米NVIDIAは6日(北米時間)、間もなく開幕するCES 2013にあわせて、米国ラスベガスで事前プレスカンファレンスを開催。その中で、次世代Tegra SoCである「Tegra 4」を正式発表したほか、このTegra 4を搭載する携帯ゲーム機の独自開発プロジェクト「Project SHIELD」の存在を明かし、その概要を説明した。
ついにベールを脱いだ! Cortex-A15ベースの「Tegra 4」
「Wayne」の開発コードネームで知られていた次世代モバイルSoC「Tegra 4」が、ついに正式発表となった。CPUはARM Cortex-A15ベースのコアが4基のクアッドコアで、Tegra 3のような"プラス1コア"となる省電力コアを1基を組み合わせた、4+1のCPU構成をとる。グラフィックス部はGeForce GPUをカスタムした72基のGPUコアを搭載する。さらに、オプションとして4G LTEをサポートするソフトモデムチップ「i500」も組み合わせ可能だ。
「Tegra 4」のダイ画像。金色の4+1CPUコアと、緑色のGPUコア72基のブロックが確認できる |
Tegra 4の右側のダイは、オプションのソフトモデムチップ「i500」。4G LTEをサポートする |
性能面では、Cortex-A15ベースの4コアにより、Webブラウジング処理の速度で比較した場合、Tegra 3比で2.6倍。GPUも同6倍になるとしている。実際にカンファレンス会場でベンチマークデモの様子を披露し、Samsung 5250チップを搭載するNexus 10と競い、25種類の高負荷Webサイトを連続ブラウジングし、完了までTegra 4は27秒、これがNexus 10では50秒かかることを見せ、処理性能の高さをアピールした。
ほか、3Dゲームタイトル「Dead Trigger 2」の、Tegra 4上でのスムーズな動作を公開し、GPU性能の高さもアピールした。GPUは、おそらくGeForceのG80コア世代に近い性能を備えているのではないかという印象だ。また、フルHDを超える4K(Ultra HD)動画の再生も披露し、これをサポートしていることが説明された。
省電力性能でも、Cortex-A15ベースになったことと、"プラス1コア"となる省電力コアがTegra 3から改良された第2世代になったこと、またバックライトの消費電力を削減する「PRISM 2D Display」技術の採用により、Tegra 3比で最大45%低減したとする。スマートフォン搭載時のバッテリ駆動時間の目安として、HD動画の連続再生なら14時間持つとされている。
4G LTEのデータ通信と音声通信をサポートするi500チップは、買収したIcera社の技術によるものと考えられるソフトモデムチップだ。従来のモデムチップと比べて、ダイサイズの40%縮小を実現したという実装面積での優位や、一方で従来比4倍という処理能力の優位を紹介した。
さらにTegra 4では、性能が向上したGPUとCPUに、カメラ処理のISP(イメージ・シグナル・プロセッサ)の処理能力を合わせることで、写真や動画のHDR撮影などを高速に処理できる「NVIDIA COMPUTIONAL PHOTOGRAPHY ARCHITECTURE」と呼ばれる技術の利用も可能となった。それにより、処理が高負荷で連写の難しかったHDR撮影が10倍高速化。連写だけでなく、HDR写真を含む連写写真の合成で白飛びやアンダーを自動補正した写真を生成したり、動画にHDRをリアルタイムで適用処理したりといったことも可能となった。
「NVIDIA COMPUTIONAL PHOTOGRAPHY ARCHITECTURE」の仕組み。通常はセンサで取り込んだ画像を、ISPで処理しメモリに読み込み……、と順次処理するところを、ISP、CPU、GPU並列で一気に高速処理する |
これまでの順次処理では2秒かかっていたHDR写真の撮影が、NVIDIA COMPUTIONAL PHOTOGRAPHY ARCHITECTUREなら0.2秒に |
処理が高速化した恩恵で、HDR撮影の連写だけでなく、ムービーに対しHDRをリアルタイムで適用することもできるように |
なお、今回のカンファレンスで知ることができたTegra 4の情報はこの程度で、主に概要のみにとどまっていた。詳細な仕様は未だに隠されている部分も多いものと見られる。CES閉幕後となる今年の2月に、モバイル分野に特化し、同分野でより影響力が大きいMobile World Congress 2013の開催が控えていることが関係しているのかもしれない。