既存の上映システムとは比べものにならない臨場感が味わえるとあって、映画ファンを中心に支持を集めている「IMAXデジタルシアター」。3月30日には同システムに対応した邦画初の映画『ドラゴンボールZ 神と神』も公開予定となっており、今後ますます注目を集めそうだ。
一般の鑑賞料金よりも割高となるにも関わらず、IMAXが多くの観客を魅了する秘密はどこにあるのだろうか。独自のテクノロジーを改めて紹介しつつ、その魅力を探っていこう。
IMAXシアターだけの圧倒的な"臨場感"
「IMAXデジタルシアター」はカナダのIMAX社が開発した上映システムで、日本では2009年に109シネマズ川崎ほかで公開された『トランスフォーマー/リベンジ』が初の対応作品だった。今では「映画を見るならIMAXで」というファンも多く、専用劇場の数も増えつつある。
同システムの特徴はいくつかあるが、まず気付くのはスクリーンの大きさだろう。IMAXデジタルシアターでは床から天井、そして左右の壁いっぱいに広がる大型スクリーンが設置されており、設置位置も通常より客席に近い。さらに、観客を包むような形でわずかに湾曲しているため、スクリーンの有効長が拡大(つまり視野が最大化)され、映像の臨場感もグッと増すのである。
もちろん、IMAXの圧倒的な臨場感はスクリーンだけで実現できるものではない。要となるのは何といっても映像投影技術だろう。IMAXでは高品質な映像を実現するために、2台のデジタルプロジェクターを同時使用している。この独特な映写システムのおかげで、スクリーンには明るくムラのない、クリアな映像が映し出され、観客は物語に入り込むことができるのだ。また映像調節もリアルタイムで行われるとあって、常にベストコンディションの映像が楽しめるのも心強い。
特に3D作品においては、このデュアル・プロジェクター方式によるメリットが顕著となる。というのも、一般的なシングル・プロジェクター方式では、左目用の映像と右目用の映像を瞬時に切り替えて投影することで3D映像に対応しているが、IMAX 3Dでは2台のプロジェクターから常に鮮明な映像が投影できるからだ。映像の明るさに関しても、シングルプロジェクターに対してIMAX 3Dではおよそ2.5倍になるという。こういったことを踏まえると、両者の映像体験に大きな違いが生じることも容易に納得できるはずである。
さらに映画館の醍醐味といえば、迫力あるサウンドもそのひとつだ。IMAXのサウンドシステムは、5つの独立した音声チャンネルを持つ専用スピーカーと高度なチューニング・システムから構成されており、上映時の状況に応じた音声調整が可能となっている。シアター内ではどのシートに座っても、映画製作者が意図したとおりのサウンドが満喫できるのだ。
クリエイターをうならせる先進のテクノロジー
上映する映画作品の魅力を最大限に引き出すため、IMAXデジタルシアターではこのような最新のテクノロジーが随所に取り入れられている。これらは映画を楽しむ観客のためのものであると同時に、作品を通して"感動"を伝えたいと願う製作者に支持される所以にもなっている。
これまでに3度アカデミー賞を獲得している監督・脚本家オリバー・ストーンも、IMAXの映像については「3D映像がとても美しいね。まだIMAXカメラで撮影したことはないんだ。時間もお金もかかるからね。だけど、『ライフ・オブ・パイ』IMAX3D版を観て、是非撮影にIMAXカメラを導入したいと思ったよ」などと語っているほどだ。
このほかにも、言わずと知れた巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督、『アバター』(2009年)で3D映画に挑戦したジェームズ・キャメロン監督、『ダークナイト ライジング』(2012年)でIMAXカメラでの撮影も取り入れたクリストファー・ノーラン監督なども、IMAXの可能性を高く評価するコメントを発表し、期待を寄せている。
映画を生み出すクリエイターにとって、IMAXのスクリーンは映像表現の可能性に挑戦できる優れたキャンバスなのだ。
IMAXで観なければもったいない!!
映画作品はさまざまあるが、中には「IMAXで観なくてはもったいない!!」といったタイプの映画がある。3月8日に公開される新作映画『オズ はじまりの戦い』がそのひとつだ。
同作は『スパイダーマン』3部作のサム・ライミ監督と、『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年)のスタッフがタッグを組んだ最新2D/3D映画。作家ライマン・フランク・ボームによる不朽の名作「オズの魔法使い」の前日談を映画化したもので、魔法の国「オズ」に迷い込んだひとりのマジシャンが"偉大な魔法使い"になるまでの戦いを描き出したアクション・ファンタジーだ。これまで謎に包まれていた魔法使い・オズ誕生の秘密もさることながら、その圧倒的な世界観と美しすぎる映像も見どころとなっている。
作品内では、現実世界を奥行きの狭い3Dモノクロ映像/モノラル・サウンドで描く一方、主人公・オズが魔法の国に迷い込んだ途端、奥行きのある3Dカラー映像/ステレオ・サウンドに切り替わるという演出がなされている。また、同作同様、IMAXでも上映された『アバター』や『アリス・イン・ワンダーランド』も担当したロバート・ストロンバーグがプロダクションデザイナーを務め、ディズニー映画特有のクラシックなデザインのテイストと、光と闇の描き方が独特な19世紀の絵画のような雰囲気を見事に融合させている。さらには、小道具のディテールにも力を入れており、エメラルドシティの宝物庫に溢れる5000枚のコインには、片面に黄色いレンガ道の画が、もう片方には作家ライマン・フランク・ボームの肖像がそれぞれ刻印されている。
監督経験を持ち、同作で主演を務めたジェームス・フランコもIMAXについて「IMAXは、ものすごく大好きだよ。この作品も、(IMAX版での上映もあった)クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト ライジング』(2012年)のように仕上がっていると思ってもらえたら嬉しいなぁ」とコメントしている。
多くの映画ファンのみならず、映画製作に関わるクリエイターをもうならせる「IMAXデジタルシアター」。IMAXならではの臨場感を体験するのに、これほど最適な作品は滅多にないはずだ。ぜひこの機会に劇場に足を運び、魔法の国・オズの映像美に包まれてみてはいかがだろう。
映画『オズ はじまりの戦い』は、2013年3月8日より、全世界同時公開。
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