今年、生誕42周年を迎える「仮面ライダー」シリーズ。1971年の放送開始から、現在の最新作「仮面ライダーウィザード」まで24シリーズも制作されている国民的特撮番組だ。さまざまな仮面ライダーがいるが、大きく分類すると、昭和期に制作された昭和ライダーシリーズと、平成に入ってから制作された平成ライダーシリーズに分けられる。仮面ライダーという冠は付きながらも、昭和期と平成期では大きな違いがあり、時代の流行を取り入れながら、固定された設定にとらわれない、常に新しい挑戦を繰り返している。子どもの頃、昭和仮面ライダーに夢中になったお父さんは息子と一緒にライダーの戦いに熱くなり、お母さんは子どもと一緒に見ているうちにイケメン俳優やストーリーに魅了されハマったりと、世代を超えて愛されている。なぜ仮面ライダーは時代を超えても続くのか、平成ライダーと時代の変化を振り返りながら、その魅力を紹介する!

仮面ライダーはいったい何と戦ってきたのか?

ヒーローとは、悪を倒すための存在である。では、仮面ライダーが戦ってきた敵とはいったい何者なのか。

最も有名な敵といえば、1971年の第1作『仮面ライダー』でライダー1号が戦った人類支配をたくらむ秘密結社「ショッカー」だろう。実は、このショッカーは、ナチスドイツの残党によって結成された設定……と番組初期のナレーションで語られている。放映当時は、第2次世界大戦の終戦からまだ26年後で、日本は平和を取り戻し、高度経済成長期の時代だったため、「そんな平和の中にもナチスのような残党が今も人類支配を企てている」という戦争の影響がまだ残る時代の空気から生まれた悪だったとも考えられる。

それから3年後の「仮面ライダーX」(1974年)の敵は、冷戦下で対立している大国が秘密裏に結託し、日本を占領しようとしていた「GOD秘密機関」という組織。これには当時、冷戦状態にあったアメリカとソビエト連邦への陰謀論的なメッセージが含まれているのではないかとファンの間ではいわれている。

悪の存在が大きな組織として描かれてきた昭和ライダーに対し、平成の時代になると悪の存在は非常に複雑になっていく。

平成仮面ライダー1作目の『仮面ライダークウガ』の敵は古代からよみがえった邪悪な民族、『仮面ライダー剣』では生物の始祖とされる不死の生命体といった、異種族との対立が描かれている。

仮面ライダークウガ」(C) 石森プロ・東映

2003年から2004年に放映されていた『仮面ライダー555』では世界全体を牛耳るほどの資金力を持つ営利企業が実は悪の組織だったという設定が登場するが、これは同時期に目立ってくるライブドアにはじまる企業買収劇を思わせる。

そんな中でも平成仮面ライダーシリーズのエポックメイキング的な作品となったのが「仮面ライダー龍騎(2002年~2003年)」だ。13人の仮面ライダーがそれぞれモンスターと契約し、サバイバルゲームを繰り広げるという、単純な悪と正義の対立関係を壊した斬新なストーリーになっている。また、ライダーのキャラクターも殺人犯、金の亡者、結婚詐欺師など、利己的な理由で戦う者ばかり。それぞれの正義がぶつかり合う「仮面ライダー龍騎」は、「なぜヒト同士が争い、戦うのか」という根源的なテーマを投げかけ、その後のシリーズにも引き継がれていく。

9.11のテロやイラク戦争など、多種多様な価値観が乱立する時代に生まれた平成仮面ライダーの戦いが象徴するものは、言うなれば、昭和ライダーが悪の存在として倒してきた、異なる価値観との共存といえるだろう。

仮面ライダー龍騎」(C) 石森プロ・東映

仮面ライダーの代名詞、"変身ベルト"は進化し続けている

仮面ライダーの見どころといえば、やはり変身シーンである。お決まりの変身ポーズをとり、「変身!」のかけ声とともに変身ベルトの風車が猛烈に光り回転して仮面ライダーに変身する1作目の変身シーンは、当時日本に「変身ブーム」を巻き起こした。「変身ベルト」のおもちゃは、子どもたちの憧れだった。

