第85回アカデミー賞にて全演技部門でノミネートされるという31年ぶりの快挙を成し遂げた感動作『世界にひとつのプレイブック』がいよいよ公開される。この作品で妻の浮気が原因で心のバランスを崩している主人公・パットという非常難しい役どころに挑んだのは映画『ハングオーバー』シリーズや『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』(2010年)で知られるブラッドリー・クーパーだ。同作では、主演のみならず製作総指揮も務めた彼に、その制作の裏側や初めて映画製作に携わった感想などの話を聞いた。
――今回の役を演じる上でどのようなことを意識しましたか、また撮影現場の様子を教えて下さい。
「演じているときはとにかくリアルであること、彼になりきることだけを心掛けました。決してユーモラスに演じようとしたわけではなく、結果的にとった行動からユーモアが生まれたというイメージです。通常、2時間の作品だと120ページほどの脚本なのですが、この作品の場合は、33日間で158ページの脚本を撮り終えなくてはいけないというタイトなスケジュールだったので、撮影は毎日厳しいものでした。しかし、その忙しいなかでも"今、この瞬間撮れている!"と思う瞬間が何度もあり、その気持ちが僕らを前に押し進めてくれたんだと思っています」
――この作品では"より高く"という言葉がキーワードになっていますが、この作品は"俳優 ブラッドリークーパー" にとっても"より高く"する作品になりましたか。
「"より高く"というキーワードは人生にとっても良いモットーですよね。この作品を通じて、それを僕自身もパットから学んだ気がします。確かにこの作品によって、自分のなかのハードルをひとつ乗り越えた実感がありますね。想像するよりも大きな役だったのですが、"監督の求めるものを役者としてやることができた"ということが自分にとっては大きな収穫になりました」
――常に綿密な下準備をしてから撮影に入ることで知られているブラッドリー・クーパーさんですが、この作品ではどのような準備をしたのですか。
「しっかりと役を演じるには、まずパットというキャラクターのハートを掴まないといけません。そのなかでも、一番大切だったのは彼のロジック、思考回路を理解することです。今回は、彼を理解するため、準備の一環として双極性障害の方々から話を聞いたり、ドキュメンタリーや色々な記事を読んできっちりリサーチを行いましたね」
――今回は役者としてだけでなく、製作総指揮としても作品に携わっていますね。やはり役者として映画制作に参加するときとはまったく違うものでしたか?
「やはり違いますね。エグゼクティブプロデューサーであるということは、作品への関わり方が大きく変わってきますから。撮影だけでなく、さらに深く作品に関わることができますし、自分の意見も言いやすくなります。今回はデヴィッド・O・ラッセル監督が、自分のイメージを捨てて、みんなの意見を取り入れてくれたので、映像面も携わることができましたし、この作品をどういう形で見せていくかというマーケティング面も関わることができました」
――製作総指揮だけでなく、いつか"ブラッドリークーパー監督"作品も観てみたいです。
「監督もやりたいと思っているんです。12歳のときに演技に目覚め、役者になりたいと思ったのと同時に監督もやりたいと思ったんです。ここ数年、主演などの大きな役をやらせてもらい、映画制作に密に関わっていくなかで、自分の思考が"俳優"というよりも"監督"に近いと実感したんです。カメラワークや、脚本、共演者からいかに素晴らしい演技を引き出すか、などのことを考えるのが大好きで、実は役になりきれたと思う満足感より、共演者の良い演技を引き出すことができたり、監督を助けることができたときの方が満足感が大きいんです」
――第85回アカデミー賞の結果発表が近づいていますね。今の心境を教えて下さい。
「どういう結果になるかまったく分かりませんが、主要8部門にノミネートされたことは非常に嬉しいことです。アメリカでは口コミでこの作品を広めていくスタイルでPRしていたので、アカデミー賞にノミネートされたことで、この作品を観に行くキッカケにもなりますからね、それもまた嬉しいことです」
映画『世界にひとつのプレイブック』は、2013年2月22日より、TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開。