第11回東京フィルメックス最優秀作品賞を受賞した『ふゆの獣』、そして3.11後の東京を生きる人々を描いた『おだやかな日常』で注目を集める内田伸輝監督の本格商業デビュー作『さまよう獣』。
田舎のバス停に降り立った女。過去を語ろうとしない女は、老女の家にやっかいになり、女日照りの村の男たちを喜ばせようとする。その気もないのに誘ってしまう女と、調子に乗って身も心もはちきれんばかりの男たちが、光と風と緑の風景の中で繰り広げる奇妙キテレツな愛の争奪戦……。
2013年2月2日より劇場公開された本作だが、3月22日には早くもDVDとなってリリースされた。そこで今回はDVD発売に際し、ヒロイン・キヨミ役を演じた山崎真実が語った作品の魅力を紹介しよう。
山崎真実が語る『さまよう獣』の魅力
――『さまよう獣』ではちょっと訳ありな女性を演じています
山崎真実「普通の女の子なんですけどね。普通の女の子がある出来事によって自分を見つめ直すために旅に出て、そこで出会った人たちとの関わりの中で少し成長していくというお話で、私が演じるキヨミは本当に普通の、現代的な女の子だなと思いました」
――現代的な女の子ですか?
山崎「今の女性って、男の人によって態度を変えて、気分よく接してあげられる子が多いと思うんですよ。とても器用な女の子。だからすごく現代的だと思いました」
――山崎さんはいかがですか?
山崎「全然現代的じゃないと思います。あまり人を立てるということができないので、男の人からしたら何て憎たらしい女なんだって思われているかもしれないです(笑)」
――キヨミは山崎さんのおっしゃるとおり、接する相手によって人柄が変わりますが、急に人格が変わる演技は難しかったですか?
山崎「個人的には微妙な変化のほうが難しくて、今回のようにガラッと変わる役のほうがやりやすいです。ある意味、違う役を演じているような感覚なので。そういう意味では、マサルとの距離感が難しかったです。おそらく一番基本的な性格から微妙に変わった感じになると思うので、微妙さのさじ加減がちょっと大変でした」
――そのあたりについて内田監督からは何か指示はありましたか?
山崎「撮影のときに『キヨミってどういう子だと思う?』って聞かれて、私はすごく現代的な女の子だと思っていたんですけど……監督は何て言っていたかな? 全然覚えていないんですけど(笑)、ただ私とは意見が全然違っていたのが印象的でした」
――全然違っていたんですか?
山崎「全然とまではいかないかな? でも違っていたんですよ。なので、監督のおっしゃるキヨミに寄せながら演技をしました」
――実際に演じてみて難しかったのはどのあたりですか?
山崎「タバコに火をつけてあげたり、お酒をついであげるシーンがあるんですけど、自分が普段あまりしないことなのでちょっと難しかったです。先ほどガラッと変えるほうが難しくないと言いましたが、やはりあのシーンは手馴れている感を出さないといけないのに、あまりやったことがないので、なかなかそういう雰囲気が出せなくて……そこがちょっと難しかったですね」
――先ほどご自身は現代的じゃないとおっしゃっていましたが、キヨミと似ている部分はあると思いますか?
山崎「うーんどこでしょう……ないんじゃないですか。そもそも自分がどんな性格なのかがよくわからないんですよ(笑)。男っぽいってよく言われますけど、意外と臆病で、人に対して強がったりすることが多いみたいです」
――そのあたりはキヨミと似ているかもしれませんね
山崎「あ、そうかもしれませんね。でもやっぱり私とは似ていないと思います(笑)」