謎が残るソニーのカセットテープ新発売
7月20日に、ソニーが、ノーマルポジションのカセットテープ「HF」シリーズを発売した。ノーマルポジションという言葉にも、そろそろ説明を付けなければならないかもしれない。オーディオ用カセットテープには、ノーマル(TYPE I)、ハイポジション(TYPE II:クローム)、フェリクローム(TYPE III)、メタル(TYPE IV)があり、ノーマルポジションは、もっとも一般的なグレードのテープということになる。ちなみに、フェリクロームテープは、同社が開発したものだ。
さて、これだけならば、まだまだ需要が残っている……と言いたいところなのだが、12月6日にソニーは、ポータブルタイプのカセットテープレコーダーの出荷完了を発表している。
もちろん、5カ月という短期間に需要が縮小したということではないだろう。以前、同社の方に、「高齢者を中心に、まだカセットテープの需要は残っているが、それを、手軽に使えるICレコーダーで置き換えていきたい」といった話を聞いたことがある。ポータブルタイプのカセットレコーダーを意識したようなデザインのICレコーダーも発売されている。出荷完了の発表は、前からの規定路線だったと考えるのが自然だ。では、7月のHFの新発売は何だったのだろうか。謎が残る。
目覚まし時計や炊飯器などにも搭載された「muPass」
muPassは、携帯電話でダウンロードした音声データを他の機器に転送して使用するシステム。サミーネットワークスが提供していたいわゆる"ガラケー"向けのサービスだ。家電チャンネルでも、同機能を搭載した炊飯器などが紹介されている。
さて、そのmuPassだが、2012年12月にサービスが終了した。これにより、muPass機能を搭載した家電製品に、新たに音楽ファイルを転送することはできなくなった。これは仕方のないことだといえるだろう。しかし、困ったのはそれ以外の点だ。いくつかの製品では、音楽ファイル以外のファイル転送にもmuPassのサービスを使用していた。そういった製品では、muPassの終了と同時にファイル転送機能全体が利用できなくなってしまった。上記の炊飯器では、お気に入りメニューの炊飯レシピの転送にも利用されており、この機能が利用できなくなっている。
技術革新と競争の激しい情報家電の製品寿命は、さほど長くはない。それに対して、いわゆる"白物家電"の製品寿命はかなり長めだ。家の中を捜してみると、10年以上前の家電製品は、普通に見つかるだろうが、それと同じ世代の情報家電製品が稼働しているというケースはかなり少ないのではないだろうか。ちなみに10年前というと、40GB~80GB程度のHDDを搭載したDVDレコーダーが主流だった頃だ。今後増えてくることが予想されるスマート家電でも、規格の実質的な"賞味期限"という点は、注意しておきたいポイントとなるだろう。