カシオ計算機の電子辞書「EX-word(エクスワード)」シリーズに、最新のビジネスパーソンモデル「XD-N8500」と生活・教養モデル「XD-N6500」が登場した。収録コンテンツはもちろん、筐体やGUIもリニューアル。「学び」をコンセプトにするEX-wordの背景について、お話をうかがってきた。
新モデルとなるXD-N8500とXD-N6500の概要は別記事『カシオ、動画で学べるコンテンツなどを拡充した電子辞書「エクスワード」』を参照いただきたいが、特徴や新しい要素を簡単に紹介しておこう。全体的には、従来モデルでも好評の、5型ワイドのカラー液晶(528×320ドット)で見やすい、メイン画面と手書きエリアのツインタッチパネル、単3形電池×2本で130時間動作のタフパワー、落下・加圧・振動など衝撃に強い堅牢設計「TAFCOT(タフコット)」などを継承している。
新モデルのポイントは、学習に役立つ動画コンテンツを新収録したことや、タッチ操作に対応したメイン画面のGUIを改良、本体をより軽く・薄くしたことなどだ。生活・教養モデルのXD-N6500には、NHKで2008年から2009年に放映された英語アニメーションの「リトル・チャロ NY編」(TV放映版1年分・全50話)が収録され、字幕や英文テキスト表示、進捗確認の機能など、楽しみながら自然に英語を学べる。ビジネスパーソンモデルのXD-N8500には、英語の発音を約70通りの口の動きで見られる「英語の発音がよくなる本」(発音記号をすべてカバー)、英会話の身振り手振り(ジェスチャー)をシーン別に見られる「カラダで伝わる英会話」などを収録している。
GUI画面の一例は、従来のリスト表示から辞書を選ぶのではなく、分かりやすいグラフィックアイコンを導入。フリックによるスクロールなど、現在のスマートフォンやタブレットでお馴染みの操作性も採り入れている。加えてソフトウェアキーボードも刷新され、50音 / QWERTY / 手書き / 数字 / 英字などと、すべての文字種をメイン液晶画面でもタッチ入力できるようになった。
本体サイズと重量は、2012年モデルと比べて厚みで1.1mm薄く、重さで20g軽くなっている。また、EX-wordは多彩な別売コンテンツの追加にも対応しているが、2012年モデル(一部を除く)から拡張データカードスロット×2基を搭載し、2種類のコンテンツカードを同時にセットしておけるようになった。今回の新モデルも同様だが、追加コンテンツとして上述のリトル・チャロ NY編など、NHKラジオ講座のデータカードが2013年3月に追加される。なお、動画コンテンツに対応しているのは、今回のXD-N8500とXD-N6500であり、2012年以前のモデルでは、動画コンテンツのデータカードは使えない。
すべては「学び」のために
さて、今回お話をうかがったのは、カシオ計算機 コンシューマ事業部の佐藤雄樹氏と、営業本部 戦略統轄部 コンシューマ戦略部の上田奈美子氏のお二人だ。
―― 今回の新モデルは、動画コンテンツの収録が1つの目玉だと思えます。電子辞書と動画は相性が良さそうですし、時代的な流れもあって動画コンテンツを採用したのですか。
佐藤氏「まず動画ありき。ではなく、"学び"を第一に考えました。電子辞書は古くから、英語の学習に使われることが多かったのですが、まず言葉を調べることから始まり、単語帳や文法書などの収録と進んできました。
現在は英語の学習ニーズが高まり、ユーザーの意識やレベルにも差が生まれています。例えばビジネスマンなら、仕事で必要となれば、もうやらなきゃいけないですよね。一方で、学生や英語初心者の方からは、学習を楽しめる要素がないとなかなか続かないという声がありました。ユーザーの学習を効果的に、より取り組みやすくしたいと考えていったときに、結果として学習動画の収録となったんです」
上田氏「電子辞書としての広さや深さのために、XD-N8500とXD-N6500では"英語の学習"という発想を追いかけました。あくまで学習に特化した動画なんです」
―― 動画コンテンツのほかに、XD-N8500とXD-N6500で新しくなった機能などはありますか。
佐藤氏「まず、本体そのものを新しくしました。従来モデルから、重さが20g軽く、厚みが1.1mm薄くなっています。数字的にはわずかでも、やはり少しでも軽く、薄くというご要望は多くて、開発陣にも苦労してもらいました(笑)」
―― ちょっとでも軽く薄くなるのは嬉しいですよ !
佐藤氏「そうなんですよね。新モデルは液晶まわりの改良で薄くできました。ただ、どうしても強度の問題が出て、落下や衝撃だけでなく、ユーザーさんがタッチ操作するときの圧力も無視できなくなってきます。
詳しくはお話しできないのですが、液晶画面の裏側に工夫して、強度を高めつつタッチ操作の圧力をフレームの外に逃がせるようにしました。この『圧力を逃がす』のがなかなか計算では求められなくて、何カ月もかけて手作業で試行錯誤しました。多くの試作機が犠牲となりましたが、何とか『タフコット』を継承できました。G-SHOCKでタフなイメージがついているカシオとしては中々妥協できません」
―― あ、液晶画面のメニューや表示も変わってますね。
佐藤氏「目立つところでは、辞書メニューでしょうか。これまでは辞書名を文字で表示していましたが、アイコンを使ったタイル表示にしました。画面をぱっと見てどんな辞書なのか分かりますから、より直感的にコンテンツを選べるようになっています」
上田氏「液晶画面のフリックでスクロールもできます。アイコン表示やタッチ操作全般は、スマートフォンでだいぶ一般化したと考えて採り入れました。
電子辞書とスマートフォンはライバル視されることも多いのですが、実はそうでもないんです(編注:スマートフォンに辞書アプリを導入したり、インターネット辞書を引いたりできるため)。ちょっと言葉を調べる場合はスマートフォン、より詳しく正確に、素早く調べたいときは電子辞書といったように、活躍するシーンが違うのでうまく使い分けられているようです。
たくさんの種類の辞書を使おうと思ったら、スマートフォンで辞書アプリを買うより、電子辞書のほうが便利だしお得です(笑)」
―― ソフトキーボードを高機能にしたのも、やはり要望が多かったからですか。机やテーブルの上に置いて使えないときに、ソフトキーボードは便利ですよね。
佐藤氏「そうですね。画面上のソフトキーボードから、50音、QWERTY、手書き 、数字、英字、すべて入力できるようにしました。付属のスタイラスを使ったタッチ入力を想定していますが、指でタッチしてもきちんと反応しますよ」
上田氏「2013年モデルでは、従来モデルのメイン画面右横にあったスクロールパッドを省きました。メイン画面の左右を両手で持つと、スクロールパッドの上に手が当たって操作ミスしやすいのでは、という判断です。机の上に置いて操作するときはもちろんですが、ポータブルゲーム機のように両手で持ったときにも便利だと思います」
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