国際労働機関(以下、ILO)はこのほど、職業としての家事労働者の規模、および法的保護についてまとめた報告書を発表した。それによると、2010年時点における世界の家事労働者は約5,260万人に上り、そのうち29.9%が一般労働法による保護を受けられず、劣悪な労働条件に置かれていることがわかった。

同調査は、ILOが2011年に家事労働者の待遇改善を目指す条約(第189号)、並びに勧告(第201号)を採択したことを受け、初めて行われたもの。

世界の家事労働者は、1990年代半ばから2010年の間に1,900万人以上増加。2010年時点では、すべての家事労働者のうち83%が女性で、その多くが自国外で就労していた。また、女性の賃金労働者のうち家事労働者の割合は7.5%で、特に中東では31.8%、中南米・カリブでは26.6%と高い割合となった。

地域別の家事労働者数を見た場合、アジア太平洋地域が最も多く2,140万人。次いで、中南米・カリブが1,960万人、アフリカが520万人、先進国が360万人、中東が210万人となった。なお、今回の調査に15歳未満の児童は含まれていないが、2008年のILO推計によると、児童家事労働者は約740万人に上るという。

同調査では、家事労働者の多くが劣悪な労働条件に置かれ、法により守られていない人が多数いることが判明。一般労働法の適用は全体の1割で、29.9%が全く除外されている。加えて、他の労働者と同等の最低賃金を受ける資格がある家事労働者は全体の半数強にとどまっているほか、3分の1以上の女性家事労働者に対して母性保護が適用されていないという。

法的保護の欠如により、労働時間が長時間化。平均労働時間を見ると、マレーシアでは週66時間近く、カタール、ナミビア、タンザニア、サウジアラビアなどでは週60~65時間と、あらゆる職種の中で最も長く、最も予見不能なものの一つに数えられている。さらに、半数以上の家事労働者に対して通常の週労働時間の上限が認められておらず、約45%に対して週休や年次有給休暇の資格が法定されていなかった。

長時間労働は、特に移民が多くを占める住み込みの家事労働者において一般化している。移民家事労働者に対して、実際の労働時間にかかわらず固定週給・月給制が用いられている場合が多いほか、「法的状態が不安定で現地の言葉や法に関する知識も不足しているため、様々な暴力、賃金不払い、債務奴隷労働、虐待的な生活・労働条件に特にさらされやすくなっている」(ILO)。

サンドラ・ポラスキーILO事務次長は、このような家事労働を「虐待と搾取に弱い」ものとする可能性があるとし、「賃金と労働条件の点で、家事労働者が同じ国の他の労働者から大きく乖離していることは、この脆弱ながら一生懸命働く人々の勤労生活の改善に向けて政府、使用者、労働者が全国的な行動を起こす必要があることを強調する」と話している。