JR東日本は21日、常磐緩行線(綾瀬~取手間)への導入を検討している無線列車制御システム(CBTC)について、今後はフランス・パリに本社を持つアルストム社、タレス社の2社と詳細検討を進めていくと発表した。

常磐緩行線へのCBTC導入は2020年頃の予定

「CBTC」は、「Communications-Based Train Control System」の略で、ポイント制御や列車間隔制御などの列車制御システムと、運行管理システムが一体となったトータルな輸送システムとされている。

従来の信号システムとは違い、軌道回路(レールに電気を流して列車の在線を検知する装置)を使わず、無線で列車の位置を把握できるため、軌道回路が不要に。ケーブル量も大幅に削減される。地上設備がスリム化されるのと同時に、輸送障害(列車の大幅な遅延など)の原因となりやすい信号トラブルの削減も予想される。

このシステムの導入で単線並列運転も可能に。複線の片側の線路で輸送障害などが発生した場合でも、反対側の線路を利用することで早期に運転再開できる。閑散線区や閑散時間帯における保守間合いの拡大にも寄与するという。

CBTCはアメリカ、カナダ、イギリス、フランス、スペインなど世界100線区近くで導入済だが、日本での導入例はない。JR東日本は技術革新や業務革新を目的に新たな首都圏輸送システムへの変革をめざしており、その一環でCBTCの常磐緩行線への導入を検討してきた。昨年6月よりCBTC導入に関心のある国内外の企業を募り、各社の提案内容の比較・検討を行った上で、アルストム社とタレス社の2社を選定した。

アルストム社はフランスのTGVをはじめ、世界各国で高速鉄道の車両やシステムを導入した実績を持つ。タレス社は防衛・セキュリティ・航空宇宙・交通などの分野におけるグローバルなテクノロジーリーダーとのこと。JR東日本は今後、この2社とそれぞれCBTC導入に関する詳細検討を行い、今年12月末までに正式に依頼する1社を選定する。常磐緩行線へのCBTC導入は2020年頃を予定している。