さくら事務所創業者・代表で不動産コンサルタントの長嶋修氏は17日、「財政政策と金融緩和で円安・株高。自公圧勝で不動産はどうなる?」と題したニュースレター『さくらだより』号外を公表した。
同ニュースレターによると、12月16日に行われた衆議院議員選挙は自公が300議席超えと圧勝、安倍総裁はさっそく、経済再生へ対策を打ち出すとして「緊急経済対策を策定し大型補正予算の編成」「2パーセントの物価目標達成に向け、来年4月の日銀総裁人事については物価目標に賛成者を人選」などを行うとしている。
10兆円規模と想定される補正予算は1月中に国会提出される見込みで、物価目標達成のための具体的な金融緩和はすぐにでも着手、遅くとも4月総裁人事で本格化。経済財政諮問会議を復活させ日銀総裁にも出席を求めるほか、日銀法改正にも言及している。
安倍総裁のこうした方針が打ち出された選挙前からすでに「円安」「株高」を予想した市場は大きく触れている。
ここから思い切った財政政策・金融政策がとられることになれば、「不動産市場にもマネーが流れ込み、資産価格の上昇に向かう可能性が高まった」(長嶋氏)。
インフレ時には金や不動産など実物資産の価値が増加し、実物以外の金融資産の信認が低下する。
選挙以前の不動産市場動向は、東京都心部でオフィス空室率の悪化に底入れの兆しが見えるほか、シンガポール政府系や米大手が上場時の物件取得額2000億円規模の上場を予定しているなど、マネー流入の具体的な動きも出ているという。
「REITやファンド市場、またそれらに連動しそうな前述した不動産などは、受け入れ体制が整っているといえる」(同氏)。
ただし、「不動産市場の中でも、上昇する可能性があるのはこうした物に限られるものと思われる」(長嶋氏)。
長嶋氏によると、具体的には「REIT」や「ファンド」、またそれに連動するような立地や種別の物件、たとえば都心3区や5区のなかでも駅近の優良立地などに建つマンション。タワーマンションのうち地域のランドマーク。高級住宅地などが考えられるという。
それ以外の、たとえば大半の住宅市場などについては、「むしろ下落圧力がかかるものと見ている」(長嶋氏)。
その理由について長嶋氏は、「『財政政策』や『金融政策』は、あくまで経済再生の補助的な役割に過ぎない」とし、「そもそも日本経済は高度成長を終え失われた20年を過ごし、給与所得者の給与が低下しデフレが続いてきたが、その原因は『社会の硬直化』にあるから」としている。
長嶋氏によれば、「少子化・高齢化」「経済成長率低下」の下で「既得権益体制」や「産業構造」「雇用構造」「社会保障体制」に変化をもたらすことなしに、経済の「潜在成長率」は高まらないといい、見方によっては、自民党政権の財政政策や金融政策は、「たんに将来に負担を先延ばしにしているだけ、長期的にはマイナスとも言える」(同氏)。
「各種の構造改革を行うことと同時に、その補助的な政策としての財政政策・金融政策がとられない以上、大半の不動産には下落圧力が高まるだけ」(同)としている。