大手タイヤメーカー各社が、燃費を抑えることのできる「低燃費タイヤ」市場で激しい競争を繰り広げている。タイヤ業界では促進に力を入れているが、メーカーと消費者の間には温度差があるようで、2013年2月時点での自家用車保有者の低燃費タイヤ「購入経験率」は15.2%(日本能率協会総合研究所調べ)にとどまっているという。

「低燃費タイヤ」を詳しく知れば、いま持っている車のタイヤを交換するだけで見違えるほど燃費が向上するかも(写真はイメージ)

そこで、実際に燃費がどの程度向上するものなのか、市場の実情はどうなのか、いま一度おさらしてみよう。

「低燃費タイヤ」の効果と製品選びのポイントは?

「低燃費タイヤ」は、ラベリング制度によって定められた、「転がり抵抗係数」が5等級(AAA~C)の中でA以上(転がり抵抗係数が9.0以下)、「ウエットグリップ性能」が110以上(基準タイヤ対比によるウェットグリップ指数)という要件を満たしているタイヤだ。

低燃費タイヤのラベリング。転がり抵抗係数(AAA~C)とウエットグリップ性能(a~d)も記載されている

低燃費タイヤではない場合のラベリング

たとえば、転がり抵抗係数が最高評価のAAAであるダンロップ(住友ゴム工業)の「エナセーブ PREMIUM」では、同社従来製品「EC201」と比較した燃費実証実験で約6%の燃費向上が計測されたという。ガソリン1万円分を給油したとして、低燃費タイヤを使っていれば従来製品よりも600円分余る計算で、10回給油すれば6,000円もお得になる。

もうひとつの基準であるウエットグリップ性能は、路面が濡れた状態でのタイヤのグリップ力(制動時のグリップ力)を表しており、等級が高いほど滑りにくくて安全性が高い。低燃費タイヤのラベリングには、転がり抵抗性能とウエットグリップ性能の等級が記載されているので、双方をチェックして燃費と安全性を確認しよう。

現在の低燃費タイヤ市場と今後の展開

「低燃費タイヤ」が定義され、ラベリング制度が始まったのは2010年のこと。市場が始まってからまだ3年程度だが、タイヤメーカー各社の競争はすでに激化している。

ダンロップのベーシックな低燃費タイヤ「エナセーブEC202」

スタートダッシュを切ったのは、低燃費タイヤの開発にいち早く取り組んだダンロップで、2010年から3年連続で販売数トップをキープ(日本能率協会総合研究所調べ)している。しかし、2010年のシェアは51.2%で他のメーカーを圧倒していたものの、2011年は38.7%、2011年は36.3%と、徐々に差を縮められているのが実情だ。

それに対して、年々勢いを増しているのがブリヂストン。2010年のシェアは22.8%で、ダンロップとは28.4%の差を付けられ、3位のヨコハマタイヤ(横浜ゴム)との差が1.6%で僅差の2位。しかしその後、2011年は25.9%、2012年は31.7%とシェアを拡大し、ダンロップとの差を縮めてきた。4年目となる2013年は、転がり抵抗係数を約30%低減したという「ラージ&ナローコンセプトタイヤ」を開発し、早期実用化をめざすと発表。さらなるシェア拡大をめざしている。

ダンロップの「100%石油外天然資源タイヤ」プロトタイプ

迎え撃つダンロップも、2013年に石油資源をいっさい使わない「100%石油外天然資源タイヤ」を、究極の「低燃費タイヤ」として発売する予定。天然資源100%であれば、当然のことながら環境負荷は低く、エコロジーの観点からも高評価を得られるはず。さらに、2015年には、「50%転がり抵抗低減タイヤ」の発売も予定しており、現在の「AAA」を超える燃費性能を実現する予定だ。トラック・バス用タイヤにおいても、同社の低燃費タイヤブランド「エナセーブ」を拡大すると発表している。

このように、タイヤメーカー各社の開発競争によって、低燃費タイヤの進化はかなりの速さで進化を続けている。次に乗り換える車の燃費を気にして自動車のスペックをチェックしていた人も、いま乗っている車で結果につながる「低燃費タイヤ」の導入を検討してみてはいかがだろうか?