年間約100万人もの人が訪れる人気ミュージアム

広島県呉市は、かつて日本最大かつ東洋最大の海軍工廠(かいぐんこうしょう。艦船や航空機を開発・製造する海軍直営の軍需工場)があった地であり、有名な「戦艦大和」などを製造した歴史を誇る。そして、ここで製造された戦艦や弾丸の展示を行っているのが、通称「大和ミュージアム」と呼ばれる「呉市海事歴史科学館」だ。

ミュージアムの目玉になっている10分の1スケールの「戦艦大和」

実物と同じ工程で作られたリアルすぎる展示

「同ミュージアムは、JR呉駅から歩道橋を利用して徒歩5分ほどの呉湾に面した海沿いに建っている。通称名から想像できる通り、展示の目玉は実物とほぼ同じ工程で制作された10分の1スケールの「戦艦大和」のモデルである。

「設計図が一部しかないので、その一部の設計図と写真などの資料を手掛かりに復元されているのですが、新しい資料が見つかれば、それに合わせて随時改修もしています」と運営グループの井坂純子さん。

本物の大和は全長263m。展示品も10分の1スケールとはいえ、全長が20mを越える圧巻の大きさ。実物を前にすると、その迫力に圧倒されることは間違いない。ちなみに本物は、昭和初期に建造されたのにも関わらず、空調設備やエレベーターなどが設置されていたという。

また、ここには実物の展示も多く、例えば館外には大和以前の主力艦だった「戦艦陸奥」の主砲や、日本初の有人深海調査艇「しんかい」などがある。さらに、特殊潜行挺(せんこうてい)「海竜」後期量産型や「九三式魚雷」、特攻兵器「回天」十型試作型、「零式艦上戦闘機六二型」なども展示されている。

現物の兵器などが展示されている「大型資料展示室」

臨海工業都市・呉の歴史も紹介

軍港としての呉市の歴史は、明治22年(1889)に呉鎮守府、明治36年(1903)には呉海軍工廠が設置されたことに始まる。同市はその後、戦艦「大和」をはじめとする数多くの船舶を製造して、海軍工廠の街として栄えた。

そして戦後は、戦前から培われてきた様々な技術を生かし、さらに新しい技術を導入して、世界最大のタンカーを数多く建造する有数の臨海工業都市として発展してきた。ミュージアムにはそうした呉市の歴史を写真や映像、資料などで詳しく紹介している展示室も設けられている。

軍港として栄えた呉市の歴史も紹介している

船をつくる技術などを紹介している展示室

建物の最上階には、科学技術の素晴らしさを伝える目的で、操船シミュレーターや波の性質を学べる実験水槽が設置されている。また、科学の不思議を体験するサイエンスショー、工作教室なども行われているので、子どもたちが楽しみながら学ぶことができる。

また、「ボランティアガイドによる館内案内も行っています。映像や模型などの展示は個人でもご見学いただけますが、ボランティアガイドの解説をお聞きいただくのも面白いと思います」(井坂さん)とのこと。家族連れでも友達同士でも大いに楽しめること間違いなしのスポットなのだ。