前編では、ネット通販最大手Amazonがしかける「Kindleストア」と、電子書籍ブーム以前から着実に読者を増やしてきた老舗の書籍レンタルサイト電子貸本サイト「Renta!」の2サイトについて、「どの電子書籍販売サイトを選べばいいのか」という観点で比較した。
この後編では、具体的にユーザーはどちらのサイトを使うべきなのかということについてもう少し踏み込んで考えてみたい。
電子書籍のメリットについて、前編ではユーザーが電子書籍に求める要素として次の5点を挙げた。
・端末さえ持っていればいつでもどこでも読める
・端末を選ばない
・紙の本よりも安価である
・豊富な品ぞろえ
・購入前に試し読みがしたい
このうち、「端末さえ持っていればいつでもどこでも読める」「購入前に試し読みがしたい」についてはKindleストア、Renta!共に合格。「端末を選ばない」「紙の本よりも安価である」という点ではRenta!に軍配が上がった。
これだけ見るとRenta!が優位だが、じゃあ無条件にRenta!を使えばいいのかというと、そうではない。KindleストアとRenta!では「品揃え」がまったく異なるからだ。具体的にどう違うのかを紹介しよう。
まずKindleストアだ。トップ画面にはAmazonがセレクトした「Kindleセレクト」がずらりと並んでおり、そのラインナップは次のようになっている。
『神様のカルテ』
『逆説の日本史1』
『暗殺教室1』
『動きが心をつくる 身体心理学への招待』
『日本人へ リーダー篇』
『これが物理学だ! マサチューセッツ工科大学「感動」講義』
『英語即答トレーニング 自然なひとことがさっと口に出る!』
『新世代日本酒が旨い いま飲むべき全国の36銘柄』
『浮世の画家』
これらはあくまでKindleセレクトであり、売れている本というわけではないが、少なくともKindleとして推している本であることは間違いなく、Kindleストアの品揃えの傾向をつかむ手がかりにはなるだろう。ざっと見たところ、小説、コミック、新書などがバランスよく推薦されており、偏りは見られない。
画面左の柱を見てみても、ジャンルは「文学・評論」「人文・思想」「ノンフィクション」「投資・金融・会社経営」「実用・ホビー」「資格・検定」など実に細かくカテゴライズされており、扱う本が多岐にわたっていることがわかる。
ただしその分、各ジャンルについてはそこまで細かくジャンル分けされておらず、たとえば「コミック」では「少年コミック」「青年コミック」「少女コミック」「女性コミック」「ベストセラー」「新刊・予約」の6カテゴリにざっくり分類されているのみだ。なので、あらかじめ欲しい本があるならタイトルで検索してあるかないかを調べればいいのだが、「女性向けのコミックの中からホラー漫画だけを探したい」といった、特定のジャンルに絞ってよさそうな本を漠然と探すやり方は難しいのである。
一方でRenta!を見てみると、「小説・実用書」「雑誌」「グラビア」などもラインナップされているが、何と言ってもメインコンテンツはコミックであり、ジャンル分けも相当に細かく設定されている。たとえばメインカテゴリとして「女性向けコミック」「男性向けコミック」に分かれているのだが、さらに「女性向けコミック」の中には「少女漫画」「ティーンズラブコミック」「ハーレクインコミックス」「ロマンスコミック」「ボーイズラブ漫画」「レディースコミック」……など非常に詳細にカテゴライズされており、"ジャンルで探す"という楽しみを提供してくれているのだ。
また、コミックの種類にもKindleストアとRenta!には明らかな違いが見られる。たとえば手塚治虫作品についてはKindleストアにはまだ並んでいないが、Renta!だと実に382冊ものコミックが見つかる。逆にKindleストアにはジャンプコミックスが並ぶが、Renta!にはない。どちらが良い悪いというのではなく、それぞれ得意とする分野が異なるのだ。
ということで、ベタな結論になってしまうが、「自分が読みたい本の種類でサイトを使い分ける」のが正解だろう。
ただし、前述したように"ジャンルだけ決めてよさそうなコミックを表紙買いしたい"という場合や、"何十巻も発売されているコミックを全部購入だと高いので、レンタルでいいから安くまとめ読みしたい"という場合はRenta!一択である。筆者は『静かなるドン』をRenta!でまとめ読みしたが、100巻以上あるのでまともに購入すると5万円ほどかかってしまう。しかしRenta!の48時間レンタルなら1万円だ。この差は大きい。
いずれにせよ、ユーザーにとって選択肢が多いことは悪いことではない。サイト特性も異なるのだから、両方とも利用すればいいのだ。それが電子書籍時代にもっとも適したやり方だろう。