実薬がDHA含有カプセル。読解力の低い児童ほど、顕著な改善がみられた

DHA(ドコサヘキサエン酸)は、生活習慣病予防や脳の活性化、知能の発達などに貢献することで知られている。このほど、英オックスフォード大学の最新の臨床研究により、藻由来のDHAを多く食べると、学校成績の標準以下である児童の読解力に向上がみられたことが発表された。

12月13日、本研究の臨床試験の主任研究員を務めたポール・モントゴメリー博士が来日し、研究説明会が開催された。

DHAは脳の成長や接続性に影響

英オックスフォード大学のポール・モントゴメリー博士

ポール・モントゴメリー博士によると、藻類や魚介類に多く含まれているDHAは、最適な細胞信号伝達に不可欠な細胞膜の流動性を高める働きがあるという。脳の発達に良いと認識されている理由として、DHAは脳の乾燥質量の6~10%を占めており、脳の成長や接続性に影響を与えることが挙げられている。

また、DHAの欠乏によって視覚処理の初期段階における脳膜の信号が1,000倍以下に低下することがあり、暗視力の低下やその他の視覚、空間注意力関連の処理問題につながるという。

今までのDHAに関する研究では、発達性協調運動障害を有する児童にDHAを多く食べさせると、行動・態度に緩和がみられ、読解力も向上するという結果が発表されていた。同大学が2009~2010年にかけて行った本研究は、普通学校に在籍し、読解力が標準以下の児童(読解力が33パーセンタイル以下の7~9歳児)を対象にして行った。

対象児は英語を母語とする362人で、1週間に魚介類を2回以上食べていないことも条件としていた。試験期間は16週間で、固定用量600mgのDHA(藻由来)、500mgカプセル(1カプセルにつき、DHA200mgを含有)を1日3カプセルを180人に与えた。また比較研究として、プラセボ(偽薬)も同様に、1日3カプセルの投与を182人に行った。

16週間の治療で読解力が改善

臨床試験の結果は、集団全体ではプラセボを上回るDHAの効果は十分にみられなかったが、読解能力の低い児童(20パーセンタイル以下)では有意な読解力改善が、最も読解力の低い児童(10パーセンタイル以下)ではさらに顕著な改善がみられたという。ただし、行動・態度に関しては、ともに正常範囲内(向上の余地が少ない)という結果となった。

DHAを多く含む食物には、藻類の他に魚介類がある。本研究では藻由来のDHAを用いたが、魚介由来のDHAでも同様の結果が得られるだろうとポール・モントゴメリー博士は推測している。また、英国の児童に比べ、日本の児童は比較的魚介類を多く食べていると言えるだろうが、日本の児童においても、同様の結果が見込めるだろうとコメントした。