サイバーエージェントがこのほど発表した調査で、「キスまでする男友達"キスフレ"」がいる女性は36%という結果が発表され、衝撃が走りました。テレビドラマなどを見ていると、「キスは本当に好きな人とするもので、体は許してもキスは好きな人としかしない」というような風俗嬢のせりふがあったり、一般でも飲み物の回し飲みが不衛生でイヤという意見があったりする中で、この約4割という数字は意外と多いのではないでしょうか。
しかしながら、どうして彼女たちは"キスフレ"をつくるのでしょうか。酔っ払って"キス魔"と化す人たちは昔からいますが、キスフレはお酒の勢いとは関係なく、しっかりと意識をもって恋人ではない男性の友人とキスをする関係。一般的に、キスはもちろんのこと、異性と手をつなぐという行動や食事に行くという程度でも浮気とみなされる中で、キスフレの存在認めてしまう心理を、化粧心理学者で大学では恋愛心理学の授業も担当している平松隆円さんに解説していただきます。
今回の"キスフレ"という言葉で頭に浮かぶのが、オーストリアの精神医学者であったフロイトです。いろいろな批判はあるのですが、フロイトは「子供にも性欲はある」と指摘しました。この場合の性欲とは、生殖と関係するような性行為ではなく、体のどこかで性的な快感を求めるようなより広い行為を意味しています。
具体的には母親のおっぱいを吸うことによって快感をえる口唇期(0歳~1歳)、排便をすることによって快感を得る肛門期(1歳~3歳)、そして男性生殖器に関心をもつ男根期(3歳~6歳)、性的な発達が一時停止する潜伏期(6歳~12歳)、性欲を満足させるものとしての生殖器への関心が高まる性器期(12歳~13歳)です。基本的に、これらは順に満たされ発達していくのですが、十分に満たされないと途中で取り残され引き返す場合もあるのです。
ちなみに、先ほどのキスフレに関する調査は、調査対象者の65%が20歳代でした。統計はありませんが感覚的にこの世代は、母乳育児をすると胸の形が悪くなるとからと短い母乳期間の後、早々に粉ミルクで育てられ始めた世代です。また両親の共働きが増え、どうしても母乳育児の期間が短くなった世代でもあると思います。最近では、おしゃぶりの使用が乳歯のかみ合わせに悪影響を与えるからと敬遠されたりもしています。つまり、口唇期で母親のおっぱいをはじめとして、何かを吸うという口唇での欲求が十分満たされなかったことが、大人になってからのキスという引き返しにつながっているのではないでしょうか。
「じゃあ、彼氏とキスすればいいじゃないか」とも思うのですが、キスの愛情表現という価値が低くなっているため罪悪感もなく、気軽に欲求も満たすために男友達としてしまうのかもしれません。
著者プロフィール
平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。国際日本文化研究センター講師や京都大学中核機関研究員などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。よそおいに関する研究で日本文化を解き明かしている。大学では魅力をテーマに恋愛心理学も担当。 NTV『所さんの目がテン! 』、CX『めざましどようび』、NHK『極める 中越典子の京美人学』など番組出演も多数。主著『化粧にみる日本文化』は関西大学入試問題に採用されるなど、研究者以外にも反響を呼んだ。