「高齢出産」という言葉を知らない人は男女問わず、まずいないだろう。最近では「卵子は老化する」などというセンセーショナルな言葉とともにテレビや雑誌で特集が組まれることが多く、アラフォー女性の中には敏感になっている人も多いだろう。

高齢出産とは女性が35歳以上で子供を産むことだ。35歳以上の出産は、そんなにも難しいことなのだろうか。「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」の著者で産婦人科医の宋美玄医師に高齢出産の現状を聞いた。

高齢出産報道に疑問

産婦人科女医の宋美玄(そん みひょん)医師。高齢出産に関する話題の中で、「初期流産」が見逃されがちと指摘する

「日本では、毎年100万人以上の赤ちゃんが誕生しています。そしてその25%弱が高齢出産によるものです」と宋医師。医療の現場において、高齢出産は決して珍しいものではないのだ。「しかし報道を見ていると、染色体異常や加齢による卵子の老化といった点ばかり触れられていて、少し違和感を覚えます」。

一方で、「アラフォー、アラフィフの芸能人の妊娠出産報道により、『40代でも簡単に出産できちゃうんだ』と楽観視する女性も多く、それはそれでとても危険なことです(詳しくは『女性が妊娠できるのは「42歳まで」と判明』参照)」。

そして、高齢出産に敏感になっている女性に知っておいてもらいたいのが、35歳を過ぎると、妊娠する確率も低下していき、流産をせずに妊娠をキープできる可能性も徐々に低くなるとうい点。そもそも高齢"出産"にまでたどり着かないケースも多い、ということを宋医師は指摘する。

42歳での初期流産率は50%以上

高齢妊娠や流産というハードルを乗り越えた先にあるのが高齢出産、という現実

「妊娠11週までの流産を初期流産としていますが、40歳の女性の場合、妊娠しても初期流産をする可能性は40%。42歳で50%を超えます。高齢出産というと、染色体異常を気にする女性が多いのですが、40歳でダウン症の子を出産する確率は約1/80。初期流産の可能性のほうがよっぽど高いのです」。冒頭で高齢出産での染色体異常に関する過度な報道に関して宋医師が疑問を投げかけていたが、その理由がこのあたりにもあるわけだ。

また、初期流産の大きな原因となるのが卵子の老化。年齢とともに卵子は数が少なくなるだけではなく質も低下するため、妊娠を維持できずに流産する可能性が高くなる。高齢出産の前には、いくつも越えなければいけないハードルがあるということがお分かりいただけただろうか。

「35歳までに妊娠したいかどうかを決め、37歳までに妊娠しなければ専門のクリニックに行く。37歳で不妊治療をしての妊娠確率は50%、42歳だと1割弱なのです。『いつか自然妊娠するはず』と30代後半をズルズルと過ごして後悔しないようにしてください」。


宋美玄(そん みひょん)医師

産婦人科女医・性科学者
1976年兵庫県神戸市生まれ。2001年大阪大学医学部医学科を卒業。同年医師免許取得、大阪大学産婦人科入局。2007年川崎医科大学講師就任、2009年イギリス・ロンドン大学病院の胎児超音波部門に留学。
2010年には日本国内の病院にて産婦人科医として従事する傍ら、「女医が教える本当に気持ちいいセックス」を上梓。50万部突破の大ヒットとなる。
2012年には第一子となる女児を出産。現在、フジテレビ「とくダネ!」火曜日レギュラーコメンテーターとしても出演中。
宋美玄オフィシャルサイト