KDDIとHTCのコンビが2013年のスタートから元気だ。同社が共同で開発し2012年5月に発売した「HTC J」を皮きりに、同年末に5インチディスプレイ搭載の「HTC J butterfly」をリリース。2013年も勢いそのままに、2月中旬に新型「INFOBAR」を発売する。

KDDIが特別な存在として位置付けているiidaブランドのINFOBARは、これまで鳥取三洋やシャープという主力国内メーカーとの共同開発であったが、今回の「INFOBAR A02」はHTC製。KDDIがHTCを現状最善のパートナーとして重視しているのかが判る事例だ。

HTCとの共同開発となったINFOBAR A02

INFOBAR A02は、Quallcom製Snapdragon S4 Pro 1.5GHzのクアッドコアプロセッサー、1GBのメモリを搭載。ディスプレイは4.7インチHD画質、LTE対応、OSのバージョンはAndroid4.1となかなか魅力的なスペックだ。さらに日本独自の、ワンセグ、赤外線、おサイフケータイという機能にも対応する。加えて、HTC端末らしく、起動が早く連写もできる高輝度カメラと音楽再生用に高音質エンジン「Beats Audio」も搭載。また、特徴的なプロダクトデザインはこれまでのINFOBARを手がけた深澤直人氏が手がけている。

まさにINFOBARの系譜にHTC製端末の良いところを融合した「一粒で二度おいしい」完成度の高い端末に仕上がっている。

今回のINFOBAR A02で特筆すべきなのはやはり「HTCが独自色を抑えてiidaブランドを開発した」ということではないだろうか。ここまでHTCらしからぬ端末を請け負って開発するのは、過去のPalmやSony Ericssonの下請け時代を除けば異色のケースと言えるだろう。

通信キャリア専売モデルで言えば、過去には北米Verizon WirelessのRezoundがあった。しかし、UIはHTC独自のSense、プロダクトデザインも一目でHTC製と判るものが採用されている。ところが、今回のINFOBAR A02のプロダクトデザインは歴代モデルを担当する深澤氏であり、UIもSenseではない。歴代のスマートフォン版INFOBARと同じKDDI独自のiidaの UIの進化版で、全くといっていいほどHTCカラーではないのだ。

Verizon WirelessのRezoundもキャリア専売端末であった

この様にHTCが自社の独自色を抑えてまでINFOBAR A02を開発すると言うことは、KDDIとの関係が世界的にも他に類をみない程強固な関係であり、日本のマーケットが重要だとHTCが位置付けているからであろう。

昨年、HTCはアジア市場で思うような結果を残すことができていない。2008年から参入していた韓国市場を昨年10月で撤退。今、最も力を入れている中国市場でもSamsungやHuaweiといった強力なライバルに欧米市場と同様、押されている状態だ。そのようなアジア市場の現状において日本でのHTC JとHTC J butterflyのヒットは、KDDIとのパートナーシップを強く結びつけたのだろう。アジアにおける日本のKDDIとHTC関係は、北米でのVerizon Wirelessとの関係と同等、いや、もはやそれ以上の信頼関係を構築していると言えるのではないだろうか。

またHTCにとってINFOBARを手がけた経験は、今後の自社製品のプロダクトデザインにプラスとなるだろう。今回、国内外で評価が高いiidaブランドを手がける事によって「デザインケータイ」のエッセンスをHTCは吸収することになる。それは過去にPRADA Phoneを手がけたLGの前例に似ている。LGはPRADAの上質で洗礼されたデザインを手がけた事がターニングポイントとなった。PRADA Phone以降のLG製スマートフォンがそれまでのプロダクトデザインと異なったのは誰が見ても明らかだ。同じようにINFOBARがHTCの今後開発する新商品に影響を及ぼしても、何ら不思議はない。

このようにKDDIとHTCという相思相愛のタッグが、次にどんなモデルを共同開発し日本国内市場に投入するのか、そしてHTC J、HTC J butterflyに続く「日本発」のグローバル端末が生まれるのか。両社の2013年の動向に注目である。

(記事提供: AndroWire編集部)