変身ベルトは仮面ライダーにとって無くてはならないキーアイテムだが、平成の仮面ライダーたちは改造人間ではなく、「クウガ」、「アギト」、「響鬼」以外のライダーはアイテムを使って変身する。昭和からの変身ベルトは継承しつつも、そこにそれぞれのライダー独自のアイテム要素を取り入れている。

「仮面ライダー龍騎」は変身ベルトのバックルにカードをスロットインして変身するという、当時流行していたトレーディングカードの要素を取り入れた新しい試みだった。この流行アイテムを取り入れる流れは以降も続き、「仮面ライダー555 (2003年~2004年)」の変身ベルトには携帯電話、「仮面ライダー電王 (2007年~2008年)」は電車をモチーフにしたキャラクターの通り、変身ベルトにICカードの自動改札機の要素が取り入れられ、「仮面ライダーW (2009年~2010年)」では、USBメモリースティックをモチーフにしたガイアメモリを変身ベルトに差し込み、メモリースティックの属性によって変身する仮面ライダーが変わるという、日常の身近なものが変身アイテムになっている。

大人のまね事をしたがる子どもにとって変身ベルトは、大好きなヒーローと大人になった自分に変身することができる夢の道具になったのだ。

仮面ライダー555」(C) 石森プロ・東映

仮面ライダー電王」(C) 石森プロ・東映

ドラマとして観る、平成仮面ライダー

子どもたちからの絶大な応援を受け、戦い続けた昭和仮面ライダーたちだったが、次第に少子化の影響もあって人気に陰りが見えはじめ、1989年にシリーズを中断することとなった。10年間の休止期間を経て2000年にスタートした平成ライダーシリーズ1作目の「仮面ライダークウガ」では、子どもだけでなく、父・母・子、親子2世代に受ける新しい仮面ライダーをコンセプトに制作された。

主役の俳優には、昭和時代のライダーのような、派手なアクションの似合う男らしい無骨な俳優ではなく、さわやかでモデルのような駆け出しの若手俳優を起用。「クウガ」では、後に個性派俳優として数々の映画賞を受賞するオダギリジョーが主人公を演じている。以降、水嶋ヒロや佐藤健といった若手俳優の登竜門として一つのジャンルを築いている。さらに変身後の姿にもこだわった。

腹筋の割れた昆虫感のあるフォルムを無くし、クールでスタイリッシュなデザインに変えていった。この狙い通り、変身前はイケメン俳優の活躍に母親が夢中になり、変身後はカッコいいライダーの戦いに父と子が夢中になれる、幅広い楽しみ方ができる作品になっている。

また、平成仮面ライダーシリーズが単なる子ども向けヒーロー作品ではない要素に、濃密な人間模様を描いたドラマ要素がある。シリーズのなかでも「仮面ライダーキバ」はもっとも恋愛に焦点を当てた作品で、昼ドラ人気の影響を受けてか、ひとりの女性をめぐって主人公と弟が三角関係に陥り、さらには五角関係までドロドロの愛憎劇を繰り広げるといったかなり衝撃的な展開だ。ファンの間では"昼ドライダー"と呼ばれるほど異色作に仕上がっている。

恋愛、人間関係など仮面ライダーに変身して、悪と戦うだけでは解決できない心の敵と戦う成長ストーリーでもあるのだ。

仮面ライダーキバ」(C) 石森プロ・東映

自分のベスト仮面ライダーを見つけよう!

昭和から平成までざっと仮面ライダーの歴史を振り返ってきたわけだが、これから見ようと思った人は、「どの仮面ライダーから見ればいいの?」と迷ってしまう人もいるだろう。どのシリーズから見ても十分に内容は理解できるので、ビジュアルがかっこいいライダーで選ぶも良し、女子なら気になったイケメン俳優から選ぶも良いだろう。

「dビデオ Powered by BeeTV」では平成仮面ライダー全9シリーズの配信中なので、ぜひ1作目の「仮面ライダークウガ」から順に平成仮面ライダーの経年変化も堪能してほしい。

仮面ライダークウガ
超古代、邪悪な民族グロンギ族は、平和的民族が開発した変身ベルトを身につけ戦ったクウガの活躍で封印された。そのグロンギ族が平成2000年の世に復活し、同時にベルトも復活。再び戦いが始まった……。ベルトを装着し、警察とともに戦う主人公をオダギリジョーが演じている。

