メイドカフェというものが、秋葉原を中心に日本全国にあります。その名の通り、メイド姿の女性店員が男性客を「お帰りなさいませ、ご主人さま」と迎えてくれる飲食店です。決して、男性だけをターゲットにしているわけではありませんが、来店客の大半が男性です。
また、飲食店とはいえ、メニュー価格は喫茶店やカフェと比較すると割高な印象。にもかかわらずリピーターも多数いるということは満足度が高いということですが、どうして、男性はメイドカフェに行くのでしょうか。化粧心理学者で、大学では恋愛心理学の授業も担当している平松隆円さんにこういう行動にでる男性の心理について解説していただきます。
キャバクラとメイドカフェは別物
以前、「男性がキャバクラにハマる理由」について、支配欲求を満たしたい男性の心理を紹介しました。女性からすると、女の子たちが接客するメイドカフェは、キャバクラと同じじゃないのかと考える人もいると思います。ですが、キャバクラとメイドカフェは少し理由が異なってきます。その違いを2つの視点から説明します。
1つ目は、外見です。キャバクラで接客する女性のファッションは多くの場合、肌の露出が多く、また体のラインがはっきりする女性らしさを強調するような"セクシーな"ドレスを着ています。ですが、メイドカフェの場合はスカートが短いということはあるかもしれませんが、全体的には体のラインがそれほど出ないふんわりとした感じ。女性らしさ、というより、どちらかといえば"かわいらしさ"があります。
2つ目は接客の仕方です。キャバクラの場合は、お店にいる間は常に女の子が隣に座ります。お酒よりも会話がサービスの主体で、男性客も女の子との会話が盛り上がるように多少は努力が必要になります。それに対してメイドカフェは、あくまで飲食が基本。商品の提供時に女の子と話すことはあっても、男性客は会話の盛り上がりに気を使わなくていいのです。
常に女の子が隣に座っているわけではないので、話したければ接客時に声をかければいいわけですし、話したくなければ黙っていてもかまいません。ご主人さま(=男性客)とメイド(=店員)という関係は、一見すると主従関係のようですが、実際は友達のようにカジュアルに接客してくれます。メイドと一緒に楽しみたい時は、"ゲーム"など、コミュニケーションが図れるメニューもあるので気が向けばそれを注文すればいいわけです。
つまり、メイドカフェには、外見的にも親しみやすいこと、また気を使わなくていいという気軽さが特徴としてあることがわかります。人には誰かと一緒にいたいという親和欲求があります。ですが、その一方で人間関係には煩わしさもあります。何を話していいかわからないという不安、だけど楽しい時間を過ごしたい。自分のペースでコミュニケーションがはかれ、エンターテインメントがある。そんなニーズに応えてくれる場所が、メイドカフェなのかもしれません。男性にとって、キャバクラが支配欲求を満たす場所であるならば、メイドカフェは親和欲求を満たす場所なんです。
著者プロフィール
平松隆円
化粧心理学者 / 大学教員
1980年滋賀県生まれ。2008年世界でも類をみない化粧研究で博士(教育学)の学位を取得。国際日本文化研究センター講師や京都大学中核機関研究員などを歴任。専門は、化粧心理学や化粧文化論など。よそおいに関する研究で日本文化を解き明かしている。大学では魅力をテーマに恋愛心理学も担当。 NTV『所さんの目がテン! 』、CX『めざましどようび』、NHK『極める 中越典子の京美人学』など番組出演も多数。主著『化粧にみる日本文化』は関西大学入試問題に採用されるなど、研究者以外にも反響を呼んだ。