大会であっというまに300食完売した「サンマティーヤ」

復興を急ぐ宮城県気仙沼市に、「サンマティーヤ」という名の新しいご当地グルメが誕生した。サンマの甘露煮と野菜をパンピザ生地でトルティ-ヤタコスのように巻いた食べ物で、1月20日に開かれた東北の食の復興イベント「復興グルメF-1大会」で見事優勝の栄冠に輝いた。

仮設復興商店街対抗の「復興グルメF-1大会」

この大会は、気仙沼を始めとする被災地6つの仮設商店街が、それぞれ自慢のご当地食材を使った「復興グルメ」を調理・販売し、No.1復興グルメを競うというもの。ここで一躍有名になったサンマティーヤは、2013年2月から市内の復興商店街の飲食店メニューにも加えられて、売り切れ続出! 大変な人気ぶりなのだ。

ちなみに、大会に参加した仮設商店街は、大槌(おおつち)北小福きらい商店街(岩手県大槌町)、おおふなと夢商店街(岩手県大船渡市)、高田大隅つどいの丘商店街(岩手県陸前高田市)、気仙沼復興商店街南町紫市場(宮城県気仙沼市)、南三陸さんさん商店街(宮城県南三陸町)、おがつ店こ屋商店街(宮城県石巻市雄勝町)の6つ。

いずれも震災と津波によって商店街が失われ、代替地の仮設店舗で商売を継続している、「復興」の名の付いた商店街である。大会を主催した気仙沼復興商店街南町紫市場の坂本正人さんは、その狙いを次のように語っている(※特定非営利活動法人アムダとの共同主催)。

1,500人もの人出でにぎわう、気仙沼復興商店街南町紫市場

「私たち気仙沼の商店街関係者は、市内の代替地に54店舗からなる仮設商店街を作って営業しています。でも、周辺の人口は震災前の30%ほどに減っているので、集客努力をしないと立ち行かない状況に。そこで、同じような境遇の近隣復興商店街に声かけして、復興グルメを開発して競い合うことにしたんです」。

その結果集まった創作料理は合計6つ。うち4つが、復興後に創作されたものだ。

サンマの甘露煮をカレー味でベースで食す!

大会は予想以上の盛況だった。会場を訪れたお客さん1,500人が復興グルメの審査員。一律300円の各商店街のグルメ料理を食べ比べ、これはと思う料理に割り箸で投票するのである。値段の安さもあってか、全ての料理を食べ比べる客も多く、票を投じる料理を決めかねている人も多かったという。

大会会場には、各商店街のゆるキャラも大集合して大盛りあがり

結果は……接戦の末、地元気仙沼の「サンマティーヤ」が見事優勝を勝ち取った。料理はと言えば、その名前から想像されるように、サンマを使った創作料理である。

「気仙沼はカツオやサンマの水揚げが多く、サンマの甘露煮はポピュラーな家庭料理なんです。最近は商品化されて1年中流通していますし、使い勝手もいい。それでサンマの甘露煮とたっぷりの野菜をパン生地でトルティーヤ風に巻いて食べるサンマティーヤを開発しました。カレー味がベースです」と坂本さん。

これがおいしい! それを証明するかのように、今年の2月9日から気仙沼の復活商店街8店舗のメニューに加わったサンマティーヤは、売り切れ店続出の大人気。中には、カレー味をトマト味にアレンジするなど、ひと工夫したものもある。

個性派ぞろいの復興グルメ、各商店街の新名物料理に

「F-1大会」では惜しくも優勝を逃したその他の復興グルメについても紹介しておこう。いずれ劣らぬ個性派ぞろいで、大会終了後、サンマティーヤ同様に地元の復興商店街で販売され始めているそうだ。

まずは南三陸さんさん商店街の「さんさんタコカレー」。衣をつけて揚げたタコが乗ったボリューム満点のカレーである。次は、おがつ店こ屋商店街の「雄勝丼」。ワカメご飯におおぶりの帆たてをまるごとひとつ載せた豪快な一品だ。

「さんさんたタコカレー」も人気

こちらは新鮮ホタテの「雄勝丼」

高田大隅つどいの丘商店街の「なっちく」は、ユニークきまわりない。ちくわの中に納豆を入れて揚げたものをカレーやワサビじょうゆ、サルサなどのソースで味わう。チョコレートや水あめといったソースもあって、冒険心や挑戦心をくすぐってくれる。

納豆とちくわで「なっちく」

あっさりとした塩味の「さんまばっとう」

汁物だってある。おおふなと夢商店街の「大船渡さんまばっとう」。紅白のはっと(すいとんのような料理)汁の中にサンマのつみれが入っていて、これが温まる!

最後に紹介するのは、大槌福幸きらり商店街の「めかぶシフォンケーキ」。大槌町の特産品であるめかぶを練り込んだふわふわの生地に、たっぷりの生クリームがのっていて、食後のデザートにぴったりだ。

食後のデザートには「めかぶシフォンケーキ」

それぞれの町の魅力をぎっしりと盛り込んだ「復興グルメ」の数々。味付けは復興への夢や希望と言えるかもしれない。東北に行ったなら、三陸の町の仮設商店街にも足を運んで、ぜひ各地の新しいご当地グルメを味わってほしい。各店の営業時間に関しては、webサイトを参照して、お目当ての食べ逃しのないようにご注意あれ!(写真提供=みやぎ観光復興支援センター)

●information
みやぎ観光復興支援センター