ノートPC「Let'snote」シリーズといえば、長時間駆動や軽量なきょう体に加え、頑丈さが特徴といえる。その頑丈さは一体どのようにして作られているのだろうか。今回、同社が13日に開催した「Let'snote ユーザーミーティング 2013」神戸会場にて、パナソニック AVCネットワークス ITプロダクツビジネスユニット 神戸工場を見学してきた。

パナソニック神戸工場の入り口では、地面にめり込んだ巨大なTOUGHBOOKが出迎えてくれる

「2013年 Let'snote ユーザーミーティング」とは、パナソニックが主催するLet'snote技術者とユーザー同士の意見交換会。2013年は3~4年ぶりの開催となり、既に東京では9日に開催済み。9日に開催した神戸会場では12名が参加し、合わせて工場見学も行われた。

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電磁波を観測する不思議な暗室

兵庫県神戸市西区に位置するパナソニック AVCネットワークス ITプロダクツビジネスユニット 神戸工場では、「Let'snote」シリーズの生産に加え、堅牢モバイルPC「TOUGHBOOK」、サポート業務、各種出荷前試験などの品質保証といった業務が行われている。

パナソニック AVCネットワークス ITプロダクツビジネスユニット 神戸工場

見学ルートは1Fから2F。今回、工場の1Fでは電波暗室と耐落下実験、2Fではマザーボードの実装、Let'snoteの組み立てを見学した。なお、今回は見学できなかったが、1Fではこのほか、防滴/防水試験や加圧振動試験、ヒンジ耐久試験なども行われているという。

参加者全員で電波暗室へ移動

電波暗室は、商品から発生する電磁波が電子機器として規定内のものか、電界アンテナを使い測定する部屋。本体から外部機器への電波干渉と、外部機器から本体に受ける電波干渉の両方をチェックするための部屋だ。

電磁波の計測は、屋外では携帯電話やデータ通信など雑多な電波、地上デジタルTV用の電波などが混じるため難しいという。また、Let'snoteの国外向け製品も本工場で生産するため、電磁波の規定は日本だけでなく、米国やヨーロッパなど世界各国の規定に沿う必要がある。

10m電波暗室の看板

入り口。ドアは厚いが金属ではないため軽く開け閉めできた

そこで作られた電磁波の検査室が、この10m電波暗室棟。外部からの電磁波を排除し、約10mの距離で対象機材とアンテナ間の電磁波を短時間で正確に測定できるという。室内は電波が反射しないよう三角形状の突起(整合器)を組み合わせた壁で覆われている。

周囲を電波を吸収する整合器で覆われた電波暗室。奥に測定用のテーブルがある

なお、部屋の内部に人がいる場合も、その人に電波が反射してしまうため、計測は無人状態で行われる。そのため、対象の機材を360度回転できる台を、隣室からリモートで稼働させ計測する。

電磁波測定用のテーブル。この部分のみ床面が360度回転する

10m電波暗室の隣にあるコントロール室。ここから電磁波測定用のテーブルの操作などが可能

26方向から落とすハードな耐落下実験

耐衝撃性能をチェックする落下試験は、PC本体の電源オフ状態で26方向から落下させるもの。「TOUGHBOOK」および「Let'snote」を対象に、「TOUGHBOOK」では90cm/120cmの高さから、「Let'snote」では30cmの高さから落下させる。落下先は木材とコンクリートで2カ所で試験するという。

今回は「TOUGHBOOK」での実験を見学。装置は機材を固定したのち底面がはずれる仕組み。なお、「Let'snote」では26方向の30cm落下試験に加え、70cmからの底面落下も行う

勢い良く床にぶつかり、非常に大きな音が鳴ったが……

ちなみに26方向とは、上下左右前後の面(6面)、本体にある全ての角(8角)、本体にある全ての辺(12綾)。見学時には、「TOUGHBOOK」を使って底面落下と前面右角からの落下を実施。実際に木材の上に落とした際も非常に大きな音がしたが、その後問題無く起動していた。

結果、問題なく起動

マザーボード実装から組み立て

2Fでは、実際にLet'snoteを組み立てる現場を見学。Let'snoteのマザーボードもこの現場で実装しており、出荷前試験まで行う同社ではLet'snoteの「国内一貫製産」をうたう。また、組み立てはライン作業でなく、1人が1台のPCを組み上げるセル生産方式を採用することも特徴だ。少量多品種のPC製造に適した方法という。

11.6型のコンバーチブルUltrabook「Let'snote AX2」のマザーボード

12.1型「Let'snote SX」シリーズのマザーボードも並ぶ

基板上に電子部品を実装していく

工場の2F内には、同社直販「マイレッツ倶楽部」モデルの天板も展示されていた。「Let'snote AX」のイメージキャラクター、松田翔太氏のサインも飾られている

組み立てはセル生産方式

同社内の「モノづくり成果展カラクリの部」コンテストで最優秀賞を獲得したキーボード入力検査装置。左端からボールを転がすと、キーボードがぼーるの重みで入力され、全てのキーが問題なく付けられているか確認できる。自動もちろん、現場では使用されておらず"お遊び"の意味合いが強い

「高品質と一貫生産にこだわったLet'snote工場」 - 清水氏

敷地面積57,000平方メートルのパナソニック AVCネットワークス ITプロダクツビジネスユニット 神戸工場は、1990年に竣工、1991年5月に稼働開始し、2013年で22年目を迎える。

パナソニック AVCネットワークス ITプロダクツビジネスユニット 神戸工場の工場長、清水実氏は、高品質に加え「技術者や企画が死ぬ気で考えたものを自社で一貫して開発している」と、神戸工場を紹介した。

パナソニック AVCネットワークス ITプロダクツビジネスユニット 神戸工場の清水実工場長

神戸工場の概要

さて、実際の製造現場の様子はここまで。のちほど記事の後編として、東京会場に続き、神戸会場でのLet'snote ユーザーミーティングの中身をご紹介する予定だ。

■後編はこちら
【レポート】12名のユーザーが神戸に集結、Let'snoteのエピソードを語る - 2013年 Let'snote ユーザーミーティング(後編)