健康な人と歯周病の人の違い。自覚症状が出た時には、すでに歯周病がかなり進行している事が多い

「毎日歯を磨きさえすれば、高齢になっても健康な歯をたもてる」と認識している人は多いだろう。しかし、平成23年度の厚生労働省調査によると、5歳以上の日本人の約80%が歯周病と推定されている。歯科衛生士による「Goodbye Perio(グッバイ ペリオ) プロジェクト」では、歯周病対策としてデンタルフロスの使用を呼びかけている。

「Goodbye Perio」は2012年1月に社会貢献プロジェクトとして誕生し、12月6日現在、メンバーは1,504人となった。メンバーは口腔の健康を守るプロとして、歯科医院に来る患者をはじめ、家族や友人など全ての人に、「歯周病は予防できる病気である」ことを伝える活動を行っている。12月6日には、歯周病に関する正しい知識と、プロジェクトの意義や今後の活動報告を行った。

歯周病の菌が全身疾患の原因に

まず、歯周病になるとどのようなことになるのか? 歯周病は歯の周りにある歯周組織が歯周病菌に感染することで、歯茎(歯肉)が腫れたり、歯茎から出血したり、最終的には歯が抜けてしまう病気。うまくそしゃくできないことによる栄養バランスの崩れ以外にも、歯周病菌が歯茎から体内に入り込むことで、様々な病気のリスクを高めてしまう。

日本臨床歯周病学会は、歯周病よって脳梗塞や糖尿病、骨粗しょう症、メタボリック症候群などのリスクが高まることを発表している。実際、歯周病の人が脳梗塞になる確率は、健康な歯茎の人の約2.8倍、低体重児出産・早産はなんと7倍にものぼるという。

年齢別で見た、歯茎の健康状況。20代でも健康な歯茎の人は25%しかいない

デンタルフロスで健康な歯を取り戻す

ではどうすれば歯周病を予防できるのか? 歯周病には歯肉炎と歯周炎があり、歯肉炎から歯周炎に進行すると考えられている。歯茎が赤く腫れる、または歯磨きの際に少し出血があるなどの歯茎に関する症状が歯肉炎であり、20~30代のほとんどは歯肉炎という。この段階であれば毎日自宅でケアをすることで、比較的短期間で健康な状態に戻せるという。

しかし、歯周病菌は歯と歯の間や歯茎の中にもぐりこんでしまうため、歯ブラシではかき出すことができない。その点、デンタルフロスはブラシが通らない隙間や歯茎の中まで届くため、歯周病菌をかき出すことができるという。

歯ブラシ(左)とデンタルフロス(右)の違い。赤い部分が磨けていないところ

デンタルフロスは欧米では日常的なケアアイテムとして知られている。日本でもスーパーやドラッグストアなどでも購入できるものだが、まだ5%程度の人にしか普及していないという。

「Goodbye Perio プロジェクト」は全国でイベントを展開しながら、まだ十分に認知されていない歯周病予防・デンタルフロスの啓発活動を行っている。ホームページではプロジェクトの紹介や、全国にいるメンバーの活動情報を発信している。