確定申告の季節です。先行きが不安な今だからこそ、控除を利用して賢く節税したいですよね。また「そもそも税金って何なの?」という方も多いと思います。そこで、節税の方法について税理士の鈴木孝明先生に聞いてみました。増税ばかりが話題になりがちですが、その裏で作られている税控除の特例も要チェックです。
確定申告をすれば、医療費を一部返金してもらえることもある
――税といえば、「確定申告」という言葉をよく聞きます。確定申告とは何ですか?
「自営業者などが、もうけを計算して税金を算出し、税務署へ報告(申告)・納税する手続きのことです。サラリーマンは、年末調整によって計算が完了しているので、原則申告は不要ですが、医療費控除を受けたい場合などは確定申告をする必要があります」
――確定申告をすると、医療費を返してもらえるのですか?
「全病院へ支払った医療費や、薬局で購入した薬代等が一定金額を超えた場合、その超えた金額を確定申告で控除することができるのです。本人はもちろんのこと、生計をともにする親族が支払った医療費等も含まれます。レーシック手術やインプラント治療も、医療費控除の対象となるんですよ」
――医療費控除だけでも確定申告できるのですか?
「もちろん可能です。出産や入院など、多額の医療費を支払ったときは、忘れずに確定申告をするようにしましょう。忘れていた場合は、5年間さかのぼって申告することが可能です。あきらめずに確定申告することをおすすめします」
年末調整とは、税金の「精算」手続き
――年末には「年末調整」という言葉をよく耳にしましたが、いったい、年末調整とは何なのですか?
「サラリーマンのその年の所得税額を精算することです。毎月の給与から天引きされている所得税額は、年間だいたいこれくらいの税額になるであろうという予想金額。ですので、年末に正式な徴税額を再計算する必要があるのです。会社がまとめて手続きします」
――どのくらいの金額を返してもらえるのですか?
「住宅ローン控除があると、10万円以上の方もいますが、だいたい1万円前後といった感じでしょうか。ちなみに、通常少し多めに天引きされているので、多くの方が返金という形になりますが、年末調整はあくまでも"精算"。扶養家族扱いにするつもりだった配偶者のアルバイト収入が103万円を超えた場合などは、年末調整の結果、追加徴税をされることもあります」
――年末調整で注意したほうがいいことはありますか?
「生命保険料などの保険料も、年末調整を通じて税額控除の対象になるのですが、申請には証明書の原本が必要になります。年末調整の期限は、文字通り年末。やり直しをするとしても、翌年の1月末までです。もし、証明書をなくしてしまった場合は、期限に間に合うよう証明書の再交付を受けてください」
多くの人の税金のことを勉強してほしい
――ほかにも、オススメの節税対策はありますか?
「サラリーマンの収入は、ガラス張りと言われます。税務署が把握している個人の年収について、『クロヨン』や『トーゴーサンピン』という俗称があります。前者は、サラリーマン9割、自営業者6割、農家4割ということを表し、後者は、サラリーマン10割、自営業者5割、農家3割、政治家1割ということを表したものです。政治家の収入にいたっては、1割程度しか把握できていないということをやゆする言葉です。サラリーマンにできる節税対策としては、各種控除を漏れなく適用を受けるといったところでしょうか」
――期間限定の控除などがあれば教えてください。
「住宅ローン控除特例は、住宅ローン返済時の利息代ぐらいは節税ができます。マイホームは高い買い物なので、住宅ローン控除を受けるためにマイホームを購入するという人はいませんが。
また、2013年12月31日までに、マイホームの耐震改修をした場合(要件あり)、一定金額を所得税額から控除することが可能です。安心と節税が一挙両得でおすすめです」
――最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いいたします。
「サラリーマンの方は、毎月の給与から天引きされて、年末調整で納税手続きが完結してしまう人がほとんどです。税に対して、どこかひとごとのような人もいる気がします。あまり無頓着でいると……。とりやすいところから、とられる危険性もありますよ。ぜひ、多くの方に税金のことを勉強していただき、税金の動向を厳しい目で監視してほしいと思います」
税金の控除だけではなく、自分がどのような形で、どのくらいの金額を納めているのか知ることも重要なのですね。給与明細をチェックしない人も多いかもしれませんが、これを機に、調べてみてはいかがでしょうか。
取材協力:鈴木孝明税理事務所 税理士・社会保険労務士 鈴木孝明先生
http://suzukikaikei.com/
(OFFICE-SANGA 臼村さおり)