米AppleがiPhone 5をアピールする"Why iPhone"というWebページを公開し、話題となったが、その日本語版となる"好きになる理由"ページが同社Webサイト上で公開された。
米Appleの"Why iPhone"ページの公開は、韓国Samsung Electronicsによる「GALAXY S 4」の発表直後だったため、同端末に対する対抗策だと見られていた。日本で公開された"好きになる理由"ページには、どういった意図が隠されているのだろうか? そこで本稿では、とりわけ日本におけるiPhoneとライバルのAndroidの状況を考察しつつ、アップルが"好きになる理由"ページを公開した理由について考えていきたい。
アップルが同社Webサイト上で公開した"好きになる理由"ページは、"Why iPhone"ページをほぼそのまま日本語訳したものとなっているが、一番目を引くキャッチコピーには「iPhoneか、その他大勢か」という、やや刺激的なフレーズが用いられている。"その他大勢"が様々なAndroidスマートフォンを指すことは、誰の目にも明らかだといえる。
"好きになる理由"ページ |
Androidスマートフォンを"その他大勢"と述べることは、「Androidには多くのラインナップがあるが、はっきりとiPhoneと肩を並べるような人気機種はない」というアップルの強気の姿勢にも見える。しかし、世界的なスマートフォン市場を見れば、豊富なラインナップを揃えるAndroidがiPhoneを圧倒的に突き放しており、"その他大勢"と静観していられる状況ではない。米調査会社IDCが2013年2月に発表した2012年第4四半期における世界のOS別スマートフォン出荷シェアでは、Androidが70.1%、iOSが21.0%と、Androidに大差をつけられている。
もっとも、アメリカと日本のスマートフォン市場は、世界から見るとやや特殊であり、iPhoneの人気が比較的高く、特に日本ではその傾向が強かった。しかしながら、日本でも潮目は変わりつつあり、IDC Japanが3月27日に発表した2012年第4四半期における国内スマートフォン出荷台数のOS別シェアでは、Androidが57.8%と過半数を占め、前四半期に続いてiOSを上回っている。
また、2013年2月のBCNランキングの携帯電話部門においても、ソニーモバイルコミュニケーションズ製の「Xperia Z SO-02E」がiPhone 5を上回り、1位となっている。最新のAndroidスマートフォンの各機種は、フルHDディスプレイやクアッドコアCPUを搭載するなど、スペック面ではiPhoneを上回っているが、Xperia Zや今月14日(米国時間)に発表されたGalaxy S4に代表されるように、デザイン面でも洗練された機種も増えており、もはやAndroidに対するiPhoneの優位点は挙げるのが難しい状況だ。
今後のスマートフォン市場におけるiPhoneとAndroidのシェア争いは、現在すでにスマートフォンを使用している人が、どちらに機種変更するかが影響してくると思われるが、米メディアのPC Magagineが「Why I Gave Up My iPhone for Android(私がiPhoneをやめてAndroidを使うようになった理由)」という興味深いレポートを紹介している。
同レポートは、PC MagagineのジュニアアナリストがAndroidを選んだ理由として「カスタマイズのしやすさ」を第一に挙げている。具体的には、ホーム画面のデザインを便利なウィジェットで変えられること、(メールなどの)URLをタップした際に標準ブラウザでなく、Chromeが起動するように設定できること、キーボードアプリを変更できることなど、iPhoneにはできないことを紹介している。
それらの理由を述べた上で、同ジュニアアナリストは最後に「Androidに乗り換えて4カ月経つが、全く後悔していない」とレポートを締めくくっている。同レポートのような理由で、今後日本でもiPhoneからAndroidに機種変更する人も多く出てくると考えられる。
* * *
iPhone 5をアピールするアップルの"好きになる理由"ページの公開について、日本のスマートフォン市場の状況とあわせて考察してきた。様々なAndroidスマートフォンを"その他大勢"と表現するなど、アップルはあくまで強気の姿勢を見せるが、Samsung ElectronicsのGALAXYシリーズ、ソニーモバイルコミュニケーションズのXperiaシリーズなど、各メーカーのAndroidスマートフォンのブランドも確立され、日本でも定着してきている。
果たして、アップルがいつまでAndroidを"その他大勢"と言っていられるのか? そもそも、この"好きになる理由"ページを公開したこと自体に、Androidを"その他大勢"と印象付けたいアップルの焦りを見てとることができるのではないだろうか。