英語界のコンシェルジュ・荒井弥栄さん

ビジネスシーンにおいて英語の必要性が高まる一方ですが、なかなか学ぶきっかけがつかめない人は多いはず。英会話を習得するには、何から始めればいいのでしょうか。元国際線のキャビンアテンダントで、英語界のコンシェルジュとして活躍する、オフィス・グレース代表の荒井弥栄さんに英会話を学ぶポイントについて教えていただきました。

なぜ日本人は英語が話せないのか?

――中学生から大学生まで、8年間も英語を勉強したけれど、まったく話せません。それでも英語が話せるようになるのでしょうか?

荒井さん「日本人が英語を話せないのは、人前で失敗したくない、恥をかきたくないという思いが強く、日本人特有の謙虚さが英会話の向上をさまたげているのもあると思います。

世界中から日本人は英語が話せないと思われていますが、学生時代に基礎をしっかり学んでいるので、効率よくトレーニングすれば必ず話せるようになりますよ。私の個人レッスンでは、半年で必ず話せるようにプログラムを組んでいます」

――具体的にはどのようなことをすればいいのでしょうか?

荒井さん「まずはネイティブの方と同じ発音ができる日本人講師を選んでください。そして、レッスンは必ずマンツーマンで受けること。なぜなら、グループレッスンの場合、2人としてまったく同じレベルの人はいないので、進ちょくに差が出てしまうからです。世界で通用する英語を身につけたいのなら、講師選びも慎重になりましょう」

――講師を選ぶ際に、いい講師とダメな講師の見分け方はありますか?

荒井さん「教材をリピートするだけの講師は選ばないほうがいいですね。また、会話をするだけで、何を言ってもほめる講師もNG。間違ったり失敗したりしたときには、それを正してくれる人でないと英語は上達しません。

さらに、TOEICのスコアや講師の肩書にまどわされないことも重要。自分が話せることと、人に教えることができることは別のお話なので、そこに注意したほうがいいですね。

一方、日本人のウィークポイントをしっかり把握し、海外経験があり、生徒の間違いをきちんと指摘してくれる講師はオススメ。会話だけでなく文法も説明できて、実践的な会話ができる講師を選ぶといいでしょう。個人に合わせてレッスンをカスタマイズしてくれると、なおいいですね」

日常会話ができると勘違いしている人が多い

――これからの時代は英語が必要不可欠とはわかっているのですが、仕事で使う機会がないのでなかなか学ぶ気になりません。海外旅行でも、なんとなく通じている気がします。

荒井さん「実は、自分で日常会話ができると思っている人のほうが、正確な英語を身につけてないことが多いんですよ。ビジネスで英語を使わない方でも、せめてホテルやレストランなどで使えるフレーズだけでも覚えておくといいですね。

単語を並べるだけでも通じることはありますが、それは相手が何を言っているのか理解しようとかなり努力してくれるから。とくに飲食店やショップなどはサービス業ですから、間違った文法や表現でもこちらの意図をくみ取る努力をしてくれます」

――それならとくに問題ないように思えるのですが……。

荒井さん「正しい英語が身についていないために、きちんとしたサービスが受けられないこともあるのです。その例として、ニューヨークの人気レストランで目にした、日本人女性たちのお話をしましょう。

彼女たちは店員さんに3名だと告げるために、何も言わずにいきなり『Three,please.(3人!)』と言っただけだったので、彼女たちは満席だと言われ、帰されてしまったのです。

しかし、その後ろに並んでいたアメリカ人は、ほほえみながらこう言いました。

『Good evening. I know you are so busy today though, we would like to have a table for four.』
(こんばんは。混んでいるのは分かっているのですが、4人お願いしたいのですが……)

このように丁寧な口調で話したところ、ウェイティングルームに通されてすぐに席を用意してもらえたのです。

つまり、きちんとした丁寧な英語が話せれば、受けるべき上質なサービスを受けることができたということなんです。なかには、相手の職種で態度や使う英語の丁寧さを変える方もいらっしゃいますが、これでは国際人とはいえません」

――このような「使える」英語はどのようにすれば学べるのでしょうか?

荒井さん「いまネイティブたちが使っている英会話を熟知した方に習うことが一番ですが、洋画や海外ドラマなどを見ることでも生きた英語を学ぶことはできます。

とくに海外ドラマでは、はやりのフレーズが使われているので、本当に『使える』英語にふれることができるでしょう。日本にいながら海外を感じることができますし、世界を広げることも可能です。

英語を勉強だと思うとつらくなってしまいますが、文化や習慣などといっしょに学べば楽しくなるはず。まずは英語を学ぶこと=楽しいことになるような工夫をすることも大切ですね」

荒井弥栄
JALで国際線のCAとして10年以上勤務後、英語指導者に転身。エグゼクティブに特化した半年間完成プログラムで、英語だけでなく国際人として世界に通用するマナーや交渉事についてまでレッスンする。著書には『ビジネスで信頼される ファーストクラスの英会話』(祥伝社黄金文庫)他2冊がある。2013年8月に4冊目刊行予定。
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