仮面ライダーアギト
沖縄の海岸に謎のオーパーツが不時着する事件をきっかけに不可解な連続猟奇殺人事件が起こる。事件の鍵を握る未確認生命体「アンノウン」をめぐり、事件を追う刑事、素性を隠し仮面ライダーアギトとして戦う記憶喪失の青年、後に仮面ライダーとしての能力を持ち苦悩する青年といった3人の仮面ライダーたちの物語を通して謎が明らかになっていく。

仮面ライダーアギト」(C) 石森プロ・東映

仮面ライダー龍騎
相次ぐ失踪事件を取材していた「OREジャーナル」の見習い記者、城戸真司はある失踪者の部屋で見つけたカードデッキを見つけたことで、鏡の中の世界「ミラーワールド」からひそかに人を襲うモンスターを見る能力を得てしまう。やがてモンスターのドラグレッダーと契約した真司は、そのパワーを使って戦う「仮面ライダー龍騎」となる。そして、モンスターから人々を守るために挑んだ戦いは、仮面ライダー同士のサバイバルマッチだった。

仮面ライダー555
一人旅をする青年、乾巧は謎の怪人「オルフェノク」に襲われている少女に出会う。少女の持っていた特殊ツール「ファイズギア」で「仮面ライダー555」に変身し怪人を倒す。一方、交通事故によって両親を失い、自らも昏睡状態だった青年、木場勇治は長い入院中に両親の財産が奪われ、恋人も失ってしまった絶望からオルフェノクとして覚醒し、恋人を殺害してしまうのだった。

仮面ライダー剣
地球上に存在するさまざまな生物の始祖とされる不死身の生命体「アンデッド」。1万年前に地上の支配者を決めるバトルファイトという戦いで封印されたアンデッドは現代によみがえり、人々の平和を脅かす。人類基盤史研究所にスカウトされた剣崎一真は、「仮面ライダーブレイド」に変身し、アンデッドを封印しようとするが……。

仮面ライダー剣」(C) 石森プロ・東映

仮面ライダー響鬼
高校受験を目前に控えた足立明日夢(あだちあすむ)は、母の実家の法事で訪れた屋久島の原生林のなかで怪物に襲われる。窮地の明日夢を救ったのは、「ヒビキ」と名乗る謎の男。男は鬼に変身し、怪物に立ち向かう。浮世離れした姿に恐怖していた明日夢だったが、いつしかその強さに心奪われていった……。

仮面ライダー響鬼」(C) 石森プロ・東映

仮面ライダーカブト
西暦1999年渋谷に隕石が落下。その7年後、その隕石とともに地球に訪れた地球外生命体「ワーム」は人間に擬態して社会を侵略しつつあった。ワームに対抗するため、人類は秘密結社ZECTを結成し、仮面ライダーに変身できる「マスクドライダーシステム」を開発。見習い隊員の加賀美新は、仮面ライダーになることを懇願するが、彼は選ばれなかった。選ばれたのは、自らを「天の道を往き、総てを司る男」と称する天道総司という謎の男だった。俺様キャラの天道総司役を、水嶋ヒロが演じている。

仮面ライダー電王
人間の記憶を利用し、過去へと飛び、未来を改変しようとする怪人「イマジン」。それに対抗できる電王に変身できるのは、時間の改変の影響を受けない特質の持ち主「特異点」のみ。その能力を持つ男、野上良太郎は「仮面ライダー電王」に変身し、時の運行を守るために過去と未来を駆け巡り戦いを繰り返す。主役の野上良太郎を、若手人気俳優の佐藤健が好演。

仮面ライダーキバ
1986年、人間の生命力「ライフエナジー」を餌に古(いにしえ)の世から存在する魔族の「ファインガイア」が次々と人を襲っていた。利き腕のファインガイアハンターである麻生ゆりは彼女に惚れたという男・紅音也に邪魔をされてしまう。それから22年後の2008年。再び現れたファインガイアにファインガイアハンターとなったゆりの娘・麻生恵は戦いを挑むが、圧倒的な力に危機が迫る。その頃、音也の息子・渡は父の形見であるバイオリン「ブラッディ・ローズ」が反応していることに気づき、突き動かされるようにファインガイアのもとへ向かう。渡は、「キバットバットII世」の力を借りて「仮面ライダーキバ」に変身し、戦いに挑むのだった。