今年も1月11~13日の3日間にわたり、幕張メッセにて、「東京オートサロン2013 with NAPAC」が開催された。31回目となる今回からは規模も拡大され、名実ともに「世界最大級」となったカスタムカーのイベントである。

スタート当初は懐疑的だったという大手の国内自動車メーカーも、いまではその多くが同イベントに"参戦"。市場調査も兼ねて自社ブランドのカスタムカーやコンセプトカーを出品するだけでなく、このイベントに合わせてニューモデルやコンセプトカーを発表している。

以前と比べてはるかに大規模になり、大手メーカーも加わったことで、単に「既存車を改造したチューンドカーの祭典」というだけではないイベントに成長しつつある。

「高級外車は嫌味」イメージを覆す輸入車のカスタムカーがずらり

話は変わるが、筆者は若い頃、とりあえず「車はつぶすもの」ととらえ、無茶苦茶な走りを続けた挙句、免許取消しに至った過去を持つ。「女性力」を発揮し、タダ同然でもらった外車の新車を即ボコボコにし、スクラップ処分にしてしまったことも。

もちろんいまとなっては笑い話だが、良くも悪くも車に対して特別な思い入れがあるだけに、最近の洗練された外観・内装の既存車につまらなさを感じていたのも事実だ。国産車はもちろんのこと、高級外車の外観イメージに対しても、どこか嫌味な印象を禁じえなかった。ああいう高級車は、「オレはすごい高級車に乗っているんだぜ!」という見栄と自負のためにのみ存在すると思っていた。

そんな筆者にとって、「東京オートサロン2013」に出展された車はどんな風に映るのだろうか? そこで独断と偏見をもとに、「これは!」と思うカスタムの出来を感じた車に注目してみることにした。……と、早速メルセデス・ベンツのエンブレムを発見!

「スリーポインテッドスター」

ベースはメルセデス・ベンツの「SL55」

どこからどう見ても、走り屋の求めるスポーツカー。メルセデス・ベンツといえばステイタスの象徴でもあるし、洗練された外観でいかにも高級感漂うイメージだが、この車はいい意味で、そうした高級イメージをみじんも感じさせない逸品だ。

同車を出展したのは「EURO PIECHA Disign」。カスタム費用は400万円ほどだという。一般庶民から見れば決して安い金額ではないが、フェラーリやランボルギーニのスポーツカーを買うことを思えば、「太陽の下の豆電球」のような出費である。内装も完璧にチューニングされており、新車も同然。自分好みのオリジナルデザインのスポーツカーを400万円で入手できると思えば、じつにおいしい話だ。

ベース車は「BMW ActiveHybrid 3」。レイズの出展車両

続いて見つけたのはBMWのエンブレム。この車もまた、安定感・重厚感といった従来のBMWのイメージとは一線を画すデザインに仕上がっていた。F1レーサーが乗っていたとしても、まったく違和感がないかもしれない。

これらの車の他にも、筆者の頭の中に植え付けられた「高級外車は嫌味」のイメージを見事に払拭するようなVIP外国車が、会場の各ブースにずらりと並んでいた。

軍用車、VIPカー、クラシックカー…すべてベースは国産車

国産中古車に対しては、「ダサい」「かっこ悪い」というネガティブなイメージが根強く残る筆者。そんな中、つい最近戦地から戻ってきたかのような軍用車を発見!

興奮のあまり手ブレしてしまった

ベース車は「エスクード」。本当に!?

……と思いきや、横にある元写真を見てびっくり。なんとベース車は、15万円ほどで入手した中古のスズキ「エスクード」。軍用車として世界中で採用されている「ハンビー」を再現したらしい。本当は「ハマー」(アーノルド・シュワルツェネッガーの要請で「ハンビー」を民生化した車種)をベース車にしたかったそうだが、日本国内で使用するには車体サイズがあまりに大きすぎることから、「エスクード」を採用したとのこと。

それ以外に予算の問題もあったようだ。なんでもカスタム費用については、元車購入費や場所代などをすべて含め、100万円以下でまかなうというのがここの決まりらしい。そのため、純粋なカスタムには60~80万円ほどしかかけられないという。それもそのはず、この車を出展したチームは「NATS 日本自動車大学校」という専門学校。実際に改造しているのは20歳そこそこの学生たちである。

BMW車かと思ったら、ベース車はマツダ「MPV」だった

「エスクード」の隣では、かっこいいVIPカー風の車が鎮座していた。キドニーグリルのBMW車のような外観だが、意外にもベース車は中古のマツダ「MPV」。しかも学校に放置されていた古いものだという。チーム代表者によれば、「車体購入費がなかった分、100万円の予算をすべてカスタム費用にあてられたんです」とのこと。ちなみにチーム代表者といっても、彼はまだ21歳。

それにしても、いかにも国産車らしいデザインの「MPV」がここまで変貌するとは。「かっこいいVIPカーに乗りたいけど、子供がまだ小さいから諦めよう……」というお父さんにとっては朗報かもしれない。

どこから見てもクラシックカー。しかしベース車は「パジェロ」

「エルグランド」がベースの特撮番組風スポーツワゴン

その斜め横には、明らかに趣が違う、クラシックデザインの気品漂う伝統的な車が。これまたベース車の写真を見て驚かされた。筆者の実家で親が運転していた車とまったく同じ「パジェロ」ではないか! 三菱の現代国産車とはとても思えない。

隣に並ぶ特撮番組風スポーツワゴンも、ベース車は「エルグランド」。現在、筆者の「アッシー君」と化した人物が運転する「エルグランド」の色違いだった。メタルヒーローが運転席から出て来てもおかしくない車に仕上がっており、カスタム費用は60万円ほどだという。余談だが、筆者の「アッシー君」が所有する「エルグランド」はつい先日、電信柱に激突してしまい、修理費用50万円と言われたばかりである。

「NATS 日本自動車大学校」がオートサロンに出展するのは今年で17回目。基本的に製作した車の販売は行っていないそうだが、相手の熱意次第で販売に至る可能性もなくはないという。輸入車のようなハイクオリティの外観を持ちながら、日本車の持つ燃費の良さと車体価格の安さを備え、使い勝手も良くボディもコンパクト。まさに言うことなし。取消しになった免許を再取得しようかと、真剣に検討してみたくなった。

日産「JUKE Personalization Concept」とコンパニオン

会場の各ブースを見て回った後、日産のブースで今日一番のかわいいコンパニオンを発見する。彼女を見ただけで、オートサロンが「キャンギャルの聖地」と呼ばれるのも納得だ。そばに展示された日産「ジューク」のチューニングもなかなかのものだが、周囲に群がる人々はもっぱら美女に夢中で、「ジューク」は脇役に徹していた。

その他、会場内には飲食スペースや軽食販売ブースも設けられており、車好きはもちろん、家族サービスや女の子目当ての人にもおすすめのイベントだと感じた。来年の開催時には、一度足を運んでみるといいかもしれない。