日本HPの「HP ENVY x2」は分離合体構造を採用した、一台二役のWindows 8搭載ハイブリッドPC。いわゆる変形タイプの製品と異なり、ピュアタブレットとしても利用できることが魅力だ。ボディへのこだわりや基本スペックについては、前回詳しく紹介したので、今回は、HP ENVY x2に搭載されている最新CPU「Clover Trail」の利点、キーボードやタッチパッドの使い勝手、音へのこだわりをチェックしていきたい。

HP ENVY x2

タブレット向けCPU「Clover Trail」の利点とは

HP ENVY x2は、CPUにIntel Atom Z2760(1.8GHz)を搭載する。Atom Z2760は、開発コードネーム「Clover Trail」と呼ばれていたインテルの最新CPUであり、PCやタブレットに必要な機能をすべてワンチップに集積したSoC(System on a Chip)であることが特徴だ。

Atom Z2760

通常、PCを構成するには、CPU以外にチップセットが必要になるが、Atom Z2760は、CPUコアを中心にGPUやメモリコントローラ、各種インターフェースコントローラなどが集積されているため、あとはメモリとストレージなどを用意するだけで、フル機能のPCを実現できる。SoC化により、チップの数を減らすことができるため、消費電力の削減とコストダウンに貢献するだけでなく、マザーボードをよりコンパクトにできるというメリットもある。

これまで、x86ベースのWindowsタブレットは、ARMベースのAndroidタブレットやiPadに比べて、バッテリ駆動時間が短いことが欠点であった。しかし、Atom Z2760では「S0ix」と呼ばれる新たな省電力技術を搭載することで、消費電力を大幅に下げることに成功しており、ARMベースの製品に負けない駆動時間を実現できるようになった。HP ENVY x2のバッテリ駆動時間については、次回詳しく検証する予定だが、キーボードドック装着時で最大19時間というのは、まさに驚異的な駆動時間だ。

また、Windows 8の32bit版では「Connected Stanby」と呼ばれる新機能がサポートされている。システムをスリープ状態にしても、インターネットとの接続が維持される機能だ。こちらもS0ixの存在が前提となるため、現状でConnected Stanbyを利用できるのは、Atom Z2760搭載機のみとなる。

現在ノートPCで主流の第3世代Core iシリーズではS0ixをサポートしておらず、2013年6月登場予定の第4世代Core iシリーズ(開発コードネーム:Haswell)まで待つ必要がある。S0ixは、今後のx86プラットフォームの展開の鍵を握る重要な機能であり、Atom Z2760は、その新機能をいち早くサポートした先進的なCPUなのだ。

Atom Z2760のブロック図。デュアルコアCPUとGPU、ビデオデコーダー/エンコーダー、各種インターフェースコントローラなどをワンチップに集積している

Atom Z2760は消費電力が小さく、発熱も小さいため、ファンレスで動作することも高く評価できる。Core iシリーズを搭載したUltrabookでは、CPUへの負荷が低いときは比較的静かでも、高い負荷をかけると途端にファンの回転数が上がり、その騒音が耳障りに感じられることがある。だが、ファンレスのHP ENVY x2なら、ファンの騒音で周りに迷惑をかけることもない。ピュアタブレットとして使えば、キーボードの打鍵音もしないので、静かな場所でも気兼ねなく利用できる。

昔のAtomとは大違い! 先入観を捨てるべし

Atomはあまり性能が高くないという印象を持っている人もいるだろうが、その先入観はハッキリいって間違いだ。確かに、以前のネットブックに搭載されていたAtomのパフォーマンスは決して十分とはいえなかったが、Atom Z2760は、ブランド名称こそ同じAtomでも、中身は全くの別物だ。

Atom Z2760は、Windows 8搭載タブレット向けに最適化が行われており、Widnows 8の新UIの操作感は快適だ。Windowsストアアプリの動作も非常に軽快であり、タッチ操作の反応も素晴らしい。動画のエンコーダ/デコーダを搭載しているため、YouTubeなどのHD動画の再生も滑らかである。従来のデスクトップアプリについても、WebブラウズやOfficeスイートでの文書作成、デジカメで撮影した画像の編集くらいなら問題なく可能だ。

もちろん、HD動画の編集やトランスコード、デジカメのRAW画像の現像といった、重い処理を行うには力不足であるが、本製品の性格を考えれば、そうした重い作業を行わせることはほとんどないだろう。

前述したように、Atom Z2760は、発熱が非常に小さいため、長時間連続動作させても、本体が熱くならず、不快に感じることもない。とにかく、Atomだから遅いのではないかという先入観は捨てるべきだ。

Windowsエクスペリエンスインデックスの結果。数値はそれほど高くないように見えるが、実際の使用感は快適だ

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