横須賀市では「よこすか海軍カレー」が有名だが、青森県むつ市では最近、「大湊(おおみなと)海軍コロッケ」が脚光を浴びているという。旧日本海軍のレシピに倣い、ヘット(牛脂)を使用して高温でカリッと揚げたもので、今から約10年前に復活を遂げるやたちまち評判! 今や青森県庁の生協でも販売されるほどだ。
旧日本海軍でレシピを考案していた人たちの頭の中は、グルメ料理の宝庫だったのだろう。なんせ、基地のあった日本各地に、海軍由来の人気ご当地料理があるのだから。今やすっかり全国区になった横須賀市の「海軍カレー」、広島県呉市の「海軍肉じゃが」、そしてむつ市の「大湊海軍コロッケ」と、いずれも幅広い世代に愛されるメニューぞろいだ。
一説によれば、明治時代に大湊村(現在のむつ市大湊地区)に駐屯した旧海軍部隊(大湊警備府)の糧食として採用され、艦艇乗組員の間で人気が高かったコロッケが、この「大湊海軍コロッケ」のルーツだという。旧海軍作成の料理本「海軍割烹術参考書」や「海軍四等主計兵厨業教科書」などに、コロッケのレシピが掲載されているとか。
今では青森を代表する人気ご当地グルメに成長
むつ市で「大湊海軍コロッケ」が復活したきっかけは、平成15年(2003)に行われた海上自衛隊大湊地方隊創設50周年記念行事だ。旧海軍レシピをもとに再現調理して振る舞われたコロッケが大好評となり、以来、海上自衛隊やむつ市商工会議所などのイベントで提供。今では、青森を代表するご当地グルメ料理にまで成長した。
この「大湊海軍コロッケ」の第一の特徴は、揚げ油にヘットを使うことにある。ヘットとは牛脂のことで、食欲をそそる香ばしい香りの素になるもの。揚げ油への配合率が高いほど、「こってり」とした深い味わいとなる。
また、形状にも特徴がある。ごく一般的な「小判型」もあるが、海軍レシピに紹介されているのは「まんじゅう型」。ひき肉などの具材を、ジャガイモでまんじゅうのように丸く包み込む独特な作り方である。
むつ商工会議所とむつ観光振興協会では、このコロッケを地域起こしのグルメ料理として展開中。「(1)ヘットを使用している、(2)主な材料には、地元下北半島で生産された食材を使用している(パン粉の原材料の小麦粉などは除く)」の2つの条件を満たすコロッケのみを、「大湊海軍コロッケ」と認定している。
認定は外部機関に委託して、使用素材のチェックも厳密に行っている。また、下北地域で直接販売するものだけが、「大湊海軍コロッケ」と名乗ることができるのだ。
現在、「大湊海軍コロッケ」と認定されているコロッケは、「大湊海軍コロッケ普及会」に所属するむつ市内のレストラン、食堂、精肉店など29カ所で販売しており、青森県庁生協のむつ支店でも展開するほどポピュラーなものになっている。
ヘットの配合率は100%から30%まで幅広く、具材は、ビーフ、チキンはもとより、ウニ、ホタテ、イカなど地元で採れる魚介を使用したものまでバラエティーに富んでいる。形もまんじゅう型、小判型と様々だ。
海軍祭開催時期に合わせて、下北コロッケツアーに繰り出そう
現在では、「大湊海軍コロッケ」は地元のむつ市や青森県だけでなく、全国にもその名を知られている。
「コロッケ目当てに下北までいらっしゃる方もいらっしゃいますね。下北地域の主立った観光案内所には海軍コロッケのマップを置いていますし、販売している店は海軍コロッケのマスコット、コロちゃんが描かれたのぼりが立っているので目印にしてください」(下北地域県民局・小島一之さん)
ただし、ちょっと注意が必要。「大湊海軍コロッケ」は通常のコロッケに比べて素材が割高なため、値段はやや高く、曜日や日にち限定で販売されているのだそう。
販売日は店舗ごとに異なるので、お目当ての店がある場合は事前に確認しておこう。販売店舗一覧は、青森県庁のホームページに掲載された「大湊海軍コロッケ」のマップでチェックできる。
また、「どうせ下北にいらっしゃるなら」と前出の小島さんがアドバイスもくれた。「毎年6月、むつ市では大湊海軍まつりが開かれます。その会場にたくさんの海軍コロッケのお店が出店しますので、こちらにお出掛けされるといいですよ」。
海軍祭は水源地公園、海上自衛隊大湊基地にて行われるイベントで、音楽隊の演奏や海軍カレー・コロッケの販売、そして、湾内クルージングや護衛艦、航空機見学などが楽しめる。2013年は6月1日(土)に開催される予定だ。
●information
大湊海軍コロッケでまちおこし大作戦