本日3月8日は「ハチ公」の命日です。そして今年は、"ハチ公生誕90周年"の節目の年に当たります。もう亡くなってしまったご主人の帰宅を、渋谷駅で健気に待ち続けた秋田犬・ハチ公の話は誰でも知っていますね。現在、渋谷駅前のハチ公の銅像は、渋谷のランドマークになっています。

さて、この銅像。おいくらなのでしょうか。「いくらでもいいでしょう」とハチ公に怒られるかもしれませんが、調べてみました。

渋谷のハチ公像は二代目

渋谷のハチ公像は二代目です。初代のハチ公像は1934年(昭和9年)に建てられました。しかし、第二次世界大戦で金属が不足すると、ハチ公像は撤去、接収されてしまいます。

現在のハチ公像が再建されたのは1948年(昭和23年)のことでした。渋谷区に確認をしてみましたが、この銅像がいくらだったのかの資料はない、とのこと。ちなみにハチ公像の「所有」は渋谷区ですが、「管理」は忠犬ハチ公銅像維持会が行っているのだそうです。

ハチ公の銅像は秋田県大館市にもある!

ハチ公の銅像が秋田県大館市にもあるのをご存じでしょうか。同市は「ハチ公生誕の地」としての活動を行っています。大館駅前にもハチ公がかわいらしくちょこんと座っているのです。

実はこちらの銅像も二代目です。初代のハチ公像は、渋谷と同じ型を使って製作されたものでした。しかし、同様に第二次大戦中の金属供出で接収されます。現在のハチ公像が再建されたのは1987年(昭和62年)のことです。

この大館市の二代目ハチ公像は、渋谷のハチ公像と違って、両耳がピンと立っているのが特徴です。

ハチ公像のお値段発見!

渋谷のハチ公像の価格が分からないので、秋田県大館市の商工観光課に連絡して、大館市のハチ公像のお値段を聞いたところ、大発見がありました。

大館市 産業部 商工観光課の齋藤隆さんが『ハチ公文献集』(奥付によれば1991年4月8日発行)という非売品の資料を発見してくださいました! これは400ページもの大部で、これに渋谷の初代ハチ公像の価格が掲載されていました!

渋谷の初代ハチ公像のお値段

齋藤さんに発見いただいたこの資料では「忠犬ハチ公の銅像の収支報告」が記載されています。それによると、この銅像を建てるのに全国から集まった寄付金などの合計が「合計金壱千八百六拾四円弐拾参銭也」となっています。

分かりやすく書くと1,864円23銭です。

支出の部から銅像の直接費を見ると、

  • 一金四百弐拾円也 銅像鋳造費

  • 一金三百九拾五円八拾銭也 銅像台石代

となっています。合計して分かりやすく書くと815円80銭です。

収支報告書からは、

  • 一金拾七円○五銭也 銅像台石据付人夫賃

などのほかの出費も上記の寄付金合計から賄われたことが分かります。

ちなみに、渋谷にこの初代ハチ公像ができて(前述のとおり昭和9年)、除幕式が行われたときにはハチ公はまだ生きていました。つまり銅像とハチ公が一緒に見られたわけです。

このころハチ公の人気は絶頂で、「連日ハチへの食物持参人があり、詩や歌や俳句を寄せて讃える人、自動車で銅像とハチを見に来る人と、東京新名所となってしまった」と『ハチ公文献集』に当時の様子が引用されています(同書259ページ)。

直接費の815円80銭は今の貨幣価値にすると、1円=2,413円換算で約196万8,525円になります。ですからざっくり200万円ぐらいと考えて間違いないでしょう。

(※ この計算は公務員の初任給が昭和元年に75円で、それを現在の公務員の初任給18万1,000円と比較して算出しました)

渋谷の二代目ハチ公像と大館のハチ公像は!?

残念なことに渋谷の二代目ハチ公像と、大館の初代、二代目のハチ公像がいくらだったのかのデータはありませんでした。

ただし、大館の二代目ハチ公像については『Dog』2005年2月号の中に「計二三〇万一四一円の募金が集まり、再建費用の一部に充てられた」という記載があります。ですので、これ以上のお金がかかったということなのでしょう。

ちなみに渋谷、大館とも、ハチ公の命日である3月8日の1カ月後の4月8日に慰霊祭を行っています。

竹中銅器さんに聞いてみました

では現在、ハチ公像を建てたらいくらかかるのでしょうか。銅像・胸像を手がける株式会社竹中銅器さんに伺ってみました。竹中銅器さんは、創業1927年の老舗企業です。

鉢呂克彦さんのお話では「原型を提供していただいて、弊社で鋳造と着色をして納品ということでしたら、まず100万円ほど見ていただけたら」とのことでした。

原型を含めて竹中銅器さんにお願いするときは、「原型をどなたに依頼するかによって異なります。例えば、著名な彫刻家の方に原型をお願いする、などの際にはその先生がいくらでやっていただけるかによる」のだそうです。

「そこまでこだわらないで、普通に動物などの原型で、それもご依頼いただけるのであれば、先ほどの100万円に原型代の100万円を足したぐらいの価格を見てください」とのことでした。

200万円ぐらいあればなんとかなるのでしょうか。くしくも、前述の渋谷の初代ハチ公像の現在換算した価格とほぼ同じになりました。

渋谷の銅像も、大館の銅像も、健気でかわいらしいハチ公の様子がとてもよく表現されています。虹の橋の向こうで、ご主人の横にハチ公がいて幸せそうに尻尾を振っているといいですね。

(高橋モータース@dcp)

『大館市観光協会』のサイトはこちら

『株式会社竹中銅器』のサイトはこちら