山梨県で話題のB級グルメ「甲府鳥もつ煮」。2010年のB-1グランプリで、応援団体「みなさまの縁をとりもつ隊」がゴールドグランプリに輝き、今や甲府の新しい名物になりつつあるという。今回は2013年こそ食べたいローカルフード、「甲府鳥もつ煮」を紹介しよう。
試行錯誤の末の偶然から誕生
甲府鳥もつ煮は、砂肝、ハツ、レバー、きんかんなどの鳥もつと濃厚なタレを合わせた煮物。もつ煮というと長時間煮込んだものが一般的だが、甲府鳥もつ煮は、少量のたれを使って短時間で照り焼きにしているのが特徴だ。
その始まりは昭和25年(1950)。食べる習慣がなく捨てられるもつを見た市内のおそば屋さん「奥藤本店」の店主が、「みんなが安く食べられるものはできないのか」と言ったのをきっかけだったという。試行錯誤しながら、もつ煮のアクを取っていたところ、偶然、汁があめのようにトロリとなったことから、「これならおいしそう」と甘辛く煮込んだ甲府独特のもつ煮を作りだしたのだ。
そばの前菜として食べるのが甲府流
その味は、分かりやすくいうとうなぎのかば焼きのよう。甘辛いタレと歯ごたえのあるもつの相性が抜群だ。「これはビールにピッタリだ」と思ったのだが、甲府では独特の食べ方があるという。
それは、そばの前菜として食べるという方法だ。もともとおそば屋さんが作り始めたということで、そばを待つ間に食べるのが一般的だったそうなのだ。そばの前にもつ煮とは、なんとも乙な光景だ。しかし、甲府の人たちにとってはこれが当たり前。県外のおそば屋さんに入って、もつ煮がないと「なんでないの?」と不思議に思ってしまうらしい。
この鳥もつ煮、元祖の味を試してみたいという方には、発祥店の奥藤本店がおすすめだ。味はもちろん作り方にも注目! 強火で素早く調理するため、小さな鍋をペンチでつかんで調理する独特の方法をとっている。一番人気は、そばともつ煮のセット。本場の味が体感できる。
ちょっぴり大人っぽい食べ物なので、年配者を中心に食べられているのかと思いきや、子どもたちや若者も大好きだという。新鮮なもつが手に入ったら手作りする家庭も多く、甲府のおふくろの味でもあるそうだ。味付けはしょうゆと砂糖だが、地元では「甲府鳥もつ煮のタレ」が市販されているので、自分で作りたいときはこのタレを活用してもいいだろう。
みなさまの縁をとりもつ隊が「甲府鳥もつ煮」の縁を拡大中
甲府鳥もつ煮は、最近では全国的に知られる存在になっている。2010年の第5回B-1グランプリで、甲府鳥もつ煮を応援するまちおこし団体「みなさまの縁をとりもつ隊」がゴールドグランプリに輝いたからだ。甲府鳥もつ煮への熱い思いと地元を愛する心を大切に、今日も甲府鳥もつ煮でつながる縁を拡大中だ。
地元では、B-1グランプリ受賞によって「甲府の誇りがまたひとつ増えた」と大盛りあがりだという。特に若い人たちは、「鳥もつ煮を全国に広めて、町を活性化したい」と意気込んでいる。
山梨県を代表するグルメになりそうな「甲府鳥もつ煮」。地元の人たちの「おいしい料理を提供したい」「おいしい料理を広めたい」という思いが重なり合い、今そのおいしさが全国にじわじわと伝わっている。
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テンヨ武田