石垣のみの状態ながら日本百名城の1つにも数えられている「竹田城跡」(撮影者:吉田利栄。以下全ての写真も同様)

2012年夏、高倉健が約7年ぶりに主演したことで話題を呼んだ映画「あなたへ」の主要舞台の1つになったのが、兵庫県のほぼ中央にある「竹田城跡」。山城遺跡としては400m×100mという全国一の規模を誇る城は、その趣から“日本のマチュピチュ”とも呼ばれる名勝である。

朝来(あさご)市にある竹田城跡は、標高353.7mの「古城山」山頂にある天守台を中心に、放射線状に南千畳・北千畳・花屋敷が配されている山城だ。車で中腹にある駐車場まで登れは楽にたどりつけるが、車がなければ近隣のJR竹田駅から徒歩約40分(約800m)で登ることができる。

雲海に浮かぶ姿はまさに“天空の城”

“マチュピチュ”を楽しむとっておきのビューポイント3つ

竹田城は、但馬の守護大名だった山名宗全(やまなそうぜん/もちとよ)が嘉吉年間(1441~1443年)に基礎を築いたと伝わる。その後、5代にわたって太田垣(おおたがき)家(初代=太田垣光景)が城主を務めたが、しかし天正8年(1580)に織田信長に従った豊臣秀吉の但馬征伐で落城。最後の城主となった赤松広秀が石積みの城郭を整備して今に至っている。

城がある土地の標高はそれほど高くないが、内陸部にあるため昼と夜の気温差が大きくなる9~11月にかけてのよく晴れた早朝には、雲海が発生する。山の近くを流れる円山(まるやま)川の川霧に包まれて空中に浮かび上がるように見える姿から、“日本のマチュピチュ”あるいは“天空の城”と呼ばれているのだ。

“マチュピチュ”の美しさを堪能できるビューポイントは3カ所ある。1つ目は竹田城跡一帯で、石垣の端に立つと眼下に雲海を眺めることができる。2つ目は竹田城跡から東南に約2.8km程度の地にそびえる峡谷「立雲峡(りつうんきょう)」。ここから竹田城を撮影すると、まるで雲に浮かぶ城のようにうつるのだ。そして3つ目が竹田城跡裏側にある「藤和峠」で、こちらは竹田城と同程度の標高のため、目の前に広がる雲の海を堪能できる。

雪に覆われた竹田城跡(天守台から撮影)

秋から冬にかけては幻想的な風景が出現する

ご来光の神々しさは3,000m級の山に劣らない

竹田城は別名「虎臥城(とらふすじょう/こがじょう)」とも呼ばれ、それに合わせて古城山も「虎臥山」とも呼ばれる。その由来について朝来市観光交流課の上山哲生さんは「上から見下ろすと縄張りが、虎がふしているように見えることから、その名が付けられてと言われています」と説明。

また、竹田城のもうひとつの魅力が朝のご来光である。特に雲海が広がる時期には、雲を割って山の間から太陽が昇る様は、その神々しさから「まるで高度3,000m級の山の山頂から眺めているかのような光景だ」と言われ、それ見たさに早朝の暗いうちから山頂を目指す人も多い。

自然石を巧みに配置した石垣は、400年を経た今でも当時の威容を誇っている

城からは神秘的なご来光も眺められる

周辺には自然を生かした観光スポットも

現在では石垣しか残っていない竹田城だが、資料などを基にかつての姿を模型で復元したものが朝来市観光案内センターにある。昔、人々は戦がない時は平野部に住んでいて、戦の時は城に立てこもっていたという。そのため常時、城に人がいたわけではないのに、よくこんな精巧に建てたと思える城の全容が伺うことができる。

城に至るまでの道は、冬場でも除雪されているので登山は可能だ。城の近隣には、体験型農村公園の「ヨーデルの森」や緑地公園の「あさご芸術の森」、日帰り温泉「よふど温泉」といった見どころスポット点在しているので、それらに立ち寄りながら竹田城跡を訪ねてみるのもいいかもしれない。