米Appleが今秋にリリースしたiOS 6の地図サービスにおける誤表記が、同サービスのナビゲーション機能を使って移動する人々の命を脅かしており、旅行者に対して利用を控えるようにとオーストラリアの警察から警告を受け話題になっている。報告を受け、すでに問題の箇所は修正されたとの話もあるが、いまだ同種の問題箇所はほかにもあるとみられ、引き続き注意が必要だろう。
今回問題となったのはオーストラリア南東部、メルボルンから内陸部に向かって550kmほどの地点にあるミルデュラ(Mildura)という街だ。本来であればメルボルンから主要道を通って6時間強ほどで到達できる場所だが、iPhone 5等に搭載されているiOS 6上でMilduraを検索すると、マーカーで指し示されるのは実際のMilduraではなく、同街から南西に70kmほど離れたMurray Sunset National Parkの敷地内に「Mildura VIC」との表示が出現する。このままナビゲーション機能を使ってミルデュラの街へ向かおうとすると、上記の公園内にあるMildura VIC ("VIC"はVictoriaの略)に誘導されるというわけだ。
同件を報じたMacworld AUとThe Vergeによれば、同国立公園は内陸部で非常に乾燥した土地であり、日中は46度近くにまで気温が上昇することもあるという。このようにして迷い込んだ事例はすでに何件か報告されており、遭難後に警察によって保護されたようだ。中には24時間水も食料もなしで遭難し、電話で助けを呼ぶために車外へ出て長距離を歩き続けたという人もおり、命に関わる問題になっているという。こうした事態を受け、ミルデュラの街が属する豪ビクトリア州警察では旅行者に対し警告を出し(http://www.vicpolicenews.com.au/more-news/11081-police-concerned-with-apple-ios-6-mapping-system.html)、Appleに対し修正を依頼するとともに、問題が解決するまでビクトリア州内での移動に同地図サービスを使わないよう注意を喚起している。
問題となっているiOS 6におけるミルデュラへのナビゲーション。赤いピンが地図検索で示される「Mildura VIC」の位置で、実際のミルデュラの街は紫色のピンの場所となっている(出典: Victoria Police) |
なお英Guardianによれば、問題の箇所はすでに修正が行われているという。筆者が確認してみたところ、iOS 6のMaps上で「Mildura」を検索すると、マーカーの表示される場所は変わらず従来のMurray Sunset National Park内になっている。このままルート表示を行っても従来の間違った場所へのルートが示されるだけだが、実際にナビゲーションを行うと正しい街へと誘導されるという(筆者は原稿執筆時点で確認できなかった)。なお、現地警察によれば実際に救出が行われたケースは4件だったという。なおWiredによれば、同種の問題は米国では報告されておらず、これはアラスカのような辺境でも同様だという。