お笑い芸人の鉄拳が19日、東京・新宿の吉本興業東京本社で行われたよしもとクリエイティブカレッジ特別講義「鉄拳流クリエイティブ講座」に登壇し、同校の志望者や現役生に向けパラパラ漫画の制作秘話を語った。
講義の予定時間が1時間以上だったことを受け、鉄拳は「15年芸人をやってて、ステージで1時間も持ったことがない」と緊張した面持ち。ヒットのきっかけとなった、ある夫婦の出会いから死別までを描くパラパラ漫画『振り子』を筆頭に、これまで手がけてきた作品を上映しながら、その制作のきっかけやストーリーを語った。
今や代表作となった『振り子』に関して、司会から「描きながら自分で泣いてしまったのでは?」と聞かれると、「先に展開を考えていたので泣きませんでしたね。どっちを先に殺そうかと考えていました(笑)」と冗談めかしつつ、作品の演出について「1回見て納得するような内容だとそこで終わっちゃう。謎も含めたほうがいいんですよ。何回も見て、だんだん謎が溶けていくのが面白いんじゃないかと思う」とクリエイターらしい発言も見せていた。
爆発的に増えたパラパラ漫画のオファーの内容は、「やっぱり『振り子』のイメージで感動させたいという要望が多い」という。すべて手描きで制作しているという大量の原稿を披露する場面もあり、「1秒の映像に6枚のイラストを使用している」という事実に、会場の生徒たちは感嘆の声を挙げていた。また、話題が制作の苦労話になると饒舌になり、「すべて描き終わってから登場人物の服装をジャンパーに変えてほしいと言われ、1日かけて描き直したこともある」と苦笑い。
今後の活動に関して、一度は「お笑いは辞めます!」と強気に断言したものの、会場に全国放送のテレビカメラが入っていることを知るや否や、「パラパラ漫画の仕事が来なくなったらお笑いに戻ろうと思うので、そこはカットしてください」と一転して弱腰に。「お笑いとパラパラ漫画を1:9でやっていきます」と発言を訂正した。
2013年は9月ごろまで依頼された仕事で手一杯とのことだが、「来年には短編ムービーを作って、世界に向けて発表してみたい」と前向きで、「今は奥さんひとりに手伝ってもらっているんですが、仕事が増えているので、仲間を増やして"鉄拳プロダクション"みたいなものを作ってみんなで頑張っていきたい」とコメントするなど、弱気な姿勢とは裏腹に作品の制作への意欲を見せていた。