俳優の西田敏行、君塚良一監督が24日、映画『遺体 ~明日への十日間~』(公開中)の特別舞台あいさつを福島・ワーナーマイカル福島、宮城・MOVIX利府、岩手・フォーラム盛岡にて行った。

東北三県で映画『遺体 ~明日への十日間~』の舞台あいさつを行った西田敏行(左)と君塚良一監督

1日で3劇場を回った西田、君塚監督は、時間の許す限り劇場に足を運んだ人々と交流した。同作は東日本大震災の津波に襲われた岩手県釜石市、その廃校となった旧釜石第二中学校に設けられた遺体安置所を巡って、過酷な状況と向き合った人々を描いた作品。同県での舞台あいさつには、西田が演じた遺体安置所の世話役・相葉常夫のモデルとなった釜石市の民生委員・千葉淳さんも駆けつけ、会場からは大きな拍手が送られた。

「事実のみを伝えるルポルタージュと違い、映画には作り手の作為が入ってしまうというジレンマがあります」と語る西田。オファーを受けた時を、「ご遺族の気持ちや、役者が芝居っぽくすることで事実をねじ曲げてしまうのではないだろうかという思いもあり、正直映画化にはいささかのためらいがありました」と振り返ると、「監督の『映画がなすべきことはここにある』という力強い言葉を聞いて、もしかして映画化によって事実とは違う真実をお伝えできるのではないかという自信に変わりました」と出演を決めた理由を明かした。

その君塚監督は、東京で東日本大震災が発生したことを知り、何かしなければならないのにできないという状況に後ろめたさのようなものを感じていたという。「僕が東京にいた十日間のあいだに、同じ日本で、厳しくつらい状況の中に生きていた方々がということを知り、とても驚き、石井(光太)さんがあのとき見たものを映像にすることで、たくさんの人に伝えたいと思ったことがきっかけとなりました」と原作『遺体 震災、津波の果てに』(著:石井光太)との出会いを思い返し、「僕は脚本家、監督として伝えることはできる、と思い、この作品を作る決意をしました」と映画化に踏み切った思いを語った。

劇場に駆けつけた千葉淳さんを西田は、「初めて千葉さんにお会いしたとき、もしかして前世は親戚だったんじゃないかと思ってしまうくらいとっても自分に似ていました(笑)」と紹介。千葉さんを演じたことについて、「俳優として大きなエポックメイキングとなりました。実に、人生を変えられる瞬間でもありました」と語り、観客に向けて「復興という言葉は名ばかりで、まだまだ長い月日がかかると思います。亡くなった方々の思いを胸にめげることなく、一歩一歩力強く、復興の日を信じて生きていきましょう」とメッセージを送った。