使いやすいキーボードとタッチパッド
キーボードドックに装着することで、クラムシェルノートPCとして利用できることがHP ENVY x2の魅力である。ピュアタブレットにサードパーティ製ワイヤレスキーボードを組み合わせることで、似たようなスタイルで利用できる製品は他にもあるが、キーボードとのデザイン的な一体感に欠けるほか、肝心のキーボードの使い勝手も今ひとつというものが多い。
その点、HP ENVY x2はキーボードにも非常にこだわって設計されている。キーピッチは約18.9mmで、左右だけでなく上下のキーピッチも同じである。携帯性重視のモバイルノートPCでは、上下のキーピッチが左右のキーピッチより狭い、つまりキートップが正方形ではなく横長の長方形という製品があるが、そうした製品はやはり慣れるまでタイピングしていて指が窮屈な印象を受ける。
しかし、キートップが正方形になっているHP ENVY x2では、窮屈な印象は一切受けない。また、キー配列が標準的で、不等キーピッチがないことも高く評価できる。こちらも、Ultrabookなどでは、標準的ではない配列のキーボードを搭載したり、右側の一部のキーのピッチが狭くなっているものがあり、やはり慣れないとミスタイプを誘発しやすい。
キーストロークは約1.5mmで、浅すぎず深すぎず、快適にタイピングできる。キーボード部分の剛性が高く、中央部分を強めに打鍵しても、たわまないことも嬉しい。キーのクリック感も良好で、心地よくタイピングできる。
また、ドッキングステーションに装着して、液晶部分を開くと、ヒンジ部分にあるスタンドが本体後部を少し持ち上げる格好になる。そのため、キーボード面が手前に向かって傾斜することになる。人間工学的には、キーボードにある程度の傾斜があったほうが、長時間タイピングを行っても疲れが少ないとされており、そのあたりもしっかり考えられているのだ。こうしたギミックにも、HPならではのこだわりが感じられ、所有することの喜びを与えてくれる。
ポインティングデバイスとしてはタッチパッドが搭載されている。大きめのサイズで、ポインティング操作も快適だ。また、タッチパッド左上のアイコンをダブルタップすることで、タッチパッドの有効/無効を切り替えられるのも便利だ。机の上でマウスを繋いで使っていても、うっかりタッチパッドを触ってしまい、ポインタがどこかにジャンプしてしまった経験がある人も多いだろうが、そうしたイライラはなくなる。
高品質な「Beats Audio」とHPの「音の哲学」
HPの製品はサウンドにも徹底的にこだわっていることが特徴だ。中でも特に音質に注力している製品には、Beats Audioと呼ばれる技術が搭載されており、高品位なサウンド再生を可能にしている。Beats Audioは、世界的プロデューサーとして第一線で活躍し続けているヒップホップ界のトップアーティストである「Dr.Dre」がプロデュースしたもの。そこにはミュージシャンが作った音楽をそのままのサウンドで忠実に再現したいという想いが込められている。
Beats Audioでは、独自のチューニングが施されたデジタル・シグナル・プロセッシングを採用し、デジタル音源を圧縮する際に失われた音を復元し、迫力の重低音とクリアな高音域を実現する。PCやデジタルオーディオプレイヤーが普及する以前、家庭で音楽を楽しむ主役はステレオコンポやテレビであったが、音楽のデジタル化とネットワーク環境での楽曲配信が進み続ける結果として、近い将来、PCがその役割を果たすことになるとHPは考えている。そのときを見据えて、あらゆるPCがきちんとした「高音質」を再生できるようにしておきたいというのが、HPのPCへの「音の哲学」であり、そのための技術がBeats Audioなのだ。
HP ENVY x2にもBeats Audioが搭載されており、ステレオスピーカーをディスプレイ前面に配置することで、ピュアタブレットとしての利用時でも、クラムシェルノートPCとしての利用時でも、音楽や動画などさまざまなコンテンツを高音質で再生できる。また、Beats Audioでは、内蔵アレイマイクを利用して、録音時のノイズ除去やエコーキャンセルなどの機能も利用できるので、ビデオ会議なども快適に行える。
このように、HP ENVY x2は、人間との直接的なインターフェースとなるキーボードやタッチパッド、およびサウンドにとことんこだわっている。タブレットとしての使い勝手はもちろん、モバイルPCとしての完成度も両立させることで、人とPCとの快適な関係を追求するという姿勢が伝わってくる。これこそ、HPの哲学なのであろう。
次回最終回は、バッテリ駆動時間について、さまざまな条件で徹底的に検証していきたい。