日本政策金融公庫は9日、「農業経営現場での女性活躍状況調査」の結果を発表した。同調査は、2012年9月~11月の期間に郵送アンケートおよび面談にて行われ、6次産業化・大規模経営に取り組む1,003の農業者(同社融資先)から有効回答を得た。

それによると、女性従業員の能力を引き出し、活躍の場を広げることで経営の発展を図る"女性活躍の推進"に関する取り組みについて、「取り組んでいる」と回答した農業者は全体の52.0%。反対に、「取り組んでいない」は48.0%だった。

6次産業化に取り組んでいる農業者のうち、"女性活躍の推進"に「取り組んでいる」割合は62.5%。一方、6次産業化に取り組んでいない農業者では「取り組んでいる」が39.4%にとどまっていた。また、全役員・従業員に占める女性の割合についても、6次産業化に取り組んでいる農業者では46.3%だったのに対し、取り組んでいない農業者では31.9%にとどまっていることがわかった。

設備投資等で同社融資を利用する前の売上高と3年後の売上高を比較し、その増加した割合を示す売上高増加率を調査したところ、女性の役員・管理職が「いる」経営では3年間で23.0%増加。それに対して、「いない」経営では増加率は9.4%にとどまった。

融資後3年間の売上高増加率(女性役員・管理職の有無別)(出典:日本政策金融公庫Webサイト)

同様に経営の収益力を示す売上高経常利益率を融資前と3年後で比べてみると、女性の役員・管理職が「いる」経営では融資前の0.9%から2%上昇して2.9%に。一方、「いない」経営では融資前1.5%、融資後1.4%とほぼ横ばいとなった。

さらに面談調査においても、女性経営者の特徴として「経営の細部に気を配るきめ細やかさを指摘する声」(同社)が寄せられており、女性役員・管理職がいる経営において、売上・収益力ともに上昇する傾向が明らかになった。

女性の活躍推進に取り組んだ、または取り組もうとしたきっかけを尋ねたところ、「女性に向いた業務が多いため」が最も多く65.3%。次いで、「女性の感性・経験を活かし事業を活性化するため」が58.6%、「女性の能力を活かせる機会が増えてきたため」が42.7%、「男女の能力に差はないため」が27.2%となった。

一方、「短時間勤務制度」など仕事と育児・介護の両立支援として就業規則等に定めている、または制度はないが柔軟に対応していることに関しては、全ての項目において一般中小企業(同社「企業経営と従業員の雇用に関するアンケート」2011年より)を下回る結果に。具体的には、「短時間勤務制度」については農業者58.0%、中小企業83.9%、「子の看護休暇」については農業者28.3%、中小企業62.7%などとなった。同社は「『女性が働きやすい職場環境づくり』のため、より具体的な対応策が必要」と指摘している。