明治36年(1903)創立の土佐電気鉄道は、2013年で開業110周年を迎える歴史ある企業で、路面電車と路線バスを運営している。この路面電車、なんと現在運行するものの中では国内最古だそうで、運行距離は全長25.3km、電停数は76カ所にも及び、ともに日本一の規模を誇っているという。
こちらの路面電車は、地元では「土電(とでん)」あるいは、他に電化路線がないことから「電車」という名で呼ばれて親しまれている。伊野線・後免(ごめん)線・桟橋線の3つの路線があり、それぞれ有名な「はりまや橋」の停留場で交差している。
ちなみに各電停の間隔は短いが、特に一条橋~清和学園前はわずか63mと、隣同士の電停が見えるほどの距離にある。
交通の利便性を高めた路面電車システム
二酸化炭素の排出量が少ないために、世界的にもその良さが見直されつつある路面電車だが、日本では都市周辺部の人口減などから利用者が減っている地域も少なくない。そのため、各社では様々な運営の努力を行っている。それらの中でも土佐電鉄は、特にユニークな取り組みをしてきたことで知られる。
代表的なものとしては、マイカーと公共交通機関の共存を図ったパークアンドライドの導入や、同一ホームでの電車・バス乗り換えに対応するための改修、駅舎の建て替えに合わせたコンビニエンスストアの併設などが挙げられる。加えて、コンビニエンスストアでも定期券の継続手続きを行えるようにもしている。
電車デザインでできる、“土佐弁講座”も好評
新しい魅力づくりへの取り組みのひとつとして、「高知の電車とまちを愛する会」の主催による「よさこい手づくりホビー電車」を導入しているのもユニークだ。2012年11月より走行しているこの電車(2014年11月までの2年間走行予定)の内部には、「海洋堂ホビー館四万十」のフィギュアや、県内の小学生が作製したジオラマが常設展示されている。
外装は「高知工業高等学校総合デザイン科」と「高知南中学校・高等学校美術部」に在籍する学生たちが担当。前方には、土佐の海を背景に、電車の行く末を見つめる坂本龍馬が立っている。制作にあたって、“高知らしさ”を意識してデザインしたという。
また、電車側面には、簡単な高知弁解説も記されている。実は高知県は東西に長い県であることから、東と西の方言に違いがある。そのため、側面に書かれた土佐弁を見て「こんな言い方する?」などとおもしろそうに目を細める子どももいるとか。
こんな粋な電車ならば、高知を訪れた折にはぜひとも乗ってみたい。電車は常時、町のどこかを走行しているが、週末および祝日は観光客にも分かるよう、高知駅前~桟橋通5丁目間に限定して運行している。「平日にどこを走っているか知りたい!」という人は、2日前より運行が定められているので、土佐電気鉄道に電話で聞いてみよう。
また、よさこい手づくりホビー電車は、クリスマス期間中には車両外部にイルミネーションを装飾して街を走るという。これまでは、よさこい祭り期間(8/9~11)中に走る「よさこい花電車」が夏の風物詩として知られていた土佐電鉄だが、今年の冬は美しい装飾をまとった電車の登場も楽しみにしていただきたい。