3月17日、デジタルハリウッド東京本校にて特別公開講座「デザインのススメ 2013~デザイン思考のアウトプット~」が開催された。講座に登壇したのは、同校デジタルコミュニケーションアーティスト専攻講師の中川直樹氏と、グラフィックデザイナー専攻講師の小山明氏。「これまでのデザイン」と「これからのデザイン」について、それぞれの視点から講義が行われた。

デザイン思考のアウトプット

デジタルコミュニケーションアーティスト専攻講師・中川直樹氏の講座『デザイン思考のアウトプット』は、デザインの昔と今で何が変わっているか、デザインに対する取り組みはこれから何が大事になるのかというテーマを軸に、広い意味でのデザインをどう考えていけばいいのか、ロジカルに迫る内容だった。

中川氏自身もアートディレクターとして第一線の現場で活躍する中で、「手法や領域やインタラクティブ性など、変わってきていることはあるが、コミュニケーションの概念は変わっていない」という。また、「デザインが扱うエレメントは写真・イラスト・文字・線、あとは色くらい。50年前も、多分50年後も変わらない」そうだ。その一方で、同氏は「1ページの画面デザインから仕事を始めたが、15年経って生活や(組織的・社会的な)仕組みに関わるところまでWebデザインが取り組まなくてはならないところまで来た」とも語った。

デザインは「解決策」。クライアントの課題を成功に導くためのもの

中川氏はiPhoneを例に挙げ、人がなぜiPhoneに熱中するのかと問いかけた。それはiPhoneが「電話+Web」という基盤の上でツール(アプリとWebの仕組みの組み合わせ)が無限の可能性を引き出してくれることへの期待感だという。だがiPhoneそのものの成り立ちは、従来あった電話とWebの技術を組み合わせたものであることに着目する。イノベーションではなく、アイデアによって次世代のスタンダードが作られたのだ。

一方で、ユーザーの消費行動パターンは地域や世代によって多様化し、ユーザー側にも自分の価値観で情報を得る能力が必要になっている。多すぎる情報の中でどんな人に向かってどんなコミュニケーションをするのか、ターゲットの立場を意識した上で、送り手側の視点に立った「5W1H(いつ、どこで、誰に、何を、どうやって伝えるのか)」によるユーザーシナリオが必要だと述べた。

ユーザー体験の解釈と、ユーザーシナリオを意識したストーリーテリング

このようにして、ユーザーが受け取るコンテンツの本質は、時代を経てもほとんど変わっていない。しかし、インタフェースと操作性は大きく変わっている。ひとつのソースを多くの人が、さまざまなデバイスで使うことになるため、インタフェースにはよりシンプルで分かりやすいことが求められる。だが、そこに唯一の正解がないことも、デザインの難しさであり面白さでもあるのだ。これらを踏まえてこれからのWebデザインを考えると、より広義に捉えた"デザイン"を考えることが重要になる。

良いデザインほど目に見えない。なぜなら気にならないから

社会を変える、役に立つものを創ることを考える「広義のデザイン」

「デザインは単にモノの形をカッコ良くするのではなく、広義に捉え戦略やプロセスも含めて考える必要があるもの。世の中の仕組みのところまで考えることが、社会全体に絡むWeb、インターネットの領域の仕事だと言えるのではないか」と、中川氏は語る。

中川氏の述べる「デザイン思考」とは、イノベーションではなく、次世代のスタンダードを創ること。それはデザインを広義に捉え、仕組みやシステムまで含めて考えることなのだ。

「カッコいいものを創ることもアリだけど、次世代に対してどういうことができるのだろうと考えてほしい」

次のページでは、「クリエイターに必要な3つのポイント」を公開する。