「うどんミュージアム【博物館】」は京都の中心・祇園にある

そばと並んで日本を代表する麺類のうどん。一般的には小麦粉を練って作る白色で細い麺をしょう油ベースのつゆで食べるイメージがあるが、実際には地域によって調理法や麺の太さなどが違っていて、それぞれの土地柄が強く出ているものも少なくない。そうした全国のうどんを紹介する博物館が2012年末に京都でオープンした。

京都らしい細い通路を抜けた先に建物がある

「うどんミュージアム【博物館】」と名付けられたこの施設は、京都の中心・祇園にある。建物は古く、第二次世界大戦のすぐ後に建てられたと伝わる築60年ほどの京都らしい町家を改装して利用している。「20年ぐらい誰も住まないまま放置されていたという物件の有効活用を図りました」と、マネージャーの石井真人さんは言う。

各地のうどんの魅力を伝え、現地へ誘導する場所

うどんと言えば、最近、香川県が「うどん県」と自ら名乗ったように讃岐地方が有名だが、「お客さまからも『どうして香川じゃないの?』とよく聞かれます」と石井さん。当初は香川県も候補地として挙がったそうだが、観光客の数が20倍も違い、また世界中からも多くの人が来ることから京都を選んだという。

「各地域の個性的なうどんを紹介することで、そのうどんが生まれた場所に興味を持ってもらえば、現地まで足を運ぶきっかけになりますよね。そして、観光客が集まれば、各地域が活性化する。それこそがミュージアムの狙いなので、より大勢の人に知ってもらえる京都が一番だろうと考えたのです」(石井さん)。

こうした目的から、京都でも最も人が集まる河原町にも近い祇園にオープンした同ミュージアム。実際、その狙いは的中し、土曜・日曜と祝日などには11時の開店を待てずに、早くから店の前には行列ができるほど。開店してすぐの1月だけでも、何と約3万人が訪れたとか。

入り口の壁には模型で各地方の麺の形が紹介されている

こちらは建物の中庭。京都の伝統的な町家には中庭は欠かせない

一言にうどんと言えど、見た目も味も全く違う!

全国には様々なうどんがあるが、その地域に行かないとなかなか食べられないものも少なくない。ミュージアムでは有名なものだけをwebサイトでピックアップして紹介しているが、それでもその数は40を数える。

館内ではもちろん食事もできる。「サイトに掲載しているものから数種。それに加えて、季節の素材を使う旬のメニューや新しく発見したうどんなど、常時30種類余りを提供しています」と石井さん。

その中で人気が高いのは、栃木の「耳うどん」(1,300円)。これは、人間の耳たぶのような形をしているためこう呼ばれている。また、群馬の「ひもかわうどん」(930円)は、かなり幅広な麺なので食べ応え満点だ。「新しく加わるものもある」との言葉通り、最近では、和歌山のとある地域で食べられている「梅うどん」(780円)が加わった。麺に梅が練り込まれているこのうどんは、春にぴったりな鮮やかな色が特徴だ。

手前が「梅うどん」で後列右側が「ひもかわうどん」、左側が「耳うどん」

全国各地のご当地のうどんサンプルも模型で展示

うどんの祭典のプロデュースも手がけている

建物は、京都の伝統的な町家らしい中庭を挟んで1階には2つの座敷とミュージアム、そして2階には2つの和室がある。「全部で100席ほど座席があります。うどんを使ったスイーツや京懐石メニューのご用意もありますので、カフェとして利用していただくのもいいですし、宴会にもご利用いただけます」(石井さん)。

ちなみに同ミュージアムは、2013年8月24・25日に東京の代々木公園で行われるうどん日本一決定選手権、「U-1グランプリ」の主催者欄に名を連ねている。

「大会には、既に多数のお店からお申し込みをいただいております。地方によって異なるうどん文化・味・食感等だけでなく、うどん職人さんの熱意も多くの方々に伝わればうれしいです」と石井さん。こうしたイベントの開催が功を奏し、地域活性化にも一役買ってきたうどん。今や世界からも注目されているこの麺の魅力を今一度確認するためにも、京都を訪れた際には、是非ともこちらのミュージアムに足を運んでみてほしい。

お気に入りの一杯を見つけたら、家で再現するもよし! はたまたU-1グランプリに駆け付けるもよし! あなたなりの“うどんライフ”を命一杯楽しんで。