仮想デスクトップシステム「GRID VCA」を発表
NVIDIAは、企業のクラウド利用もGPUで加速する。ファン氏は、現在、企業では業務や販売などに利用するデータが肥大化しているため、個人個人のコンピュータ上のデータとサーバー上のデータの整合性を取るのに1日以上を必要とする場合があり、複数人が同じデータを共有するグループワークなどの足枷となっていると指摘。こうした問題を防ぐためには、データをすべてサーバー上で管理し、個人個人は、クラウド上で動作する仮想デスクトップ環境を利用することが望ましいとアピール。これまで、仮想デスクトップ環境では実現が難しかったグラフィックス負荷の高い業務でも、同社のNVIDIA GRID GPUを利用することでクラウド環境に移行できるとして、CADや映像編集、レンダリングなどのヴィジュアルコンピューティング向けの仮想デスクトップシステム「NVIDIA GRID VCA(Visual Computing Appliance)」を発表した。
これまでは、3D CADやビデオ編集といったグラフィックス負荷の高いソフトウェア環境を仮想デスクトップ環境で使うことは難しかった |
NVIDIA GRIDにより、ユーザーはどんな端末でもクラウドを介して、プロフェッショナルなグラフィックス処理が利用できるようになるとアピール |
同システムは、4Uラックマウントに最大2基のXeonプロセッサ(8コア16スレッド)を搭載し、各CPUには192GBずつ、最大384GBのメモリを実装。また、この4Uラックマウントには最大8基のNVIDIA GRIDが搭載でき、最上位モデルでは2基のKepler GPU(GeForce GTX 680でも採用されているGK104コア)を1枚のカードに搭載したNVIDIA GRID K2を8枚搭載することで、16ユーザーに仮想デスクトップ環境を提供できるようにする。価格は、シングルCPUと8 GPU(NVIDIA GRID K2 4枚)のエントリーモデルが2万4,900ドル、2 CPUで16 GPU(NVIDIA GRID K2 8枚)構成の上位モデルが3万9,900ドルで、別途ハイパーバーザーなどのソフトウェアライセンス料も必要となる。
ファン氏は、基調講演の中で、このGDIR VCAのデモとして、MacBook ProでWindows版の3Dモデルリング・アニメーションソフトの「Autodesk 3ds Max」やビデオ編集ソフトの「Adobe Premire Pro」、3D CADの「Solidworks」を動作させてみせ、同システムの導入で、中小企業の仮想デスクトップ環境構築が容易になるとアピールした。また、同氏はGRID VCA利用の応用例として、ドイツAudi社が準備を進めているインタラクティブショールームを紹介するとともに、タブレット端末を用いて、購入予定の車の色や内装、オプション装備などを変更し、リアルタイムで3Dレンダリングした結果を確認できるというデモも披露した。
NVIDIA GRID VCAの利用例として紹介されたAudiが準備を進めているインタラクティブショールーム。その開発はドイツRTT社が請け負っている |
RTT社がAudiに提供する車のカスタマイズサービスを実際に披露。車の色やオプション、インテリアなどを自分好みに設定して、その結果をタブレット上で表示。その実作業をするのは、もちろんNVIDIA GRID VCAというわけだ |
さらに、ファン氏はNVIDIA GRIDを採用した大規模なクラウドサービスの実用例として、映画制作用のクラウドレンダリングサービスを提供している米OTOYの「octanerender Claud Edition」を紹介し、112基のGPUを連係させ、ASUSTeKのUltrabook上の仮想デスクトップからでも、ほぼリアルタイムで映画品質のレイトレーシング処理を確認できることも披露。ファン氏は、GPUを積極的にクラウド利用することで、ユーザーが利用する端末の種類にかかわらず、高性能かつ高品質なグラフィックス処理も実現できる上、海外の支社や外注先との連係も容易になるとアピールした。