこうした修理対応が行われる理由は、中国での法律による規定が根底にある。通常、Appleが無料修理対応を行っている1年という期間は、購入時点からカウントをスタートして1年となっている。ところが中国では新品交換対応を行った時点で再びカウントがリセットされ、今回のケースでは1年の無料修理期間がスタートすることになる。そのため、新品交換ではなくあくまで修理対応という点を強調するため、今回のような裏蓋交換による修理対応という苦肉の策を生み出したとみられる。これが結果として「中国でのみ劣悪なサービスを提供している」との評判を広める形となった。
最終的にCook氏名義で出された謝罪文によれば、中国においても今後は新品への全交換サービスが提供され、無償修理期間も交換時からさらに1年延長される形態へと変更された。つまりAppleが中国市場の要求をすべて受け入れた形だ。ここ最近になり、中国の国営メディアが外国企業を非難して世間のバッシングを煽るといった動きが活発化している。進出企業らは急成長中の中国市場を無視できないという理由もあり、今回のケースのようにそのまま受け入れる傾向がある。これが結果として次のターゲットを狙う動きにつながっている可能性もあり、中国における企業対応の難しさを感じさせる。